巫女の系譜。
センゴクの目の前にはお茶漬けとアイスがあった。
「なんだこれは?」
センゴクは妹へ向けて呟いた。
「バニラは嫌いだった。しょうがないな……お兄ちゃんには抹茶アイスをあげるよ」
「こんなもの食えるか!」
あの騒動を終えて、センゴクは高熱を出した。
何とか明日の授業は受けようと思い根性を出して眠り、すがすがしい朝を迎えたばっかりだった。少し微熱はあるが、午後からの授業で余裕だと思っていた。
「これが朝食だと?」
「抹茶だったらお茶漬けになるよ……なんつて」
「コンビニへ行って来い! ほら五百円! おつりはあげるから良い物買ってきなさい」
「五百円だと、おつりは良い額にはならない気がする」
「うるせぇよ! 行って来い」
「ひーん! お兄ちゃんが優しくないよ!」
妹がぶりっ子しながら外へ出て行った。
センゴクは呆れながら欠伸をした。傍らにはタイガーマスクがある。センゴクはマスクに気づいて、急いで押入れに隠した。押入れは妹の居住空間になっており、ルーズリーフの紙が散らばっていた。センゴクはそれを手にとり、コタツに入った。
数百年前、この星は温暖化を向かえ氷河が溶け始めた。
人類は、温暖化は二酸化炭素のせいではなく、星の周期として温暖化を迎えたといった。
それは間違いだった。
氷の牢獄の封印は薄れてしまい、氷河に封印されていた太古の生物は復活してしまった。
温暖化は氷の牢獄の封印が解ける兆しだった。
星に太古の生物が跋扈した。
そして――呪いを撒き散らした。
星の人間に対する恨みのような呪いは、人を食う衝動を起こすものだった。
太古の生物は人くらい、人は生物を殺した。
だが、人は太古の生物を殺すと呪いにかかってしまった。
そして食人鬼となった。
餓鬼道。
餓鬼道は世界を震撼させた。太古の生物は人を食らうが、殺したら同じように人を殺す呪いにかかってしまうのだ。これに対抗できたのは一人の少女だった。
太古の生物と一緒に封印された少女。
美しい? 当然。
ロリ? ○。
巨乳? 貧乳? 考慮の余地あり。
巫女。少女は巫女にしよう。
巫女だから呪いを食らっても少しくらい平気なんだ――そう言い張ろう。
センゴクは感心した。妹が何を書いているのかと思ったら小説の一つの案だった。
現女子学生にしてライトノベル作家という有り得ない設定の妹だ。
どれどれとセンゴクは先を読み進めた。
巫女は太古の生物と一緒に生贄として封印されたのだ。
巫女は復活したときに、孤独を感じていた。
街を歩くと、匂いが違っていた。
人は超自然的なものに対する関心を失っていたのだ。
果たして――巫女にとって今の人は『人』なのだろうか?
葛藤――行き戻る。
最終的に子供たちに希望を抱き、今からでも遅くは無いと決意する。
だが――巫女は弱かった。
長年の封印とかのせいではなく、単純に弱いせいで生贄にされたんだよね(笑)
「(笑)って」
センゴクは妹の良い性格に笑ってしまった。
巫女は頑張ったんだ。
人々に忌避されながら巫女は歩き回り、戦い尽くし、太古の生物を殺しまくったんだ。
血は巫女にかかり、月は巫女の背に、呪いは巫女に満載。
腐る? 痛み? 刺青? 老い? むむむっ……。
聖痕――宗教過ぎる? でも、運命とか読者は好きだし――運命は突き詰めると宗教的だし――といっても無神論の日本は――スピリチュアルすぎるかな?
保留。
設定は大事。大事。
キャッチーなものが大事。
後で考えよっと。
巫女はどうにかして太古の生物を殲滅するんだ。
そうしたら巫女の体は言語に絶するくらいにダメージを受けて、他人から見たら軽蔑されるような対象になる。
でも、救いは必要だ。
戦災孤児!
戦災孤児を巫女は育てるんだ。これが後継者になる……。
土地って言う土着的なものもテーマに入れられるかも……。
詳しく書くとかわいそうになるからぼかして――巫女は迫害される。
殺される?
うん。殺される。
みんなにね。
巫女は死ぬ。
街の人間に全員に呪いが飛び散るんだ。
みんな餓鬼道に落ちるんだ。
世界は終わりかける。
うーむ。巫女に肩入れしすぎかな?
良い人過ぎる。
犯罪者だったとか?
太古の生物の味方をしたとか?
太古の生物に恋人がいたとか?
復活した後、その人も殺していたとしたら?
あーだから、巫女はおとなしく殺されたのかも?
あー、良い方にばかりいってしまう――これも保留。
ここからが後進の話。
後進は巫女として育てられた。
数十年、巫女は呪いのかかった人と戦い、巫女としての地位を上げるの。
でも、やっぱり――うーん。やっぱり巫女が健気になっちゃう。
巫女は弾丸になるの?
