白い稲妻
センゴクはアッシュの腰を触った。アッシュは気付いていないようだ。そのままズボンのポケットに小指を伸ばし、鍵束を引っ掛けて盗んだ。音もたてずに手の中にしまいこんだ。
二人は階段を昇り、アッシュの部屋の前まで来た。
当然――アッシュのポケットには鍵は無かった。
「あれ? あれ? ない」
アッシュは不思議そうに首をかしげた。まさか、幼馴染が盗んだとは思っていないようだ。それぐらいはセンゴクのことを信頼していたようだ。
「ごめん。鍵を落としたみたい」
可哀想に、これから起きることを考えずに謝ってさえいる。
アッシュはサドルが新しくついた自転車までの道を戻り始めた。アッシュは自転車の鍵と家の鍵を一緒にしていたので、ここに来るまでに落としたと思っているのだろう。
センゴク、アッシュの部屋を素早く開錠。
「なっ!」
アッシュが気付いて走って戻ってきた。
遅かった。
「センゴク! おとなしく出て来い」
「けっけっけっ、馬鹿め。俺のオナニーが終わるまでおとなしくそこで待機していろ」
ピンポーン。チャイムが鳴った。センゴクは、はいはいと言いながら、インターホンを取った。目の前の画面に赤い顔をしたアッシュが映った。
「デリヘルは間に合っています」
「いいから開けろ」
センゴクはチェーンをかけてから、扉を開けた。
アッシュは無言で扉の隙間から手を伸ばしてチェーンを動かそうとした。
それを――センゴクは舐めた。
センゴクはアッシュの手首を掴み、丹念に指一本ずつ舐めた。
勝者:センゴク。
センゴクは強敵を倒し、悠々とアッシュの一人暮らしの部屋を見た。ビジュアル系バンドのポスターや、イケメンモデルの写真が張ってあった。そして、爽やかで芳しい匂いがついた空気が充満していた。
深呼吸。
センゴクの下半身は臨戦態勢に入った。服を脱ぎ、下着を脱いで、カーテンを全開にさせた。二階から地上を見下ろすと、散歩中の猫と目が合った。
猫が笑ったように見えた。
そう――センゴクは粗チンだった
落ち込む。
二分後、センゴクは復活していた。
「センゴクゥゥウ、頼むから手加減をしてくれぇぇぇ」
外から悔しそうな声を出すアッシュの声がした。その苦悶の声はセンゴクの股間のピストルを固くするだけで、センゴクの欲望を止めることは出来なかった。
センゴクは迷っていた。女の部屋なのでおかずとなるものが無かったのだ。パソコンがあるので立ち上げてみたら、どうやらネットに繋がっていないようだ。
センゴクは部屋の中にあるものに目を止めた。
「アッシュ」
センゴクは玄関まで行き、チェーンをつけたままで扉を開けた。
「何だよー、手を洗わせてくれよー」
「サドルの値段高かったよね。その分の取り返し方を思いついたのだけど」
「何? 言ってみて」
「コレ」センゴクは扉の隙間からそれを出した。
パンツだった。
「駄目だぁぁぁ! しかも、それ洗ってないやつじゃん」
センゴクはパンツを戻し、鼻に押し付けた。
「ありがとう。神様、仏様、アッシュ様――いや、パンツ様。俺、昔からお前のパンツとは縁があると思っていたんだ」
「バカッ! それは駄目だって、人間には限度って言うのがあるだろ!」
「人間に限度はあるが、俺には無い」
センゴクは人間ではなかったらしい。
バタンと扉は閉まった。
「センゴクッ!」
「うおぉぉぉぉぉぉっ! 見ていてくれ、世界のイケメンどもめ、これが性欲の偉大なる力だっ!」
センゴクはアッシュが貼ってあるポスターへ向け、大声を上げ始めた。
「みろぉ。みてくれぇ。これが俺の菊門だぁぁぁ!」
「お願いだから、それ以上私を汚さないでくれ!」
「アッシュ、アッシュ、そこはまずいって、そこは入っちゃいけない……うおぉぉぉ!」
「人の名前を呼ぶなー!」
「センゴク……優しくしてっ」
「……私のモノマネするなっ」
元気がなくなってきたアッシュは力無くそういった。
部屋の中から、パン、パンと音がした。
「今のもしかして、自分の尻を叩いている?」
「アッシュの尻と思って、俺の尻を叩いている」
「ああ……お前なんてだいっ嫌いだ」
「もっと言ってくれ」
「シネッ! 今すぐ殺してやる」
アッシュは扉を開けて、チェーンを上げ始めた。
部屋の中から、擦る音が聞こえる。
うめき声が聞こえる。
チェーンが外れた。
アッシュは靴を脱がずに、部屋の中へ入った。
「ジョーダーン!」
M字開脚のセンゴクが片手にアッシュのパンツをもって、それでイチモツを覆っていた。アッシュが叫ぶと同時に、センゴクのものは果てた。しかも、何故かジョーダンの名前を叫んでいた。
「わ、私のパンツが……」
「洗って返すから許してくれ」
「いらねぇよ!」
「じゃあ、貰う」
「それも駄目だ」
「つーかさ、俺の真っ裸見て何も思わないの?」
「おもわねぇよ。チンチンちっちゃ!」
「ごろじゅぞごがぁ!」
センゴクはショックを受けすぎて言語感覚がおかしくなった。
「あー、臭いし、もう最悪」
アッシュがセンゴクを押しのけて窓を開けた。そして、きびすを返して、センゴクに近づいて行った。
「ねえ、目を瞑って」
来た、俺の時代。センゴクはそう思うと、目を瞑った。
髪を掴まれた。
「お前みたいな馬鹿は」
センゴクはアッシュに髪を掴まれて、無理矢理歩かされた。
行く先は玄関。
「裸で帰れ」
センゴクは玄関から投げ出された。アッシュは笑顔を見せて、扉を閉めた。
「えっ、マジ?」
センゴクは真っ裸で、持っているものはアッシュのパンツだけだった。
「えっ、しかも続くの?」
メタ発言だった。