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日本のオズワルド

「シスター・シッター!」

「うわっ! びっくりした。突然なんだよ」

 センゴクはうとうとして眠りに入りそうなときに突然起こされた。目の前にはセンゴクの頭の横で、ちょこんと座っている妹がいた。手にはコンビニ袋、中にはおにぎり三つ、妹はフランクフルトの棒をカジカジ齧っていた。

「タイトルだよー。タイトルに偽りありだよー。何で十話を越えているのに、私あんまり出ていないんだよー。読んでいる人は妹萌えを期待していたに決まっているじゃん! って、どわぁぁぁぁぁぁ! 何読んでいるの!」

 妹ちゃんはセンゴクが握り締めていた紙の束を奪った。

「プロのくせにプロットを見られて恥ずかしいのかよ? ちなみにシスター・シッターは翻訳すると、姉妹着席者」

 タイトルが思ったよりエロかった。

(プロット=小説における因果関係などの文。最近だと、意味はもっと広義)

「こんな数時間で考えたものなんて読まないでよ。徒然なるままに書いているから意味も分かりづらいし、それにこれはボツなの。こんな文いらないの。だからどこかへしまっておいてアイデアとして取っておくの」

「え? 書かないの?」

「書かないよ」

「なんで?」



「こんなもの誰も読まないからね」



「なるほど」

「どんな高尚なものでも、どんなに面白いものでも広く読まれないと駄目なの。これはゴミだけど、読まれるという要素に欠けているのは同じ。悲観的過ぎるし、偏執的過ぎるし、あとグロ過ぎるのよね。普遍性が無いから駄目。それに主人公女の子になっちゃったからね。あと、ほとんど別世界の話になっちゃったから、世界観を考えるのが面倒」

「面倒って……それに普遍性が無くても売れるものは売れるじゃん」

「お兄ちゃんは分かっていない。そういうものは凄いの。何十年も残る価値を持った凄い小説なの。最近は出版不況でぜんぜん小説売れないし、作家は大変なの。皆兼業なの。作家は腕一本で書いているから皆優秀な人とか思っちゃ駄目だよ。ピンキリなの。私みたいな作家は書かないと忘れられちゃうし、常に一定のものを書かないと駄目だし、売れるシリーズを作らないといけないの。愛は祈り、小説も祈りだと言うけど、そんなの嘘だから。自分に誠実に書いても売れないからね。ボツにされるし……クキー! もっと有名になりたい。もっと地位が上がったら――一冊だけの本とか出せるのに――うげ――うい――」

「じゃあ行ってきまーす」

 センゴクはまったく話を聞いていなかった。

「もっとキャラクターを魅力的にとか言われるし! どうすればいいかわからないとか言うと、巨乳とか、貧乳とか、胸にコンプレックスがあるとか、親父編集者に鼻息荒くして言われるし――」

 バターン=扉が閉まる。

 センゴクは玄関から外に出た。

 少し風邪気味、外は達磨になりたくなるくらいの寒さ、風は強い。

「帰りてー」

 玄関前で言う台詞ではなかった。



「やっぱり小説って読まれないと駄目なの?」

「僕前に読まれなければいけないって言っているよ」

「いつ?」

「妹ちゃんの意外な正体とUNOの話のとき」

 日暮が言った。

 日暮はまた授業を遅刻していた。今の時刻は夕方である。

 センゴク、携帯電話でアクセスして読み返す。

「本当だ。言っている」

「やっぱり僕の話聞いてなかったんだね。で、なんでそんなことを聞くの?」



「妹がラノベ作家で自分の方向性を迷っている」



「作家だと」



「うん」



「会わせてー!」

「駄目」

「なんでだよ!」



「どう考えても、アドバイスするだろ? 素人のくせに」

 日暮の趣味は読書で、履歴書のときに個性がないとよく言われるやつだった。

「なんだよ、素人のくせにとか。お前だって、作者だってど素人だろうが」



「『文学部唯野教授』で読んだんだけど、規範批評ってやつだよ。小説の有り得たかもしれないもうひとつの理想的な小説像と比べてけちつけるやり方。やるでしょ? ここの展開はとかこうすれば面白かったのにとか言っちゃうでしょ」



