こんな会話をしていた。
銀河鉄道の夜観たいなぁ。
かんぱぁねるらぁ……か。
昔、どこかの公民館で観たんだ。
俺と一緒にだろ。
そうだっけ?
そうだよ。
そんな昔から知り合いか……。
そうだよ。
いつ降った雨だろう。
学校の屋上には水溜りが出来ている。
幸い土足なので、アッシュは気にせず踏んだ。
はねたぞ。
ごめん、ごめん。灯りが無いから見えないんだ。
ほら、酒。
どうも……毎回思うけどフェンス低いよね。
小学生でも越えられるぞ……っと。
ちょっと危ないよ!
騒ぐな。この下は教授の研究室があるんだぞ。……ほれ。
え――嫌だよ。危ない。
いいから、手を……。
うん。
アッシュはセンゴクの手を持ち腰ぐらいまでの高さのフェンスをゆっくりと越えた。その一メートル先は何も無いが、逆に考えれば一メートル近く足場があるのでそれほど危険ではなかった。
センゴクはフェンスに寄りかかり、酒瓶を口につけて飲んだ、
アッシュはフェンスに寄りかかったまま、センゴクの手を離さなかった。
いい加減、離せ。恥ずかしい。
誰も見ていないじゃん。
いるぞ。
センゴクが顎で指した先には同じようにフェンスを越えて夜景を見ている男だった。
離したら殺す。怖いもん。
へいへい……。寒いからかな、街中の灯りが綺麗だ。
大学は街中より高台に位置していた。
屋上から見る夜景は宝石をちりばめたように綺麗だった。
あの辺が中学校だな。
そうそう。
高校は向かいの山だからあの辺か。
結構遠いね。
部活のOBで高校に行かないのか?
行かないよ。途中で退部した身だもん。行ったら迷惑じゃん。
俺は帰宅部だったからなぁ。その気持ちが分からないや。
わかるでしょ?
あ――そうだったな。
って……あれ? セッちゃん、痩せた?
少ししぼってみた。
へ~、やる気満々じゃん。
アーたんもやせ……すみません。
女子には体重の話は厳禁だぞ……確かにしぼったけど。
最近むくんでいたか……落ち着け、一歩間違えたら転落死だぞ?
確かにむくんでいましたが……なにか。
なんでもないです。
そういえば、ジョーダンもしぼっていたような。
バイトで忙しかったはずだけど、動ける体にはしているみたいだな。
ジョーダンぐらいじゃないと私の球は受け取れないからなぁ。
練習していたときはどうだった?
なかなか、さすが元キャッチャーだね。
問題はソフトボールってことだ。
二人が話しているのは秋のスポーツ大会のことだった(同時に学祭もある)
アッシュはピッチャーとして出て、ジョーダンはキャッチャーとして出る予定だった。センゴクはポジションは決まっていないが出るのは決まっている。その他のメンバーは知り合いや友達をかき集めた混成チームだ。
野球経験者を集めたチームを倒して、優勝するのが目標だ。
勝てるかなぁ……。
いいセンは行くと思うけど。
センゴクは上を見上げた。酒はすでに飲み干していた。
月は微妙だな。
綺麗だけどね。
曇っているじゃん。
淡く光って綺麗じゃない?
そうかなぁ。
センゴクは酒瓶をもう一本取り出した。アッシュはセンゴクの手を握って夜景を見ている以外、何もしていなかった。
飲む?
う……ん。どうしようかな。
飲まないなら飲むけど。
どうしよう。
センゴクは返事を聞くのを止めて、フェンスを乗り越えた。アッシュを引っ張り、補助してやる。アッシュは眠そうな顔をして、頭をしきりに横に振った。
気持ち悪い。
アーたんって、寒さに弱いんだっけ?
そうだった私は飲んだ後に冷やしちゃ駄目な人間でした。
アッシュはセンゴクに寄りかかりながら、建物の中に入って行き、男子トイレの中にはいった。
出すもん出したほうが良いぞ?
ううううううっ。吐けん。セッちゃん、いつもどうやって吐いているの?
全身を震わせて。
参考にならん。
わかったよ。
センゴクは便器に半分顔を突っ込んでいるアッシュの顔を手で押さえた。汗がひんやりと冷たかった。センゴクは指を口に差し入れて、喉に突っ込んだ。
……ごめん。
別にいいよ。日暮とかジョーダンにだってやったことあるし。
手が汚れた……。
気にすんな。いいから寝ろ。
セッちゃん。
なに?
私が黒髪に戻ったら喜ぶ?
うん。
なら、切る。そんで染める。
ふーん。
楽しみにしててね~。
楽しみにしているよ。
アッシュが起きたときは自分の部屋のベッドで寝ていた。
枕元には酔い止めの薬が置かれていた。一気に飲んだ。
喉に異物が混入しているようで違和感があった。
アッシュは
風呂に入って、
着替えて、
歯磨きをして、
髪を切りに行った。