学園と聖女と王女様 その2
一般的な魔力とは別な存在・・いわゆる神聖なる力・神力を操り、人々を治療し癒す・・・
または、瘴気を祓い魔を跳ねのけ、人々の安寧を願う。
それが・・・聖女と呼ばれる女性たちであった。
だが・・・その担い手となる聖女の数は大変少なく・・極少数。
聖女に必要な能力・・神聖なる力・神力を保有している人物が極めて稀だったからである。
アリスに助けを求めた女生徒・ソフィアは・・その稀なる存在であり、聖女候補としてこの学園に通っていた。
・・・でもでも、あのいけすかないティオニアス公爵の娘ごと ソフィアをラビリンスの奥深くへと始末しちゃったのだけどね~
まぁ・・・いいか! どうせ6時間したら 迷いの森にでも帰ってくるのだから!!
そんなこんなで・・・
・・・・面白いトラブルに巻き込まれたものの・・アリスは門番の人に聞いた建物にたどり着いた。
学園の本校は・・・豪華絢爛、ロルルン建築と呼ばれる形容し難い形をしているのだが・・・・
門番に聞いた受付所は・・・どう見てもテントだった。
・・・といってもかなり巨大なテントで、一般人の想像するテントよりはるかに大きい。
こんな所で・・貴族学生と庶民事務員の身分格差!?なのかとおもったが
どうやらクーデターの際、学園の別館が焼き討ちされたのが原因らしい。
こんなとこにまで戦災が飛び火してたとは・・・!!
それはともかく・・・その巨大テントにお邪魔するアリス。
内部は天井も高く広々としており・・・テントとは思えない。
どちらかというと どこかの受付ロビー!
へたな省庁のロビーより・・設備が整っている。
快適な空調によって、適切な室温が保たれており・・・陽射しがうまく入り込んでロビー全体が明るい。
ここがテントなどとは思えないほど・・雰囲気が良い所である!
とりあえず・・・アリスは近くの受付に座っている事務員に話しかけた。
「入学手続きに来たのですが・・・」
するとその事務員は首を傾げた。
「今年の入学手続き期間は すでに過ぎており・・・入学は来年となります」
「いや、父親に言われ来たのです。 手続きをすましておくと・・・」
アリスのいう父親とは・・もちろん皇帝であるが・・・ここでは一般家庭的に発言したりする。
「失礼ですが・・・ご身分は!?」
つ・・ついに、この事務員は・・こともあろうか!! ド直球な質問を浴びせかけてきたのだ。
仕方がない。身分を明かすことにする。
「うちは・・・アリスフィーナ。身分は第4王女」
事務員・・・思わず姿勢が固まる。
聞き間違い!? いや違う! 間違いなく王女と言った!
動揺する事務員に対して・・アリスの目はどうしようかと泳ぐ・・
そして しばし・・・・沈黙!
事務員は葛藤していた!
王女!? 王女が一人で入学手続き!? それはないでしょ! 普通はお付きの人が処理するはず。
それにそれに! 目の前の少女の姿は・・・どう見ても王族が身に着ける服装じゃない。
どちらかというと・・・平民がなんとかやりくりして・・無理して買いました的なドレスを着ている。
一応・・・補足しておくと、アリスは王女としてふさわしい衣装として、このドレスを着ているつもりだが・・
事務員の目からすると・・・平民が無理して買った安物のドレス。
ちなみに・・・公爵令嬢ゼノルビアからの見立てだと 流行おくれのドレスだということになる。
・・・・事務員は思い出した!
第4王女・・・といえば、ラビリンスの奥深くで引きこもり・・・なかなか地上に出で来ない珍獣・・いや王女様だ!
第4王女を目撃すると・・幸せになるとか・・・その日は大吉とか・・ほとんど伝説と化しているのだ。
も・・・もしや本物!?
「えっと・・王女様 こ・・これは失礼しました!」
完全にしどろもどろ・・・動揺しまくりつつ・・なんとか言葉にする事務員。
「そんなに緊張しなくてもいいですよ!」
「す・すみません。少し席をはずします。しばらくお待ちください」
その事務員は・・あわてて、奥へと走っていった。
第4王女のお相手として・・ヒラの事務員では手に余るからであった。
そして・・・テントの奥で数人の事務員が集まり・・・
・・それからこの事務所テントの責任者ぽい人がやってきて なにやら話し合いだした。
アリスは・・近くの椅子に座り、事務員たちの様子を眺める。
・・・話が長い。
どうしたのだろう!? 問題でもあったのかな!?
アリスは時空魔法の一つ・・聞き耳を発動!
テント奥で話し合いをする事務員たちの声を聞いた。
視界範囲という制約はあるが・・・遠くで発せられる音波を時空を曲げることによって、
アリスの耳に届けるという簡単な魔法である!?
『あ~ん 本当に王女なのか!? 』
『第4王女といえばアリスフィーナ様ですね』
『ほとんど姿を見せないというのに・・なぜ?!ここに!?』
『それより・・アリスフィーナ様の入学関連の連絡は届いてないのですよね』
『王室から そのような話は届いていません』
『一応確認のため・・何人かの職員を走らせたが・・・おそらく すぐに帰ってこないだろうなぁ』
『もしも・・王女の名を詐称したとなると・・・重罪』
『たしかに重罪ですね』
そして・・・事務員たちは一斉にアリスへと視線を移した。
アリス・・・おもわず喉を鳴らす。
不味い! 偽物だとバレる!!
・・・・って違う! うちは王女だった!
5年前から王女としての待遇を受けていないから・・・すっかり忘れていた!
いや まてよ!
