表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

追いかけてくる

8/21~23月曜日~水曜日


 (噂は本当だったんだ。いつもと違うチャイムを聞いた人は行方不明になる。)



17日の帰り、カズトの様子がおかしいのは気になっていたが、ヨウスケが


「大丈夫だよ。きっと空耳だ。噂の事を気にしすぎてて、聴こえたように思っちゃったんだよ。」

と言い


「所詮噂なんて宛にならないもんなんだから、今日は一旦家に帰って、落ち着いたら調査報告でもなんでも聞こうぜ。」

と、そんな風に励ましているのを聞くうちに、周りの皆も落ち着きを取り戻し、また明日集まって話し合おうと言うことになったのだ。



それなのに次の日、彼は学校に来なかったのだ。

ヨウスケ達と、先生に呼び出されカズトの事を聞かれたが、誰も彼の行方を知らなかった。


先生方事情聴取が終わると、教室に戻されたが、そこには、ただ彼が居ないだけの、いつもの日々が広がっていた。


俺達はその日の帰り、じいちゃんの話を聞かせたあと、誰もそのチャイムを聞いたことが無いこと、本館は夏休みの間閉鎖した方がいいんじゃないかと言うことを話し、お互いに気を付けて家に帰るように言い合って解散した。



そしてその後、俺は今日23日まで学校を休んでいる。

とてもじゃないが行く気になんてなれない。

きっと他の学校に来なくなったやつもこんな気持ちだったのだろう。


このまま残りの日数は家で過ごし、もう夏休みは学校に行かなくていい。そう思っていたのだが、荷物を整理してたときに学校に幾つか課題を置いたままなのに気付く。


あまり気は進まないが、1日だけならと思い、俺は次の日学校に行くことにした。


8/24木曜日


学校に着くと、想像以上に教室にいる人数が減っており、この中の何人が行方不明になっているのだろう、と、考えると不安な気持ちで一杯になる。


その日もいつも通りに先生が出欠確認をし、何人かを呼び出し、その他の人は各々の活動をする。

人数が減ったことと、カズトが居ないこと、それ以外は夏休みに入ったときから何も変わらない。そんな時間を過ごし、放課後になる。



「おや、だいぶ変わった面子だな。」

昇降口に行くと、エイジ、ヨウスケ、ミサキ、それと普段は別のグループの男女が1人ずつという珍しいメンバーで集まっていた。


「シュンタは学校に来てないのか。」

姿が見えないので皆に聞いてみると

「私の友達も皆学校に来なくなっちゃった。」

と、ミサキが答える。


「あんなことがあれば、学校に来るのも怖くなるよな。」

そう俺が言い、あのあと行方不明になった人は他にも居るのか、などと聞こうとすると

「無駄話してないでさっさと帰ろーぜ。」

と言って、ヨウスケが歩き出す。すると、


キーンコーンカーン

ちょうど時間になったのかチャイムの音が鳴り響く。


その音に、俺も含めて何人かが肩をビクッとさせる。

噂ではチャイムの音を聴くのが行方不明になる合図となっているのだ。皆がその音にびびってしまうのも仕方がないことだろう。


とりあえず靴を履き、皆早く家に帰りたいと思っているのだろう。少し早足になりながら門を出ると


キーンコーンカーン

と、音が聴こえた。


おかしいぞ。チャイムはさっき鳴ったばかりだし、そもそもこんな音のチャイムなんて聞いたことが無い。

きっと空耳かどこか別の場所のチャイムがここまで聞こえてしまっただけだろう。そう信じて


「な、なぁ。今チャイムの音聞こえなかったか?」

と、皆に聞いてみる。しかし、

「おい、今そんな冗談言われても面白くないぞ?」

と、ヨウスケに言われてしまい


「いや、どうやら空耳だったらしい。変なことを言ってすまん。」

そうごまかす。その後、結局解散するまであまりたいした会話もなく、もう一度皆に謎の音の事を聞くことは出来なかった。



皆と別れてしばらく1人で歩いて、家まであと10分もかからない所まで来たとき、トントン、と肩を叩かれるような感覚がして、背後から

「ねぇ。」

と言う声が聞こえた気がした。


さっきのこともあって、俺は不気味に思い、振り返らずに全力で帰り道を走り出す。


ところが、その声はどこまで行っても

「ねぇ、待ってよ。なんでニゲルノ?」

と、消えることなく追ってくる。


「なんだよなんだよもう!」

俺はそう言いながら必死に走り続けた。


そうしてしばらく走り続けていると、いつの間にか背後の声が聞こえなくなっていた。


「居なくなったのか?」

そこで、ようやく後ろの方を振り向き、誰も居ないことを確認する。

そして、ゼーゼーと荒くなった呼吸を整えながら


「よし、あそこを曲がれば」

(家が見えてくる)

そう思いながら向かい角のを曲がり、見えてきた玄関の前には…



「お兄ちゃんお帰りなさーい。」「お帰りー。」

そう言って、こちらに手を振る弟妹達の姿が見える。

俺がどんな気持ちで走ってきたのかも知らずにこいつらは


「お兄ちゃん汗だくだねー。」「なんでそんなに急いで帰ってきたのー?」

なんて言ってくる。


お化けが怖かったからなんて恥ずかしくて言えないし、とりあえず誤魔化そうと口を開くと、弟妹達から


「もしかして、後ろの人とおいかけっこしてたのー?」

そう言われ、俺はまさかと思い振り向く。そして…











「ツカマエタ♪」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


 最後の日、どうして主人公に不思議な鐘の音が聞こえてしまったのでしょうか。

あの日、素直に皆に音が聞こえたことを話すことが出来たら未来は変えられた?

 あなたは、突然、周りの人が自分には聞こえない音を聞いた、と言われて信じることが出来ますか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも読んでいただきありがとうございます。       ホラー以外も投稿しているので、よかったら他の作品も見ていってください!                    X(旧Twitter)アカウントはこちら
― 新着の感想 ―
[良い点] 人が少しずつ居なくなるのに補修を続ける学校と補修に出続ける生徒。居なくなるというホラーよりも、そちらの方が恐ろしく感じました。しかも、この危機管理の甘さは現実でもあるんですよね。福島原発事…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