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7話 こうして側室にされました

鉱物図鑑に飽きてきたアルーシャは、ベッドに移動すると固まっていた筋肉を解す。

後で騎士が事情聴取に来ると言っていたが、昨夜の事件に次ぐ事件で忙しいのだろう。まだ先触れも何も無い。



アルーシャが後宮に来てから、まだ3日しか経っていないのに、事件が起こりすぎではなかろうか。

正妃になれなかった元側室達の呪いでもかかっているのではと思いながら、アルーシャは扉をノックしたシエラに入室を許可する。

漸く事情聴取の先触れが来たらしく、アルーシャは身なりを整え直しながら、昨夜の騒ぎの経過をシエラから聞いた。


後宮へ進入したシューリーンの元婚約者……いや、王太子殿下の側室に手を出したから、間男で良いだろうか。

その間男と通じていたシューリーンは、罪を認めているため3日後に仲良く死刑になるらしい。

驚くことに、今回が初犯ではなく、何度も後宮に忍び込んでは乳繰り合っていたらしい。

後宮にさえ入らなければ引き裂かれなかったのだと獄中で恨み言を言っているそうだ。


他人の色恋に巻き込まれる状況に、アルーシャは3番目の兄を思い出して顔を顰めた。

馬鹿が恋に盲目になると、何をしでかすか想像がつかなくて困る。

被害を受けて巻き込まれる人間や、話を丸く収めようと尽力する人間達の事など、まるでわかっていないのだから。


今回の事件を起こした二人の家も、父親達は今付けで職を辞し、法に準じた処罰を待っているらしい。

王宮の安全を脅かしたのだから、2つの家は取りつぶされるだろう。


そして、最も重要なの間男の侵入経路だが、何と後宮にある隠し通路を使っていたらしい。

しかも、それは王子の元婚約者候補の一人から聞いたというのだ。

そのため、今、元婚約者候補達が城に連行されて、他に隠し通路を知る者や口外した者はいないか、厳しく取り調べている。



「……どいつもこいつも何やってんのよ。王宮の警備に綻びを作るとか、馬鹿なんじゃないかしら?」

「馬鹿でなければ、王族の命に関わる情報を口外などなさらないかと」



間男が使っていた隠し通路は、昨夜のうちに近衛騎士団達が封印したらしい。

丑三つ時に大工仕事をするはめになるなんて、近衛騎士団は大変だ。

出来るだけ、彼らの仕事を増やさないように気をつけてあげなければと思ったアルーシャだったが、つい先程騒ぎを起こして仕事を増やしたばかりな事を思い出し、この件について考えるのをやめた。


