空港『グラウンド』
異世界の秘密に迫る5話です。
これはS.××××中尉とルート氏によって回収された資料である。本資料が回収されたのはグラウンドにおいて発見された『××国立物理研究センター』という施設である。『××国立物理研究センター』はその名前や内部調査から研究施設であったと推測されている。資料はレポート用紙、新聞、雑誌の切り抜き、ハードディスクなどである。
※全ての資料は原文ママです。
2008年10月5日付の新聞[切り抜き]
昨日の午後3時30分北西部にあるS市の大部分が消失しました。無事だった住民へインタービューを行ったところ『テレビの画面が切り替わるように一瞬にして町が消えた』ということです。テレポート災害にあった都市は我が国でこれで12ヶ所目です。現在世界中で推定6000のコミニュティーがテレポート災害の被害を受けているとされています。政府は14日午後5時2分全土に非常事態宣言を発令、市民に自分達が住んでいる居住地から離れないように呼びかけました。
プリント用紙。
研究センターの皆様へ通告
皆様も周知のように現在世界各地でテレポートをはじめとした複合的な災害が発生しているため当施設を一時的に閉鎖することが決定しました。施設管理者、原発整備員意外の全てのスタッフは11月10日までにセンターから立ち退いてください。活動が再開される時期については未定です。
[日記を破ったものと思われる]
最近研究センターで人が行方不明になる事件が多発しているらしい。行方不明になった人達は科学者、エンジニア、事務員と様々で現在までに30人程が消えているようだ。加えて機械の故障も相次いでいる。気をつけて仕事をしなければ。
ある手記
私達は壁を壊そうとしていた。しかし私達が壊していたのは壁ではなく床だった。今異常な災害に世界を覆い尽くし大勢の人々が死ぬか消えるかしている。私の仲間もたくさん犠牲になった、そして恐らく私の家族も。だが責任は私、私達にある。単純にいうとシステムが環境に与える影響を過小評価していたのだ。だがさすがに我々がどんなに注意深くても現在のような状況にまで事態が深刻化するとは予測出来なかっただろう。しかしシステムの有害性くらいは分かっていた。当時我々は理論と実験に夢中でその危険性については考えなかった。私達は科学が人類全体に恩恵を与えると信じきっていた。だがもうどうしようもない。最後に聞いたラジオ放送は各国の都市がテレポートや自然災害、パンデミックによって壊滅していると言っていた。少なくとも私はこれの解決方法を知らない。
あり得ないことだがもし人類文明が存続したのなら私は言うまでもなくこの責任を取らなくてはならない。
今は状況の観察をしようと思う。データを集めるんだ。
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お読みいただきありがとうございます。