広がる不安
8/7月曜日
ざわざわざわ
今日は朝から、話題が例の噂で持ち切りなのか、心なしか教室にいる人数は減っているようなのに、いつもより騒がしく感じる。
「おはよー。やっぱりお前は来るよな。」
カズトの席に近付くとそう声をかけられる。
「おはよー。やっぱりってどういう意味だ?」
と、尋ねる。
「いやー、なんか先週の噂の影響で、夏休み学校に来るのやめたやつが何人か居るらしいぜ。」
「ほーん。そう言えば、親が年寄り連中の間で本館が開いてることが話題になってるって言ってたな。」
「お前は噂の事とか気にしてなさそうだな。」
「俺の周りだと話してる人があまり居なかったからな。噂の内容も先週聞いた分ぐらいしか知らないんだ。」
2人でそんな風に話していると、ガラガラッと先生が入ってきて
「お前ら席に付けー。」
と言い、出欠を取り始める。
そして、その後
「8月も2週目に入って、学校に来なくなるやつも増えてくると思うが、今年からは面倒でも登校した次の日に欠席するときは学校に連絡を入れて欲しい。」
と、新しい連絡事項を言うと、それ以外は先週までと比べて、特にかわったこともなく解散となった。
キーンコーンカーン
帰り道いつも通り5人で歩いていると
「そう言えば、家のばあちゃんが夏休み本館に行くのだけはやめろって言ってきたんだよな。夏休みに事件が起きてたのって、ちょうどばあちゃんが学校に通ってたぐらいの時なんだよな。」
と、シュンタが言う。
「まさか、お前のおばあちゃんも本館を解放したら祟りが起きるとか言い出すんじゃ無いだろうな。」
「さぁ、そこまで言うかはわからんが、本館が夏休みに封鎖されるようになった理由は知ってるかも知れないな。」
「それって今流れてる噂とも関係あったりするのかな。」
なんて話を聞いてると、俺はあることを思い出したので皆に提案してみる。
「俺のじいちゃんが昔この学校に通ってたって言ってたような気がするし来週じいちゃん家に行くから何か知ってるか聞いてみようかな。」
するとカズトが
「なんだ?学校でお化けの噂が出てるけど、昔もそんなことあった?とか聞くのか?」
と、言ってくる。
「いや、単純に本館がなんで閉鎖されてるのか知らないかなって。もっとも、学生の頃の話なんて覚えてないって言われるかも知れないがな。」
そんな話をしながらその日は皆と別れた。
その夜、親に何か新しい情報が無いか聞いてみると、保護者の方は特に気にしている様子は無いそうなのだが、年配の人たちが本館を閉鎖するように学校に訴えるものが出てきているらしい。
自分たちの頃は、別館が空いていれば問題は無かったのかもしれないが、近年の夏は扇風機なんかじゃとても追い付かないくらいに暑い。わざわざ署名運動までして本館を開けてもらったというのに、年寄り連中には余計な事をしないでもらいたいものだ。
その週は、親の言っていた通り学校に引っ切り無しに電話がかかってきていたのだろう。先生も教室にうんざりしたような顔で来るようになっていた。
また、朝の出欠確認のあと、休みの連絡が無い人と、前日一緒に帰ってた人たちが呼び出されるようになったが、2.3日もすれば、もはやそれは見慣れた光景になっていた。
そして、俺のクラスは特に問題らしいことも起きることなく週末を迎えることになった。
お盆期間に入るため、学校は全体的に休みに入り、次に来るのはだいぶ先になるので、皆とは今度会ったときにじいちゃんから聞いた話をすることを約束し、その週は解散した。