見目の良さが入団基準になる近衛騎士団だが、それでも彼らは精鋭の騎士なのだ。

やっぱり宿舎は、長兄がいる第一騎士団同様、汗臭いのだろうか。

王族の傍に控えるのだから、そこまで臭くはしないだろうが、騎士の精鋭と聞くと、何となく他の騎士団より更に臭そうなイメージがある。

先程羽交い締めにされたときは匂いを気に掛けるどころではなかったが、汗臭さを感じた記憶は無い。

長兄のせいで、騎士は臭いものと記憶してしまっているアルーシャだが、すこし情報を改めなければと考えた。




身だしなみを整えると、程なく2人の騎士が事情聴取に尋ねてきた。

側室という立場のため、騎士の方から来てくれるのは楽でいいと思う。

状況は全てメリッサが説明してくれたらしく、アルーシャの聴取はほぼ確認作業のようなものだった。


アルーシャがボコボコにしたカパネラ一味は、大人しく罪を認めており、怪我が治り次第実家に返されるそうだ。

因みに、動機はやはりカパネラの思慕の暴走。

メリッサの兄イルフェンに並々ならぬ思慕の情を寄せていたカパネラだったが、イルフェンは愛妻家で有名である。

人目を憚らず妻子ある男性を追いかけていたカパネラは、当然結婚相手が見つからず、困った父が頭を冷やさせるために後宮へ入れた。

一国の王太子の後宮が反省部屋扱いとは、これいかに。


抵抗むなしく後宮に押し込まれたカパネラだったが、しかしそこで彼女はメリッサという、イルフェンに瓜二つの女性を見つける。

そりゃぁ瓜二つだろうよ。兄妹だからとかそういうんじゃなく、そうだろうよ。


後宮に入ってもイルフェンを諦められなかったカパネラは、彼の妹のメリッサをイルフェンに向けるのと同じ情熱で慕いだした。

そしてそれは、彼女の中で簡単に性別の壁を越える。

むしろ、同じ女ならば、相手の体を傷つける事無く深く知り合える、性別を超えた真実の愛なのだと考えるに至り、今回の暴挙に及んだらしい。

縛り上げた上に侍女を使って押さえつけている時点で体は傷ついているし、恐らく性別も超えていないだろうと思ったアルーシャだったが、ここは騎士達の話に合わせることにした。


王子殿下の休憩に呼ばれた帰り道、メリッサは渡り廊下でカパネラの侍女に助けを求められ、茂みに入った所を数人がかりで押さえつけられたらしい。

あっという間に縄をかけられたメリッサがあわや貞操の危機かというところに、図書室帰りに偶然通りかかったアルーシャがカパネラ達を『説得』してくれたおかげで、事件は『穏便』に解決する事ができた。

その後、力が抜けたカパネラと侍女達が『転倒』して怪我を負う一幕があったが、カパネラも侍女も『軽傷』のため、問題にはならない。

ただ、今回の件でカパネラは己の行いを深く反省しており、王子殿下のお渡りが一度もない事もあって、実家の領地にある修道院で療養したいと申し出た。



「私の見解にも相違はございません。カパネラ様達のお心の傷が一日でも早く癒やされるよう願っておりますわ」


恋に狂って正気じゃ無かったとはいえ、貴族の箱入り娘があれだけボコボコにされたら、心の傷はなかなか治らないだろうが……。


鈴蘭を思わせる清楚な顔で、慈愛に満ちた表情を崩さないアルーシャに、騎士達は一瞬物言いたげな顔をする。

だが、すぐに表情を引き締め、今後何かあった際の協力を求めると、彼らは部屋を去って行った。



「あー、疲れたわね。シエラ、さっきの内容って、私が見ちゃったから言ってくれただけよね。実際の報告書、どれくらいマイルドになると思う?」

「メリッサ様の評判に関わりますので、カパネラ様の名誉は極力損なわないものになるでしょう。恐らく、病気療養のためにカパネラ様が側室の勤めを辞した形になるかと」


「やっぱりそれぐらいが妥当なのね。それにしても、私が来た途端に側室が2人もいなくなるって、酷くない?絶対私が何かしたと思われるわよね?」

「事実、カパネラ様を図鑑で滅多打ちになさっておりますので、何かはされているかと」


「あ、そっか。確かにそうだわ。でも巻き込まれただけじゃない。それに性犯罪を未然に防いだのよ?褒められてもいいじゃない」

「セルダン様は、お褒めくださるかと思われます」


「ごめん、セルダン兄様に褒められても嬉しくないわ」

「ヴァイツァー様も、正しき行いをしたアルーシャ様を誇らしいとお喜びになるでしょう」


「ヴァイツァー兄様かぁ……すぐ抱きしめてくるから嫌なのよね。すごい汗臭いし……あ、そうだ。今、後宮って第1騎士団も警備に入ってるわよね。ヴァイツァー兄様はいらしてるの?」

「ヴァイツァー様は、使用人通用口付近の巡回をなさっておいでとの事です」


「やっぱり臭いから裏方のエリアにされたのかしら?」

「第1騎士団は屋外の警備を主に担当されているようですが、私には何とも……」



となると、兄だけではなく第一騎士団全員が、後宮に入るのをお断りされるほど汗臭いのかもしれないと思いながら、アルーシャは爽やかな香りがするフルーツハーブティーを楽しむ。

