プロローグ第三弾・ラビリンスな世界のアリス
数多くの建物が建ち並び、互いに渡り廊下で連結、
その上、改築に次ぐ改築のため複雑怪奇な様相となってしまっているカールレン皇宮。
はっきり言ってしまえば・・迷宮、迷路、ラビリンスなのである!
そんなラビリンスな一角に・・・アリスフィーナ姫、つまりアリスの自室があった。
テル君をはじめとした官僚たちが探している自室である。
そう!・・・なんびとたりとも この部屋に達する者はいないのだ。
アリスの秘密基地♡
この皇宮の中で・・もっとも奥深い大深度ラビリンスのそのまた奥地に自室が存在していたのである。
位置的には皇宮の地下10階に位置するが・・・
・・・時空のゆがみのせいで、部屋の窓から見る風景は地上5階に相当する。
まさに! 摩訶不思議ミステリーワンダーランド!!
というわけで! 地下10階なのに窓から新鮮な空気が吹きこみ
ベットで寝転んでいるアリスの身体を涼しい風で包み込んでいた。
「理解するなぁ! 感じるのだぁ!!」
いつも通りのアリスの寝言である!!
ただし・・一人で寝ているので この寝言を聞いたものはいない!!
ちなみに・・・
アリスの自室というか、寝室は狭い。
どれだけ狭いかというと・・・ベットだけで部屋の大半が埋まってしまっている。
某異世界風にいうと部屋の広さは四畳半である。
その四畳半に天蓋つきの巨大ベットが持ち込まれていたのであった。
部屋は・・庶民なのにベットだけは天蓋付きの豪華絢爛。
ベットだけは王族である!
「うわぁぁあぁぁぁ」
背伸びをして・・・ベットから起き上がるアリス。
王族だが・・・アリスの世話をする人はいない。
いつも一人である。
グ~グ~グ~
胃のあたりから何かを訴えてきている。
しかたがない!!
とりあえず ・・・・・朝食にする。
だが・・・アリスに朝食を持ってくるような世話係の人なんていない。
アリス自身が朝食を用意しなければならないのだ。
いつもの事なのでアリスの身支度は早い。
数秒で着替えると・・・さっそく自室から飛び出す。
長い黒髪ゆえに寝ぐせはついているが・・・そこはすばやく髪留めでごまかす。
そしてエプロン姿の白いドレス・・・いわゆるメイド姿となって 皇宮ラビリンスの通路を走り抜ける。
バタバタバタバタバタバタ~
王族のアリスは・・・ここでメイドに変装する。
自称・・アリス付きのメイドのメルちゃんである。
世話人のいないアリスは・・自らメイドとなって 自分自身であるアリスの世話を自らおこなうのであったww
アリスではなく メイドのメイちゃんとなったアリスの向かう先は・・・この皇宮におけるお食事処である。
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
このカールレン皇宮内には・・・下級官僚専用として お手軽価格でお食事ができる食堂があった。
その名も・・・峠の茶屋!!
渋い名前である!! 店長が元登山家であるのが由来かもしれない。
この峠の茶屋は・・ビュッフェ形式となっており・・・好きなものを食せるようになっている。
清潔感もあり・・食事も美味しい・・・下級専用とはいえ決して手は抜いていないのだ!
そう!!・・・ここは皇帝の住まう皇宮内!! たとえ下級であっても 下手なものは提供しない。
その上・・・この""峠の茶屋""の食堂は広く解放感にあふれ・・天井はガラス張り、暖かい日光が明るく全体を照らす。
もちろん 室内温度も調整されており、おもわず寝てしまうほどの心地よさというか・・・寝てしまってる人がちらほら・・
実際のところ・・・貴族専用の食堂より はるかに雰囲気がよく・・
ときおり上級貴族が下級官僚に扮して・・・この食堂に食べにきてたりする。
そしてこの朝の時間・・・お食事処""峠の茶屋""に人が集まり 賑やかな状態になっていた。
泊まり込みで働いていた下級官僚たちが 朝食を食べようと集まってきているのだ。
そんな・・人で混雑している峠の茶屋の店先正面ではなく裏へと回っていくメイド姿のアリス。
アリスの目的は別にあるのだ。
峠の茶屋の裏側通路は狭く・・・いろんな不用品が積み重なっていた。
テーブルや椅子、何かの箱類、不用品・・・・ビックリ箱・・なんちゃら危機一髪w
・・・・一応、この通路は公共通路のはずなのだが、完全に峠の茶屋の物置替わりに使われていたのであった。
不法投棄的カオスな状態の中をかき分け、かき分け・・・・
・・アリスは目標物を発見した。
それは赤い箱である!
異世界風にいうと個人宅にあるような郵便ポスト
そして・・そのポストの中には・・・峠の茶屋で出された料理の余りもの・・いわゆる残飯が入っていた。
ただし残飯といっても・・きれいに箱詰めされコンビニ弁当風になっている。
この弁当は・・・峠の茶屋の店主が無料で用意してくれたものであった。
姫様の飼っているペット向けの餌がほしいので 余った残飯があったらわけてほしいと
メイドに化けたアリス・・・自称メイちゃんが ここの店主に頼んだら・・・快く引き受けてくれたのだ。
しかも・・・王族の姫様の飼っているペット向けというわけで・・・普通の残飯をそのまま出すわけにはいかないと思ったのか!?
なんと!! 、奇麗に箱詰めされ 人間が食しても良いぐらいの立派な弁当になってしまった。
料理の仕込みで忙しい中で 店主は手間暇かけて作ってくれたのだ!
実にありがたい!!
でも・・・当店はアリスフィーナ姫様のペットの餌を提供しておりますという張り紙が店内で貼られているので、
宣伝に利用されているのは間違いない!!
店主の頭の中ではアリスフィーナ姫はペットを飼っていることになっているが・・・
・・・実際のところ、ペットなど飼っていない!
そういうわけである!
そう! ペット向けに提供された弁当をペットではなく・・・アリスが食するのである!!
そのおかげで 手元にお金がないアリスは 餓死せず済むのであった。
「御好意・・・ありがとう!」
それにしても・・・ペット向けと言えども、実に美味しい。
峠の茶屋の店主は・・・ペット向けであっても手を抜かず 美味しい料理をつくりだす料理人であった。
メイド姿に化けたアリスは 弁当を持って自室に戻り・・・天蓋つきベットの上で美味しく弁当をいただくのである。
「いいね! お茶も用意してくれたのね。
これは珍しい! クジラの鰹節、あれは巻貝の団子焼き、おっと、猫舌のサンマ焼きに、トマトの竜田揚げ」
ちなみに・・・ゲテモノではありません・・・この帝国における一般的家庭料理です。
美味しいのですよ! 本当に美味しいのです!
そんなわけで・・・ちょっと食べすぎてしまうアリスだった。
・・・・美味しいのだが・・・これはあくまでもペット向けの餌。
ペットむけの餌で腹を満たす・・第4王女アリスフィーナ姫はちょっとだけ不憫であった。
でも、貧しい庶民よりは いいものを食べてるのは間違いないです。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)