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ポップアート

 大学。

 日暮はセンゴクの妹と話をしてした。

 子供のときから書いていたから、小説の教科書みたいなのは参考にしていないです。

 えっ……じゃあ、どうやって書いているの。

 まずですね。いっぱいインプットします。

 ……何を?

 小説、音楽、映画、漫画、その他諸々です。

 パクリは……。

 無いですよ。

 きっぱりと言い切る?

 はい。

 その根拠は?

 私、書きながら考えるタイプだから。

 少しも設計図を考えないで?

 あっ……設計図を書きながら考えるんですよ。そして、ある程度まとまってから、その設定に沿って書いていくんですが、どうしても書いているうちに成長がしたりするから、一度ある程度まで書き終えたら、読み返して矛盾が無いか調べて、また書き直します。これを三回くらいはしますね。自主的にやってから初稿として編集者に見せたりしますよ。

 なんですか?

 センゴクの妹は顎を腕に乗せて微笑んでいた。

 日暮さん。小説書くんですか?

 うん……まあ。

 ですよね。そういうことを聞く人はだいたいが小説を書こうと一度は思った人です。世に出回っている文章作法本にはいろいろ書いていますよね「……」って台詞だけで終わらせるな、彼女は口を噤んで何かを喋るのを止めてしまった――みたいな文章を書けとかね。あー、あとは・・・を使っていることも突っ込まれるとかですよね?

 あるね。うん。

 プロがやっているからといってやってはいけない――とかも。

 あるある。

 実はプロになってからそういう系を読んだんですよ。

 そうなんだ。

 話が詰まってしまって、どうやったら話を進められるか分からなくなったんです。他の人が書いた小説を読んでも、自分が昔書いた小説からアイデアを探しても、そういう系の教科書を読んでもからきしでした。

 どうやって解決したの。

 散歩。

 散歩?

 毎日、ひたすら歩きまくっていると暇で仕方が無いんですよ。ボーっとしていたら、頭の中に勝手にキャラクターが現れて、ワーワー騒ぎ始めたんで、ひたすら歩きまくってパンクするぐらいの展開を思い浮かべました。

 新井素子さんは分岐点で十通りぐらいの展開を思いつくらしいけど、君は?

 ほぼ一本道ですね。と言っても、書いているうちに展開が変わることがあるから、正確に言えば二通りかもしれませんけど。でも編集から原稿を返されて半分近く展開を変えたこともあるので、そう考えたら三通りぐらいは頭の中にありますよ。

 アニメ化とかどう?

 冲方さんとかも言っているけど、ライトノベル作家は企画屋扱いされているからいい気はしないですね。これも悪いし。

 と言って、指で円の形を作った。

 あと、別に良いんですけど、二次創作の影響がどうも……。

 あ……はいはい。

 ……淫乱になったり、同性愛者になったり、作品では一度も言ってないのに、そっちの世界ではそっちの性癖が当たり前になっていたり、もう苦笑いですよね。同人誌、何個か貰ったことがありますけど。

 あるんだ。

 ありますよ。貰うとけっこう喜ばれますよ。

 まあ、それは喜ばれるだろうね。

 こういうのが喜ばれるんだって思って、ヒロインぶっ殺したら死ぬほど非難が来ましたけどね。なんで楽しむために読んでいるのに、ヒロイン死んでんだよって……理解できなかったですね。ヒロイン死んだら、楽しいじゃないですか。しかも主に言ってきた人たちは、ヒロインを強姦する同人誌かいている人たちが文句を言ってきたんですよ。その後、主人公とライバルが敵対する関係を書いていったら、BLのほうに捕まって、散々な目にあったんですけどね。

 怒っている?

 多少――もう慣れたからどうでも良いんですけどね。まあ、所詮は原案家としか見ていないんだなって思うだけですね。

 なんていうか……怒っているね。

 怒っていませんよ。私の作品なのに、無視されているようで悲しいだけです。せめて、原作読んでからにしてほしいのに、二次創作とか……。

 膨れっ面をしてセンゴクの妹はテーブルに顎をつけた。

 あのさ――小説を書くコツとかある?

 書き始めればいいですよ。ある程度のマニュアルがあるとかいっても、そればっかり調べていたら先に進めませんからね。あと、二次創作から始めるとか。

 おっ、意外な発言。

 ゴチャゴチャいわないで書けばいいんですよ。日暮さんも書いたことがあるんですよね?

 ん~、文学書いてみた。

 どうでした?

 挫折した。

 まあ、そうでしょうね。私も書いて挫折しましたよ。

 ところで小説を書こうと思ったきっかけの小説とかある?

 ……藤沢周平の『蝉しぐれ』ですね。日暮さんは?

 僕は……ネット小説。

 へ?

 サイトとかに載っている小説でね。読んでみたら意外と面白くてさ、でも僕が頑張れば書けそうな内容だったんだよ。で、しばらくはまっていて、いろんなところを回っていてさ、なんでこれが商業誌にならないんだろうなって思ったのが一つあったんだよ。それが川原礫の『SAO』。そのときはまだWEBでやっていたんだけど、こういう話書きたいな~って思って――文学かいた。

 『SAO』文学じゃねぇし。

 そのときまで文学書いていたからそっちのほうが簡単だと思っていたんだよ。

 で、SAOに影響されて書いた小説は?

 完成しなかったよ。

 ふ~ん。



 日暮はセンゴクの妹と別れて、帰宅した。

 彼は部屋の掃除をしていた。

 ダンボールには大学ノート二十冊ほど入っていた。

 きっちりガムテープで締めきった。

 そして、押入れに入れた。

 日暮はそれを捨てることは出来なかった。

 読者のいない小説はずっと日陰にいるだけだ。

 誰の役にも立たずに。

 そこに居座るだろう。

参考。

新井素子の『…‥絶句』より

冲方丁の『ストーム・ブリング・ワールド②』より

冲方丁の『冲方丁のライトノベルの書き方講座』より

その他……。

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