鳴り響くチャイム
8/17木曜日
「おはよー。久しぶり。」
教室に着いて、先に席座っていたカズトに声をかけると
「よー。久しぶり。ずいぶんと暗い顔してんな。話は聞けたのか?」
と、聞かれる。
「一応聞けたんだけど、なんで閉鎖することになったかは知らないってさ。」
そう言って、じいちゃんから聞いた話をする。
「ふーん。普段と違う時間にチャイムねぇ。それだけだとよくわからねえなぁ。まぁ、それが聞こえなければ別に問題ねえって事だろ?」
と、カズトは言う。更に
「今日は途中まで女子のグループと帰ることになったんだが、先週、ミサキと帰ってるやつが居なくなったらしいから、その変なチャイムが鳴ってたのか聞いてみようぜ。」
と、言ってくる。
「いつの間にそんなことになってたのか。」
カズトが聞いた話によると、ミサキはいつも2人で学校から帰っていたが、10日を最後に友達と連絡が付かないらしい。
そんななか、俺が休みの間に噂の事を調べるという話をカズトから聞いたらしく、今日の帰り、俺の友人と話を聞きたいと言うことで、一緒に帰ることになったらしい。
「と言うわけで、帰りの人数は増えるけど、調査の結果報告宜しくな。」
「調査だなんて大袈裟だな。」
そんな風に帰りの事を話し合い、今日もお盆明けと言うこともあって、教室に居る人数は少ないが、何時ものように時間が過ぎていく。
「あっ、といけない。忘れ物だ。」
放課後、昇降口まで来たところで、帰りの事を考えていたせいかぼーッとしていて、教室に忘れ物をしてしまった。
「悪い、先行っててくれ。」
俺はそうカズトに声をかけると急いで教室に戻っていく。
「おう、ゆっくり歩いてるから早く追い付いてこいよ。」
と、カズトは返事すると、いつものエイジ、シュンタ、ヨウスケそれと、ミサキを含む女子四人と共に帰路に着く。
俺は、教室に入り机の中を見るが探しているものが見つからない。
このあと皆に話さなきゃいけないと言うことで、じいちゃんから聞いた話が頭のなかで繰り返し再生される。
そのせいもあって、少しの物音にもびくびくしながら探し物をする。
「おかしいな。机の中だと思ったんだけど、もしかしてロッカーの中か?」
キーンコーンカーン
ビクッ
「ひっ。」
突然の鐘の音にびっくりして声をあげてしまったが、時計を見て
「なんだ、いつもの時間か。驚かせやがって。」
と、一人愚痴る。
チャイムが鳴り終わると、さっきまで以上に、周りが静まり返り、人気が無くなったように感じてしまう。
もう、カーテンの裏や教壇の下に誰かが隠れているんじゃないか。そんな想像までしてしまい恐怖感が増してくる。
「早く見付けてさっさと追い付かないと。」
そう口に出して教室の後ろの方に向かう。
すると、廊下の方から足音のようなものが聞こえる気がした。だが、それは教室の手前辺りで止まってしまう。
「ん、足音?まだ誰か居るのか?」
音は微かに聞こえただけだったので、気のせいかと思い、顔を上げた瞬間、バンッと突然教室の扉が開いた。
「うわー!!」
思わず大声を出してしまったが、開いた扉の所をよく見ると、担任が俺の探しものを持って立っていた。
「おぉ、教室に戻ってきてたのか。探したぞ。これ、忘れ物だ。あと、いきなり大きな声を出すな。びっくりするだろ。」
担任はそう言いながら、忘れ物を手渡す。
「す、すみません。ありがとうございます。」
俺がそう言って、探し物を受けとると
「寄り道しないで帰るんだぞ。最近は学校から家に帰らないで連絡が付かなくなるやつが増えたからな。」
担任からそう言われる。
「わかってますよ。俺はいつも寄り道なんかしてないです。これ、持ってきてくれてありがとうございました。」
そうして、担任と帰りの挨拶をしたあと、俺はカズト達のところへ急ぐ。
門を出ると思ってたよりも近くにカズト達を見付けることが出来た。
「おーい。待たせたな。」
と、声をかけながら集団に近付くと、なにやらカズトの様子がおかしい。
「どうしたんだ?こんなところで止まって。俺のことを待っててくれたのか?」
そう集団に問いかけると、カズトが
「お、俺聞いちまった。聴こえちまったんだよ。聞いたことの無いチャイムが。」
と怯えたように話す。
周りの人に話を聞いてみると、どうやら門を出た辺りでいつものチャイムが鳴ったあと、カズトが別のチャイムの音を聞いたらしい。そして、歩くペースを落とし、最終的に帰り道が怖い、と、ここで完全に立ち止まってしまったらしい。
この様子だととても報告会など出来そうに無いので、女子たちとはここで別れて、俺たちも話をするのは明日にしようと言うことになった。
そのままそこで皆解散となり、カズトは、ヨウスケに落ち着かせられながら、その日はそれぞれの帰路に着いた。
そして次の日、カズトは学校に来なかった。