妹ちゃんの意外な正体とUNO
「センゴク、まだ日暮は来ないのか」
「おいおい、あいつが予定通り来ると思っているのか。あいつは人と約束した時間を無視し、謝れば済むと思っている馬鹿野郎だ。死ねばいいのに」
センゴクとアッシュは二人で食堂のテーブルでUNOをしていた。センゴクはこのとき初めてドロー4であがっても良いというのを知った。泣いた。
「何でドロー4でも上がっていいんよ」
「ルールがそうなんだよ」
アッシュが髪を灰色にしたのは大学にはいってからだ。それ以前にもアッシュと呼ばれていたが、それは外人とのハーフで目の色が灰色だったからだ。
「ついでに言うと、一位が決まったら終わるんだよ」
「おいおい、俺たちは今まで何をしていたんだ。だから、最後までやるとあんなに長く時間がかかるのね。知らなかった」
「ふーっ、二人でUNOはきついな。止めようか」
「で、何で私の家でオナニーをしたいの?」
周りの男たちがこちらを見た。
「おいおい、アッシュよ。お前には羞恥心が無いのか。羞恥心って書けるのか?」
「羞恥心なんて書けねぇよ。幼馴染に突然言ってくるほうが、羞恥心が無いと思うけどね」
「実は妹が出来て」
「おめでとう。おばさんが妊娠しているなんて知らなかったよ」
「違う。母さんと別れた親父が別の女と作ってできた妹だ。つまり俺とは半分だけ血が同じなんだ。親父と喧嘩をしたらしくて、家出をして――なんと俺の家に辿り着きやがった。それで、昨日からオナニーが出来ないんだ。どうしたら良いんだ。新しく買ったAVは妹物なんだ」
「幼馴染だからって、言って良い事と悪いことがあると思うんだ」
「ううっ、こんな俺で良いなら結婚してくれ」
「直ぐに離婚して慰謝料を払ってくれるなら良いよ」
「何発までやっていいんだ?」
「お前の頭にはそれしかないのか?」
「はい」
「残念だよ」
「で、私の家を借りたいと」
「イエス。アイラブチンチン」
「……その妹ちゃんは美人?」
「ハッハッハ、アッシュサマニハ、オヨビマセンヨ――イエヲカセ」
「ヘタクソなお世辞にもほどがある」
「美人といえば美人だね。それにどうやら作家みたいなんだよね」
「えっ、マジ?」
「うん。ラノベ作家で現役女子中学生、持ってきた荷物に札束と小説が入っていたから本当だと思うよ」
「ラノベって、挿絵とかついているやつか」
「そうだねー。あまり知らないけど」
センゴクの名前の由来は歴史小説ばかり読んでいたからだ。実際は他のも読んでいるのだが、歴史の授業中に発言しまくったことでこのニックネームがついた。
「挿絵がライトノベルの条件だったら、安部公房の壁とかも挿絵がついているから、ライトノベルに入るのか?」センゴクがアッシュに聞いた。
「私に聞くな」
「もっと広義にして、視覚効果を使うのがライトノベルとしたら、アルフレッド・ベスターの小説もライトノベルになるのか?」
「だから知らないって。つーか誰だよ、アルフレッド・ベスターって」
「ライトノベルも所詮は小説の一部でしょ」日暮が二人の会話に割り込んできた。日暮の寝癖は酷い、午後だというのに身だしなみを整えてすらいなかった。日暮は寝坊で何時起きるか分からないため、とあるマンガから引用してつけられた。
「そもそもジャンル分けなんて意味が無い、コレはアルコール飲料、コレは清涼飲料とか分かりやすいものならいいけど、小説とか物語でそれみたいに分けるのは、害はあっても利は無い。例えばライトノベル以外を純文学とする人がいるけど、それこそおかしいことだよね。純文学という言葉に持ち上げると共に下に見る裏の言葉が見えるし、あたかもライトノベルがエンターテイメントに特化しているように言うから滑稽だ。小説は読まれなければ意味が無いのに、どうして文学というものが――失礼、僕は純文学という言い方が嫌いなんだ――あたかも面白くないものと言われるのかが僕には分からない。ドストエフスキーを読めば分かるはず……聞いている?」
「ぐぅーっ。おっ、話は終わったかな」
「やれやれ、私なんて三途の川が見えたよ」
日暮がいじけたような顔をして椅子を引いて座った。
「つーかよ、どうせ喋るなら筒井康隆の文学部唯野教授ぐらいやれよ」
「無理だし。つーか、作者が適当に書いた文で、作者だって呆れて読んで、下らないことを書いているなと思っている文を、僕のせいにするな」
メタ発言だった。
「日暮、知っているか。UNOでさ、ドロー4であがっていいらしいぜ」
「えっ、マジ? 僕たちが今までやって来たUNOを全否定するの?」
「それに、一位があがったら自動的に終わりになるらしい」
「おいおい、そうなったら戦争しかないだろう」
日暮は意外とノリが良かった。
「二人でやるときにリバースを使うと、スキップと同じ効果になる」センゴクの無駄知識。
「それは私も知らなかった」アッシュが感心したように言った。案外、みんな適当にプレーをしているようだ。
「二人になると何も使えないクソカードだと思っていたよ。ごめんよ、リバースカード」感嘆したように呻いた。
「つーか、今回のノリいつもと違うよね」
「いいんじゃない。シモネタばかりじゃ間が持たないし」