これから後宮内の隠し通路を塞ぐ大仕事が始まるなら、仕事をする兄と顔を合わせる事もあるだろう。

臭いのだけは嫌だが、それ以外はちょっとお馬鹿で優しい兄なのだ。

仕事に夢中でなかなか家に帰ってこないから、最後に顔を合わせたのは1年くらい前かもしれないが、アルーシャには彼に対し並々ならぬ思いがある。



「シエラ、私、ヴァイツァー兄様を見つけたら、絶対に一発お見舞いしてやるわ」

「騒ぎにならぬよう、十分御配慮くだるなら、私は何も申し上げることはありません」


「そうね。もしもその時に問題がありそうなら言ってちょうだい。日を改めるから」

「かしこまりました」


静かにお茶のお代わりを注ぐシエラに穏やかな笑みを返し、アルーシャは再び広がった香りを楽しむ。

長兄ヴァイツァーの事を考えるだけで蘇ってきそうな、あの酷い汗の臭いも、新鮮な果物を使ったお茶の香りが上書きしてくれる気がした。



「ヴァイツァー兄様がやらかさなければ、私はここにいなかったのよね……」



思い出すだけで腹が立つが、長兄ばかりに責任があるわけでもないのは分かっている。

一番悪いのは3番目の兄とその妻だ。

いやしかしやはり長兄のお馬鹿さも原因の一つなので腹が立つ。



前の側室達が後宮から追い出され、未婚の貴族子弟が軒並み刈り取られていた最中、アルーシャの3番目の兄が一人の女性を連れてきた。

散々浮き名を流して好き勝手していた奴は、運命の人を見つけたといって、こともあろうに当時のアルーシャの婚約者の姉を連れてきたのである。

しかも、彼女のお腹には既に兄の子がいるというではないか。


結果、縁談はアルーシャとその婚約者から、その兄姉へとすげ替えられることになった。

因みに、元婚約者はフリーになった瞬間、元側室の伯爵令嬢に一服盛られて婿入りしていった。

元々家同士の結びつきのための婚約だったが、優良物件が軒並み刈り取られている最中に婚約者が不在となったアルーシャはたまったものではない。

父と次兄は次なるアルーシャの縁談を探して奔走してくれたが、既に市場には瑕疵しかないような男しか残っていなかった。

ならば貴族ではなく有力な商家にと声をかけたらしいが、クアラス家の令嬢を嫁に貰っても、手に負えませんと頭を下げて断られたらしい。

清楚で可憐な月の妖精は良いが、それに付随する変人一族クアラス家というマイナス要素が、一応平民でしかない彼らには荷が勝ちすぎたらしい。


それでも父と次兄は頑張ってくれた。

頑張ったのだが難儀しすぎて、騎士団にいる長兄にまで手を借りたところから、彼らの苦労が垣間見える。


そして頼まれた長兄はやった。

やらかした。


同僚の第一騎士全員に、妹に良縁が無いだろうかと相談し、姿絵の写しを寮の入り口に飾り、お見合いを希望する騎士のリストを作って家に送ってきた。

送られてき手紙とリストはヤバイレベルで汗の臭いが染みついていた。

次兄は顔を引きつらせ、父は頭を抱え、母はあまりの匂いに吐くほどだったが、前もって鼻に綿を詰めていたアルーシャは無事だった。

そこから、クアラス家の中で、脳筋の長兄だけではなく、第一騎士団自体が猛烈に汗臭いという認識になったのだ。


行動はさておき、良家の息子が多い騎士団で沢山の希望者を得た長兄の功績は素晴らしく、その点は家族皆で長兄を褒め称えた。