「はっ?」センゴクは思わず言ってしまった。
弾丸なの!
その時代、巫女を育てるやり方は分かっているの。
呪いは肉体に出るから。
肉が呪いを防ぐ方法なの。
だから銃弾にしちゃうの。
「グロッ! ふざけんなよ。なんじゃそりゃ」
戦争孤児を電脳空間で教育して半年で仕上げて弾丸にする。
だから人間は――人間は――結局は相手と同じように人を犠牲にする餓鬼道と同じ用になる。
だって仕方が無いの。
巫女になれるのは女だけだし、相手は多いんだもん。男のほうが有利だから、女を弾丸に詰めて、男がぶっ放すの!
なにそれ! 男ばっかり良いとこ取りじゃん。
巫女は銃にもなっちゃえ!
脳をチップ化して銃になるんだ!
銃弾は自分の体だから、脳が無いと撃てないとかさ!
なんじゃそりゃああああああああああああああ!
意味わかんねぇぇぇぇぇぇ!
タイガーマスクのお兄ちゃんはいびきうるさいし!
「もしかしてこれって昨日の夜に書いたのか」
弾丸撃ち尽くしたら、銃の巫女死んでいいよ――もういいよ。
「おーい、諦めるなー」
歴史はそろそろ終えて、はじめの文章を書こうかなー、どうしようかなー、寝ようかなー、おなか減ったなー、明日はアイスクリームとご飯の黄金コンビ食おうっと。
「黄金コンビだと! 翼君と岬君に謝れ!」
んー、最初の文章。
目の前で血飛沫が起こった。
仲間の悲鳴が聞こえる。
赤と白で色づけ去れた映像が私の眼球に飛び込んでくる。
化石の記憶でよく見た映画に似ていた。(化石の記憶(造語)物の記憶を見ることが出来る時代なんだね。だから、今の映画よりもリアルな映像を見ることが出来る)
剣の切っ先がワタシの目の、五センチ前を掠めた。
ワタシは尻餅をつきながら退き、剣を抜いた。
(剣でいいの? まあいいやとりあえず進めよう)
目の前には全身の刺青(呪いの影響。取り合えず刺青ね)が蠢動して、そのたびに苦しんでいる父さんがいた。何でこんなことになったんだろう。何で数百年前の呪いが父さんを蝕んだのだろう。
「大丈夫か。アリエル」(主人公の名前=アリエル、女)声の主は兄さんだった。
「うん。大丈夫」
兄さんと会うのは久しぶりだった。ワタシは半年間、復活させた電脳空間で巫女としての修行を受けた。懐かしさに涙がこぼれそうだ。
処女だから(キャッ!)資格があったので立候補した。
相手は父さんだから。
父さんだから。
父さんだから。
……。
でも、この世界には呪いを受けたのは父さんだけじゃなくなったとワタシは聞いた。ワタシの成績しだいで巫女たちが弾丸になるかどうかも決まると聞いた。呪いを拡大させないため、襲撃された人たちは一切手を出さなかったらしい。死者、千人以上。父さんの殺しだけで、それほど死んだ。
ワタシの肩の荷は重い。
ワタシは剣を振りかぶった。
交差。火花が散り、体重差でワタシは負けた。
「アリエル!」
兄さんが歯を食いしばり、剣で切る瞬間に目を瞑った。
ダメッ! 兄さんの父さんに対する愛情が剣を鈍らせた。
兄さんは腹から背中にかけて串刺しにされた。父さんによって。
「兄さん!」
父さんは兄さんの首にかじりついた。
ワタシは剣を持ち、腰だめに構えて突進した。
父さんの目が、優しい目がワタシに飛び込んできた。
ワタシは躊躇した。
足が止まった。
そのとき、父さんの首が飛んだ。
兄さんが刺されながらも斬ったのだ。
「アリエルッ!」父さんの死体から兄さんの死体へ呪いが流れ込む、黒い蛇のような呪いだ。「早くっ!」兄さんの髪の毛が真っ白になる。関節が逆に曲がりそうだ。「殺せっ!」兄さんの腹から血が流れている。「早くしないとみんなに呪いが移る! 俺はもう死ぬ!」
その通りだ。今戦っているのはワタシと兄さんだけではない、この戦場に夫を泣きながら送った妻も、後ろで戦況を見守っている兵士も、戦争をしろと叫んだ老人も、父さんを殺すことに加担した人すべてに呪いが行くのだ。
「兄さん……」
「俺なら殺せるだろ? 父さんと違って」
「ワタシは兄さんのことが……」
「ヒャヤキュシ……ロォ……」
「愛しているよ」
ワタシの剣は兄さんの心臓に刺さった。
金属を伝って心音が途切れるのが聞こえた。
(処女の理由は兄さんに恋愛対照を抱いていたからとかでOK)
「なーんか、いろいろ良い気分がしねーな」
センゴクは珍しく母と離婚した父のことを考えた。