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スラッガーの境地

「デーブ、デーブ、デブ、困った子。馬鹿の国からやってきた。デーブ、デーブ、デブ、他のデブに失礼。早く、私の前に、出てーこい♪」

 アッシュが片手にコンビニ袋を持ち、もう片方の手にセンゴクの服が入った鞄を持って放浪していた。コンビニ袋の中には肉まんとピザまんが入っていてホカホカと温かかく辺りに匂いが漂っている。



A「どこへ行った?」

B「気をつけろ。あのデブは南斗聖拳を使うぞ」

C「早すぎる!」

D「どこへ消えた!」

 アッシュの横を数人の男たちが通り過ぎ、口々にセンゴクの話題を言っていた。陽は既に落ちており辺りは暗い、センゴクはもう既に追跡者をまいて家についているかもしれなかった。だけど、不安だったアッシュはノンビリと探していた。



 持つべきものは友達である。



「ニャー」

 アッシュは声の方を見た。茂みから二つの目が光っている。肉まんを千切って、腰を低くしてゆっくりと近づいていった。



「セ、セッちゃん」



 アッシュが持っていた肉まんの欠片をセンゴクは口で咥えて、また茂みの中へ入っていった。それは確かにセンゴクだった。タイガーマスクを被っているが、姿形と佇まいだけでわかったのは流石の幼馴染だ。



「ニャー」



「セッちゃん、どうしたの?」アッシュは混乱してセンゴクの昔の呼び方を言っていた。

「ニャー」

「可愛いー♪」

 アッシュは猫好きだった。思わずセンゴクを抱きしめたが、センゴクが暴れまわって抱擁から逃れた。アッシュはよだれを流し、両手をもみもみと握るしぐさをした。

「しかし、どうしたんだろう。物の怪にでも取り付かれたかな?」



「センゴクが猫語を喋る?」

「そうそう。可愛いの~♪」アッシュはジョーダンに携帯で電話をかけていた。

「センゴクだぞ? やつの半分は脂肪で出来ている」

 それは言い過ぎだった。

「プニプニしていて可愛いじゃん♪」

「俺、センゴクよりアッシュのほうが心配になってきたよ」

「それよりも、センゴクはどうしちゃったか分かる?」

「何で俺に聞くか分からないけど――



 ドラゴ○クエストモ○スターズだと野生値を下げるのに肉をあげるよね。



 それでいいんじゃない?」



 ガチャ。プー、プー、プー。

「切りやがった」

 アッシュはプリプリと怒ったが、試しに丸ごと一個あるピザまんを取り出した。

 茂みに向かって投げた。

「ごにゃああああ!」=丸々太った猫。

「にいいいいいいっ!」=顔に海賊傷のある猫。

「ニャー」=センゴク

 アッシュがセンゴクに投げたピザまんに野生の猫が飛び掛ってきた。

 センゴクは飛び掛る猫へ向けて噛み付いた。瞬時に海賊傷は体をひねってよけて、尖った爪でセンゴクの露出した乳首を真っ二つに切った。太った猫は体重を生かして突進。センゴクの股間にグニャリとめり込み反動で転がった。その結果、二匹はピザまんをほぼ全部取ったが、センゴクは一口ほどしか取れなかった。

「にー!」

「ハヤッ!」

 センゴクは二匹の猫に負けて一目散に茂みの中へ入っていった。

「運動神経が良いとは思っていたけどこれほどまでとは……でも確か……体力は無かったような」



 外は寒かった。体力は限界に来ていた。流れる汗は冷えた。足の裏には小石が刺さっていた。落ち葉で体を温めようと思った。アキレス腱が切れるくらいに寒かった。

 センゴクはボーっとした頭で帰り道を考えていた。完全に風邪を引いていた。思考がままならない、だが長い迷子の末やっと家にたどり着いた。



 わずかばかりだが、野生値は下がったようだ。



 階段を昇る。センゴクの部屋は二階だ。



 ピンポーン。



 ガチャ。



「ぎゃああああああ! 変態!」

 久々に登場の妹が絶叫をして即座に扉を閉めた。

「てめえっ! くそ、チェーンをかけやがった。馬鹿女。俺はお前の兄貴だぞ!」

「違うもん。そんなタイガーマスク知り合いにいないもん」

「叫び声が聞こえたぞ」家の外から男の声がした。このままでは捕まってしまう。

「まずいって早く開けろよ」



「NHKの新手か、宗教の勧誘だ! 騙されないぞ!」

「こんな格好のやつはこねぇよ!」

 正常な突込みだが、センゴクはついつい声を荒げてしまった。

「やっぱりここが怪しいぞ!」



 センゴクは階段のところまで引き返した。

「おいっ」

「あ、あ、あ、あ、あ、アーたん」アーたん=アッシュの昔の呼び方。

「アーたんって呼ぶな気色悪い。つーか、野生値下がった?」

「何だよ野生値って?」

「知らないなら良いけど――って早く隠れろよ!」

「妹が開けてくれないんだよ」

「むっ……あっ! だったら」



「おい、そこにいるのか」



「ナニガデスカ?」

「あれ! ここに不審な男はいなかったか?」

「シツレイナ、ワタシオンナダ!」アッシュは外人の振りをした。

「あの、あなた以外で男の方が……」

「アナタイガイッテ、ドウイウコトダ? ワタシオンナダ。ショウコミセルカ、コノハレンチケイカンメ。ヘルプ、ミー。チカンアルヨ。チカンアルヨ」若干中国っぽかった。

「あの、すいません。出て行きますから騒がないでください」

 警官はスゴスゴと出て行った。



「センゴク、いいよ」

 アッシュは上を向いた。センゴクの住んでいるアパートは二階建てである。階段のところには屋上へ昇る梯子があって、センゴクはその梯子に登って警官の死角に隠れていたのだ。

 だが――いない。

 アッシュは慌てて外を見るが、警官が帰っている姿があるだけだった。

 もう一度見上げた――屋上へ昇るマンホールのような蓋が開いていた。



 アッシュは急いでセンゴクの部屋の前に行き扉をたたいた。



 パリーン。ガラスの割れる音がした。



「てめぇ! この野郎!」

「ぎゃああああああ! 変態! ただの変態!」

「そこで待っていろ。チ○コつけてやる!」

「いやー! いやー! あっ、小さい」

「今何つったんだこのボケ女! 妹だろうが関係あるか! 勃起した立派な姿見せてやるからそこで待っていろ!」

「助けて!」

 扉の鍵が開きアッシュの目の前にセンゴクの妹が飛び出してきた。アッシュはその扉から中に入るとすかさず玄関入ってすぐにある台所からフライパンを手に取った。

「妹は大事に!」

 アッシュはゴルフのスイングの要領でセンゴクの股間を打ち抜いた。

「お、お兄ちゃん大丈夫?」

 妹が心配してセンゴクのところへ近づいた。美しき兄妹愛だ。

「酷いですよ。その……そこじゃなくてもいいじゃないですか!」

「来た球を打ち返すのは常識でしょ」

 アッシュはにやりと笑った。

 町に平和が戻った。

今回のパロディネタ:ド〇クエ、北〇の拳

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