センゴク、幼馴染に有り得ない頼みをするの巻
「で、どうなったの?」ジョーダンがセンゴクに聞いた。
「あの後、姉ちゃんから電話が来てさ。父親の娘が家出をしたらしくて、姉ちゃんの所に電話が来たらしい。本当に妹みたいだ」
二人は同じ大学の建築学科に所属していた。同い年のこともあり、登校時間がたまたま重なり、一緒に歩いてた。足は建築学科の棟へ向かっている。他の工学部の棟をすり抜け、街路樹を通り抜け、人ごみを通り抜けた。
「そういえば、どこで寝たんだ? いくら妹とは言え、センゴクが我慢できるのか?」
「俺は普通に布団で寝たけど?」
「……妹ちゃんは?」
「押入れ」
「布団を貸してやれよ」
「それで、入れた後に気付いたんだけど、押入れにエロ本しまっていたから、朝気まずかったね」
「妹物が多かったのかな」
「センゴクよ。お前は予想以上に駄目な人間だ」
ジョーダンが滅茶苦茶悲しそうな顔をした。彼は三人兄弟の一番上で、彼の家ではそういうことは隠すものと決まっているのだろう。
「いや、それはおかしいよ。母親にノックしてから部屋に入れと日々言っているのに、突然開けて息子のオナニーを目撃してしまった。この時に悪いのは母親だ。それなのに! 何故! その息子が! ムスコを目撃されて! 落ち込まなければならないのか! 世界は間違っている! 女は男が予想以上に変態なのを知らなければならないし、注意すべきだ」
「その意見には賛成だけど、センゴクも注意しろよ」
「確かにね。朝、目が合ったとき、こちらをゴミのような目で見てきたからね。あれはショックだった。興奮した」
「ポジティブ!」
センゴクとジョーダンは建築学科の棟についた。玄関のそばにあるエレベーターホール。二人はエレベーターの前で箱が降りてくるのを待っていた。最上階からここまで一階ずつ止まっているようでエレベーターはいつまでたっても来なかった。
「我慢できねぇ」ジョーダンはそう言うと、後ろにある階段を向いた。「階段で行くわ」ジョーダンはそういうと階段をさっそうと昇り始めた。
「センゴクも階段を使えよ。余計に太るぞ」
「何とでも言うが良い。コレが俺のベスト体重だ」
センゴクは一人で待っていた。
「ギャアアア!」
その悲鳴はエレベーターの箱がセンゴクのいるところの二階上にいる時に聞こえた。階段は上下に繋がっているので、声が良く響くのだ。
「どわぁぁぁ!」
エレベーターの箱がセンゴクのいるところの一階上に着いた。またもや悲鳴が聞こえた。
チィン。
エレベーターの扉が開いた。
中に血塗れの男が倒れていた。
「いっ!」センゴクは悲鳴をあげるのを何とか耐えた。そして、血塗れの男を良く見て、安心したように溜息をついた。
そして、安心したようにエレベーターに入り、三階を押した。エレベーター内にトマトの臭いが充満しており、男は血塗れになっているのではなく、トマトベースのラーメンを被っているのが分かった。
チィン。
センゴクは扉の間から出た。
血まみれの男がセンゴクの足首を掴んだ。
「何故、無視をする」外人とのハーフのような端整な顔、男はセンゴクに引きずられて、トマトの汁を筆につけて床で払ったような跡を作った。
「離せ、ヘンリー」
男の名はヘンリー、ファーストネームはO。某大物作家と同じ名前だった。馬鹿でセンゴクより変態のくせに女を入れ食いしている奴だった。
「何故、こんな哀れなことになったか聞いてくれないのかい?」
「黙れ、ヘンリー。お前の自慢話など聞きたくない。どうせ、食堂でラーメンのお湯を入れて、授業がある教室で食おうとしたら、昨日抱いた女にビンタされたとかだろ」
「何故、分かる」
「それで、万年金欠症のお前はラーメンをこぼした事と、金をかけているシャツに色がついてしまい、クリーニング代に金がかかるから、大二病全開でたそがれていたんだろ」
「そこまで分かっていて、無視するのは酷すぎるじゃないか」
「シモの自慢なんて聞きたくねぇんだよ」
「うっうっ、そこで頼みなんだが、クリーニング代を払ってくれないか」
「いやいや、意味が分からないけど」
「センゴクは一度は男を抱きたい人間だと思っていた。そのチャンスをやろう」
センゴクはヘンリーの顔を蹴り、髪を掴んでエレベーターに投げ返した。
「どうせやるなら、童顔のほうがいいっ!」
チィンとなり、扉が閉まった。
「相変わらず、馬鹿丸出しの変態だね」
センゴクは後ろを振り返ると、背中にピッタリとくっ付いて女が立っていた。
「至近距離で人の後ろに立つな、アッシュ」
女は髪の色を灰色に染めていた。センゴクとは小学生からの古い付き合いで、かなり仲が良いために恋人同士だと噂をされたりしている。
「そうだ――アッシュよ。お前に頼みたいことがあるんだけど、こんなことを頼めるのはアッシュしかいないし」
「ん? 何、藪から棒に」
「お前ん家を貸してくれないか?」
「別に良いけど、何をするの」
アッシュも一人暮らしだった。
「オナニーをさせてくれないか?」
「死ねッ!」
センゴクはアッシュに殴られた。
「寝言は寝て言え!」