褒め称えていたのだが、長兄の親友である騎士がたまたま王子の側近ロウフェイルトの従兄弟で、クアラス家が知らないうちに話がそっちまで飛んでいった。

丁度、メリッサ様たちを初めとした先に入っていた側室様方が、後宮を去る時期が近づいており、次の側室をどうするか話し合っている最中だったのだ。



少人数の側室制になって1年の間、なんと王子は数回だけ後宮に渡ってきたことがあるらしい。

ただし、昼間に王妃主催のお茶会で王妃付きの近衛に羽交い締めにされ、強制的に連行されてきた上、お茶を5秒で飲み干すだけの出席。

王子は、ティーカップを置いた瞬間、藪をかき分けてダッシュで逃げたらしい。


それを聞いたアルーシャはもう放っておいてやれよと思ったのだが、王子の周りは当然そうもいかない。

とにかく、何としてでも王子に側室への興味を持たせなければならない。その一心で、王子の側近達は側室捜しに躍起になった。

26歳になる国の跡取りが、未だ婚約者を持っていないとなれば、周りが心配するのは当然だろう。

しかも、今、王家で子種を残せる若く健康な男は、王子一人しかいなかったのだ。

一日でも早く王子に子や妻をと求めるのは当たり前だった。


そこにアルーシャの噂である。

由緒正しき伯爵家の令嬢で、両親から受け継いだ美貌。

己の縁談を白紙にした兄と義姉にさえ、笑顔で祝福をする優しい心を持ち、争いを好まず、慎ましやかで穏やかな性格。

そんな理想的な令嬢が、国家王族に対する忠誠心溢れた騎士達と、良縁を結びたいと声をかけている。


……そう、向こうは考えたらしい。


見逃してはならぬとばかりに、アルーシャの元へ後宮への召喚状が届き、王家からの要請を断れない自称弱小伯爵家は一人娘を差し出した。

最初話を聞いたとき、アルーシャは普通に耳を疑い、よもや次兄が権力欲へ目覚めたのかと疑った。


『セルダン兄様、貴方、とうとう……』

『勘違いをするな。お前が無事、2年間側室として穀潰しをするか、他の側室を正妃にする働きができるならば、後宮を出たお前に良縁をいただけるよう話をつけただけだ』

『そうだ、アルーシャ。残念だが、今の状況ではお前に良縁を探してやる事が出来ない。家にいるよりも、後宮で名目上の人妻になっていた方が見聞が良いんだ』


『え、待って二人とも。どうしてこんなに可憐な私が、王子から手を出されないことが前提なのかしら?』

『……お前、その中身で王子が惚れてくれると思っているのか?妖怪はペット枠にもおもしれー女枠にも入らんぞ?そもそも記憶持ちは王族に入れん』

『後宮を出た後、お前を貰ってくれる相手とは既に話がついている。安心して行っておいで』


『あちらも手を出さない前提?私は運命に翻弄されて禁じられた恋に身を焦がす系の物語の主人公なの?我が身より先に他の側室燃やすタイプよ?』

『王族の妃は教養があれば良いというものではない。己の器ぐらいは知っているだろう?お前の勤めは、王家の血を残すことではなく、適度に後宮を騒がせて、王子の目を後宮へ向けさせることだ。あとはあちらが何とかする』

『出発は来週だ。第一側室のメリッサ様が2ヶ月後に退去期限を迎えるため、急ぐそうだよ。足りない荷物は追い追い送るから、とりあえず行っておいで』



ぞんざいに話を終わらせる当主と跡取り(長兄は脳筋すぎて跡取りを次兄に譲った)に、白目と歯を剥いて抵抗の意を示したアルーシャだったが、次兄から容赦なく歯にチョップされて諦めた。

