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義兄に関わってしまった件


カンッカンッ



部屋から外を見ると、視界に映るのは2人の人間の姿。

1人は大人。もう1人は私と同い年の子供だ。木製の剣のはずなのに剣が当たるたび、その音が部屋の中まで聞こえてくる。



ロベルトがこの家にやって来てはや1週間。特に何かが変わったということはなく、私は以前と変わらない生活を送っている。

ただ、ロベルトが来たことにより、さらに私の存在は薄くなった。

そして、ロベルトはというと、特に私と関わりを持とうともせず、毎日、次期国王になるための教育を受けている。勉強は自室でしているため、見ることはできないが、剣の修行、魔法の訓練は遠くからだが見ることができる。それは私にとって良いことで、とても勉強になる。



(さすがヒロインと結ばれる男。まだ子供なのに優秀というのが見てわかるなあ)



小説で見て知っているロベルトは冷結だが、国のことを第一に考えて行動し、なんでもそつなくこなす。そんな男だ。

小説にはロベルトの幼少期の姿はほとんど書かれていなかったが小さい頃はこんな風に過ごしていたのかと見て実感する。



ロベルトの冷結な性格は小さい頃からの教育のせいなのだろうか。

そういえばヒロインに恋したのはそんな自分に優しく接し、関わっていくうちに氷のように冷えきった心をだんだん溶かしていき次第にお互い惹かれあい結ばれる。そんなありきたりな感じだった。



(まあ、ロベルトがヒロインと結ばれようが、私が関わらなければ死亡フラグは立たない!)



よしっと気合いを入れ直し、自分の世界に入ってしまっていた私は再びロベルトの方へと目を向けるが、いつの間にかロベルトはいなくなっていた。



(ん?せっかく良い勉強になるのにどこに行ったんだろ?)



剣を教えている先生はまだいるし、修行が終わったわけではなさそう。植物や建物の陰に隠れて見えなくなってしまっているならせっかく勉強になるのに見逃すのはもったいない。



私は急いで部屋から出て、いつものように誰にも見つからないようにロベルトの元に向かった。そう、まるで忍者の如く素早く、そして誰にも見つからないように。



急いで向かうと、修行していた場所から少し離れたところの柱の陰に座り込むロベルトの姿が見えた。見つからないようすぐさま物陰に隠れてロベルトの様子を伺った。



(休憩中だったのかな?)



よく見ると、なぜだかロベルトの顔は強張っており、剣を握っていた方の右手をじっと見ていた。ロベルトはそっと右手首に触れるとビクッと体が跳ね、余計に顔が強張った。



(ああ、なるほど、そういうことね)



遠くからだかよくはわからないが、右手首は少し腫れているように見えた。

きっと修行中に誤って手首を捻ってしまったんだろう。様子からして結構したそうにしているが、ここで私が出て行くわけにはいかない。

いかないんだけど…。



『ソフィア・クラスト!本当にそれで良いの?!目の前で子供が怪我をして痛がっているんだよ?!』



『良いのよほっといて。ここで関わったら自分で死亡フラグを立てるようなものよ?』



心の中の私、そして新たに出てきたもう1人の私が葛藤する。

ぐるぐると頭の中で考えた結果、私はスッと物陰から出てロベルトの元へ歩み寄った。

さようなら、新たに出て来たもう1人の私。一瞬しか出番がなくてごめんねと謝りながらもう1人の私を消した。



バッと座り込むロベルトの前に立つと、ロベルトは顔を上げ、驚いたようにこちらを見た。



(いくら関わりたくないからといって怪我をしている子供を目の前にして放っておくなんてできない!今の見た目はこんなんでも、中身は大人なんだから!)



「何か用か?」



私はロベルトの言葉を無視し、しゃがんでそっと彼の右腕を掴んだ。その瞬間、ロベルトは痛そうに顔を強張らせたが、私は何も言わず、スッとハンカチを取り出し、無言のまま彼の手首に巻きつける。

近くで見ると思ったより腫れており、やはり捻挫のようだった。前世で学校の保健体育の授業で習った応急措置ぐらいしかできないけれど、何もしないよりかはマシだろう。

私が手当てしている間、「おいっ」だの、「何するんだ!」などと言っていたがそんなのは完全無視!



手当が終わり、私が手から離すと、ロベルトは驚きながら手当した右手首を見た。



「…もっと人に甘えても良いのでは?剣の修行も大切ですが、まずは自分のことを大切にしてください」



声をかけようかためらったが、同じようなことが起きてしまってはまた関わることになってしまうかもしれない。

ちょうどその時、ロベルトを探しに来た剣の先生の声が聞こえたため、急いで立ち上がり、私はその場から離れた。私は離れる際、一度も振り返らなかったが、ずっとこちらに視線を感じたのは気のせいであろう。



部屋に戻った私は剣の修行をしていた場所に目を向けるが、2人の姿はなかった。

きっと、捻挫のことを言って中止したのどろう。それにしても、ロベルトも怪我をしたならその時点で言えば良いものを柱の陰に隠れて強がっちゃって。いくら時期国王だからといって、そんなに人に甘えられないほど強くなくちゃいけないものではないでしょ。