「……言うかもしれない」

「で、作者は自分もそういうことをするときがあるから戒めとしてここで言っておいた」

「この小説はメモ書きかよ! 愛が無いな、愛が」



「鬼ごっこする人、この指とーまれ」ヘンリーが大声を出しながらセンゴクの横の席に座った。後ろからかわいらしい女の子がぞろぞろと歩いてくる。建築学科以外の女の子もいるみたいで、見たことの無い女がたくさんだった。



「なんのようだよ、ヘンリー。しかも近いし。イカ臭いから寄るな」

 センゴクはヘンリーに対して特別冷たいのだ。

「鬼ごっこしない?」

「しねーよ。てめぇ一人だけでリアル鬼ごっこしていろ。追いかけねぇから」

 ひどい言い草だった。

「じゃあ、仕方が無いな。セックスする人、このチンコとーまれ!」

 ヘンリーのマラがムクッと起き上がり、ズボンをもっこりさせた。

「きゃああああ! 大きい!」

 女の子がほほを真っ赤にさせて目を潤ませた。

「はい、日暮」

 楽しそうに見ていた日暮にセンゴクはあるものを手渡した。



 それは、ヘンリーの愛しきオシンだった。

 かわいらしい表情でこちらを見ている絵があった。

 センゴクは手草が人一倍悪いようだ。



「この絵をピ○子にしてやりなさい」

「えっ、大丈夫なの?」

「大丈夫です。彼女はオシンの母親です。この後、オシンでやってくれる人を募るからその前にやりなさい」

 日暮は絵がうまかった。ペンを持つとスラスラと書き足した。



「おい、ヘンリー。オシン落としていたぞ」

「センゴク、ありがとう。では募ろう。このオシンを使って僕とアバンチュールを――?」



 ヘンリーは不思議な顔をした。

 いつもと様子が違う。

 この段階で逃走者が多数なはずなのに、

 今日は失笑が巻き起こっている。

 何が起きたんだろう。

 皆の目線がオシンに集まっている。

 ドウイウコトダ?



 クルッ。ヘンリーはオシンを見た。



「オバマー!」



「やばいぞ! マジで頭がおかしくなった」

 センゴクは日暮に三馬身差をつけて走っていた。

「でも、何でオバマ?」

「ピ○子にしろって言っただろうが! 性別だけじゃなくて、人種まで変わってんぞ!」

「何でオバマなんだ?」日暮は不思議そうに首を傾げた。

「知るかそんなの!」



「ちょっと君!」

 はい、何ですかと思いながらセンゴクは振り向いた。



 警察!

 二人組み。

 さよなら、俺の人生。とセンゴクは思った。



「あっ、おまわりさん。助けてください。オバマと叫ぶ変なやつが追ってきているんです。現代のオズワルドですよ」

 日暮は固まるセンゴクを無視して、来た方向を指差した。

 ヘンリーが絶叫し涙を流しながら走ってきた。しかも、いつのまにか全裸になっている。

「あっ、あいつだ! 昨日、学校を全裸で走っていた男は」

「あれが例のタイガーマスクですか?」

「そうかもしれない。行くぞ!」



「ラッキー!」

 センゴクは思わず呟いた。

 センゴクはヘンリーに罪をかぶせることにした。



「チェーンジ! オシンはこれじゃない! チェーンジ!」

「先輩、意味の分からないことを口走っています!」

「気をつけろ。例のタイガーマスクだったら南斗聖拳を使うぞ!」

「ああ、なるほど。オシンはこれじゃないって言っているのね。分かりづらいな」

 日暮が苦笑をした。

「えっ? アナル掘るほど?」

 センゴク、お前は何を言っているんだ?



「甘いわー!」

 ヘンリーが警察の若い方に飛びかかった。

 ボディープレス――いや、股間プレスだった。

「ひぎゃああああ!」

「あっ、入った」

「あれはトラウマになるな」

 何が入ったかはご想像にお任せします。



 ヘンリーは捕まった。

 逮捕劇にセンゴクも参戦をして、お手柄として警察に褒められた。

 ヘンリーはアリバイがあったため無罪とされたが、これが彼の人生を変えた。



 彼はタイガーマスクを倒すことを誓った。

今回のパロディネタ:オ〇ン、北〇の拳

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