『ぁヴんっ』って変な声が出たし地味に痛かった。

次兄の侍女であるシエラを後宮に連れてきたのは、有能さを見込んだのもあるが、半分はその腹いせである。



「シエラ、今日はもう誰もこないだろうし、食事と入浴以外は他の仕事してていいわよ。お茶も自分で入れるわ」

「かしこまりました」


一人で3人分の仕事をしなければならないシエラに、長々アルーシャのお茶に付き合う余裕はないだろう。

彼女を部屋から出し、再び図鑑に手を伸ばしたアルーシャは、しおりを挟んでいなかった事に気づいて小さくため息をついた。





夕刻、食事と入浴を済ませたアルーシャは、日記とペンを手元に、自室のテラスで果実酒を楽しんでいた。

初日に出された酒より少しランクは落ちるようだが、流石後宮で出されるだけあって美味しい。

ナソド王国では16の成人から飲酒を始める者が多く、アルーシャも去年の誕生日から酒を嗜んでいる。

他国では葡萄の酒を飲む地域が多いらしいが、ナソドで酒と言えば果実酒だった。


林檎と桃の味がする果実酒を舌で楽しみながら、アルーシャは茜と藍が混じる空を眺めた。

日が沈み始めているというのに、後宮内はまだ騎士達が多く歩き回っているようで、彼らの声や隠し通路を塞ぐ工事の音が聞こえてくる。

庭の奥にある塀の裏では巡回用の通路で資材を運んでいるらしく、荷車を押す音も聞こえた。


他人が働いている音を聞きながら、アルーシャは優雅に月見酒を楽しむ。

工事のために至る所に篝火や魔導灯がつけられているが、星も十分に楽しめるので、瓶の酒がどんどんと減っていった。

予備で持ってきた杏のお酒はまだ手を着けていないが、時間的にも今日は口に出来なさそうだ。


ふと、明日は他の側室達から演奏会に誘われていることを思い出して、アルーシャは何の楽器をやろうかと考える。

他の大陸と違って、このオルーフォン大陸の音楽は旧ダルレシオ王国の流れそのまま、かなり自由だ。

リズムさえ合っていれば、どんな楽器を持ち出しても良いし、手を叩こうが踊り出そうが気にしない。楽譜だって、あってないようなものだった。


城の行事には、他大陸の国のように舞踏会はあるが、手を取り合って優雅に踊るどころか、手を叩き合って跳ね回っている。

そもそも、大陸を収めていた旧ダルレシオ王国が精霊が多い国だったので、そこから細分化されて出来たナソド王国も他の人族中心国家とは文化が大分ちがう。

海を挟んでいることもあって、音楽や踊りは人族より精霊や獣人の影響が色濃い。

時折街で他大陸から来た上流階級の人間を見ては、アルーシャは堅苦しい場所に生まれなくてよかったと思っていた。


思ったより長く月の光に囚われていたか、気づけば月は2つに増え、騎士達が工事をする音も聞こえない。

明日の演奏会に備えて、そろそろ自分も寝るべきだろうかと、アルーシャは大きく伸びをして日記にペンを走らせた。


虫の音が耳に心地良い夜の庭に、ペンと紙が擦れる音が加わる。

ざっくりと今日のできごとを思い出し、けれど、どこまで書いて良いのかと時折頬杖をついて考えるアルーシャは、日記の内容を考えるのと同時に視界の端に見える何かを、認めるべきか否か考えていた。


気のせいかもしれないが、日記の内容を考えて顔を上げる度、若い男達の顔が庭の茂みからこちらを覗いているのが見える。

見間違いでなければ、王子の側近のロウフェイルトが、宙に浮いた赤髪・金髪・茶髪それぞれの生首と共に、暗闇の中からアルーシャの様子を覗いている。



何なのだ一体。

何でこんなものが見えるのか。

この後宮おかしくないだろうか?

それともちょっと飲み過ぎた?


というか、いつの間にロウフェイルトは死んだのだろうかと思いながら、アルーシャは眠気を抱えながら酒瓶を手に立ち上がる。

とりあえず、死者だろうと生霊だろうと、男の目がある前で寝間着に着替える事はできないので、手持ちの酒で生首達を清められるか、試してみることにした。






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