(まだまだ子供なんだからもっと人に甘えれば良いのに)



小説の中のロベルトは確かに人に弱いところを見せず、人に頼ったり、甘えたりしている姿はほとんど書かれていなかった。頼ったり甘えられるようになったのはヒロインと出会った後だ。自分の弱いところを見せるのもヒロインにだけだった。

まさか小さな頃からこういった性格だったとは。幼いながらも人に頼らず、自分でどうにかしようとするのはすごいけど、少しだけ呆れてしまう。



少し疲れを感じ、私はベッドで休むことにした。



(さっきロベルトに言った言葉は、なんか小さい子供に言い聞かせているみたいだったなー)



なんて考えながら眠りについた。






ーー ーー ーー ーー ーー






「…んあ?」



目を覚ますと部屋は暗くなっており、ベッドから起き上がり窓の外に目を向けると日は完全に落ち、空にはキラキラと星が輝いていた。

時計を見ると、夕飯の時刻はとっくに過ぎていてが、部屋には食事らしきものはなにも置かれていなかった。きっと、声をかけても返事がなく、休んでいると思って食事を置いていかずそのまま戻って行ったのだろう。



(起こしてくれれば良いのに!)



プリプリッtと怒るが、怒っても仕方がない。というか怒ったら余計にお腹が空く。

その瞬間私のお腹からぐ〜っと大きな音がし、嫌でも空腹ということをわからせてくる。我慢できなくなった私は、部屋を出て急足で厨房へ向かった。厨房は暗くて誰もおらず、シーンとしており、ラッキーと思いながら音を立てないように気をつけながら食べ物を探した。

運良く、すぐにパンを見つけることができ、数個口にして食事を終わらせた。



(まだまだ食べれるけど、あまり食べすぎるとバレるからなー)



急いで厨房を後にし、自分の部屋へと戻ろうとしたが部屋に入ることができず、私は壁に身を隠した。



(な、なんでここに…)



なぜ自分の部屋に入れないかというと、部屋のドアの前には彼、ロベルトが立っていたからだ。

ロベルトはじっとドアを見つめ、何かを迷っているようでノックをしようとするが止めを何度か繰り返した。



(なんでこんな所にいるの?!あんたの部屋はここからずーーーっと離れた場所でしょ!)



ノックするなノックするなあ!厨房でつまみ食いをしていたことがバレてしまうかもしれない!と焦りながらロベルトを見ていてが、彼は小さくため息をし、ノックすることなく部屋の前から離れていった。



ロベルトにバレないよう、急いで部屋に戻り、私は、「はあーー」と大きなため息をついた。



(いったいなんの用だったんだろう…?)



一瞬そう思ったが、まあいいやと深く考えるのを止め、軽くお風呂に入り私は眠りについた。






ーー ーー ーー ーー ーー






ロベルトがクラスト家に来て10年。

この10年、立ちそうな死亡フラグは片っ端からへし折ってきた私、ソフィア・クラストは15歳になった。



「フー…」



緊張を和らげるため息を吐いて呼吸を整える。



(ついにこの日が来たんだ)



ロベルトと関わったのは結局あの日だけだった。あの日以降、話すことも関わることもなかった。ロベルトは両親とうまくやっていたようだが私はというと相変わらずだった。普通、10歳ぐらいでお茶会に呼ばれて出席したりするのだが、マナーがなっていないと思われている私はお茶会に出席なんてしなかった。

美味しい料理が食べられないのはガッカリだったけど、貴族たちに混ざって優雅にお喋りを楽しむなんて息が詰まりそうで私には向いてない。どちらかというと、色気より食い気派の人間なんで。



正直、今日この日まで気を抜ける時はあまりなかった。いつどこで死亡フラグが立ってしまうのかわからなかったから。

でもそれも今日で終わり。



(さあ、ここを乗り越えるのよ、ソフィア・クラスト!第3の関門を!)



ついに待っていたこの日。いよいよ明日は魔導学園へ入学する日。通常、魔法を使える者しか入学できないが国王の娘として勉強のためと入学するということは私が生まれた時から決まっていた。まさか国王の娘が魔法を使うことができないとは思ってなかったみたいだし、学園が国王の娘を入学拒否なんてできるわけもなく、時間が過ぎ、魔法が使えずとも特別入学することになった。

この経緯も小説を読んだ私は知っていたことだったし、特に驚くことはないんだけど。



(そういえば、ソフィアはこの学園でいじめを受けるのよね。王族のくせに魔法が使えないなんてって)



本来、国王の娘、つまり姫をいじめなんて考えられないが、もじもじして何も言えないソフィアを見て調子に乗っていじめまくるんだよね。まあ、独学で魔法を習得したし、学園に入学しない私には関係ないことだけど。



そう、私は学園に入学しない。入学すればそこでヒロインと出くわしてしまう。つまり、死亡フラグが立ちまくり、処刑の未来へ一気にゴーってわけ。処刑を回避したいのに自分から足を踏み込んでどうするんだって話し!



(さて、そろそろ始めるわ。第3の関門、この家からの脱出を!)



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