そうだ! 思い出してきた。
うちは・・・貴族や上級官僚たちから無視される存在だったのだ。
それどころか・・・抹殺されかねない立場ということも・・・
ここで悠長に待ち続けて・・・王室関係者が来たとしても・・うちをアリスフィーナと認めず・・・そのまま偽物として処刑!?
アリス・・顔が青くなっていく・・・
たまたま お父様に会って・・・学園の入学を勧められたが そうだった!! うちの立場は良くなっていない!
逃げる! そうよ・・・ラビリンスで引きこもって身の安全の確保よ!
アリスは時空転移魔法を発動し・・・多くの事務員たちのいる前から姿を消したのであった。
『しまった! 逃げられた』
『逃げたってことはやっぱし偽物だったのね!』
『あの少女の顔を覚えているよね 似顔絵の作成よ!』
テント事務所の事務員たちが・・・あの少女は偽物だと確信した時・・
・・・王室からの知らせが届いたのである。
しかも・・・王室からの正式な勅使・・・数人のお供をひきつれ・・威厳たっぷりな感じでおとずれたのである。
その勅使の煌びやかな衣装・・・さすが勅使というべきなのだが
学園の事務テントにくるだけなのに・・あまりにも場違いという感じでもある。
そんな とんでも勅使の到来に・・思わずひれ伏し、震える事務員たち。
この勅使が この事務テントに訪れた目的は・・・アリスフィーナ姫を編入させるための手続書の提出である。
たかだか・・・王女一人を編入させるために・・勅使の派遣とは・・・大げさであるというべきか・・・さすが王族というべきか・・
アリスに この学園の入学を勧めておきながら・・・父親であり皇帝であるルティスは すっかり入学手続きの指示を忘れていた。
そして・・・先ほど学園からの問い合わせの知らせを聞いて・・・やっと皇帝は思い出したということである。
もちろん・・・皇帝はアリスを即座に入学させるために使者の派遣を指示したのが・・・この勅使であった。
だが・・・この勅使が学園に来る前に アリスは・・さっさと立ち去った・・いや逃げ去っていたのである。
そうである! ・・・もうここにアリスはいない。
そして・・・青ざめる事務員たち!!
そう! あの少女・・・アリスフィーナ姫を偽物だと疑ってしまったために 出ていってしまったのではないか!?
テント奥でひそひそ話をしていたはずだと思ったが・・・聞かれてしまったのかもしれない。
「ど・・・どうしよう 不興を買ってしまったかも」
「・・・うわ・うわわわ」
「どっどどどと・・・どうしよう」
動揺しまくる事務員たちを見て・・・その勅使は首をかしげた。
アリスフィーナ姫は待ちきれずに 席を外しただけではないのか!?
そのうち・・戻ってくるだろうになにを騒いでるのか!?
その勅使は・・・伝説というか都市伝説化しているアリスフィーナ姫と会いたかったが・・・忙しい身でもある。
勅使は・・・アリスフィーナ姫の入学手続きを確認した後・・・事務テントから去っていった。
勅使の後ろ姿を見た事務員たちは・・・今後の成り行きに不安を感じるのである。
「アリスフィーナ様・・・帰ってきて・・・」
次の日・・・カールレン学園の門前のアーチには ""大歓迎! アリスフィーナ様のお帰りをおまちしております""の看板が
大体的にぶら下がることになる。
後日・・・メイド服を着たアリスは学園の前を通りかかった時・・・このとんでも看板を見て‥驚くのであった。
「え!? お帰りって何!? この学園が自宅だったことなんてなかったはず・・・」
・・・・このような看板が掲げられていたが・・・アリスは結局・・・この学園に通うのをやめたのである。
だって、うちの存在自体を認めたくない貴族たちが多そうだからであった。
ちなみにアリスの知らない裏事情として・・・・・皇太子のヴェーラは要注意である。
たいへんアリスを嫌っていた。抹殺したいほどに・・・
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
おまけ・・・
アリスによって ラビリンスに時空転移させられたあげくに追試ができずに落第してしまったティオニアス公爵令嬢ゼノルビアとその取り巻きは、
その後・・無事に!?この学園を退学したようである。
ティオニアス公爵家の令嬢が・・勉学もできず落第したという事実は・・あまりにも風聞が悪すぎる。
ということで・・・体の調子が悪いので養生のため故郷の公爵領に帰郷するという名目をつけて退学したのであった。
その他の取り巻きも似たり寄ったりの理由で退学している。
こうして・・・学園にはびこる巨悪!?は 無事に撃退されたのだが・・
肝心の聖女候補であるソフィアは 相変わらず、あちらこちらの男に色目を使っていたりしていた。
平民出であるソフィアにとって・・・学園の男性、とくに貴族の男性はあまりにも輝いていた。
田舎では見られない垢抜けた男性たち・・・精錬され、凛々しい!
「いや! もうだめ! 目移りしてしまう!」
今まで・・ほとんど男性と接触がなかったソフィアにとってまさに目の毒。
聖女候補になる前に・・・男性慣れをさせるべきだったかもしれないが もう遅い!
それなりに可愛いソフィアは その容貌を武器に男性たちにアプローチ!!
あたかも・・・乙女ゲームの定番のように・・・・もてまくりチヤホヤされた。
そして、当然のように他の女生徒の反感を買いまくった。
・・・・だが!! ソフィアには決定的な欠点があった。
流し目、色目をつかって男性たちに対してアプローチしながら
実は・・ソフィアは男性に弱かった。
まともに会話ができない。
色目を使っておきながら・・・いざ! 会話になると「あわわ~にゃ あわわわわ」
もはや言語以前、会話すら成り立たないのである。
彼女は・・・人見知りならぬ・・・男見知りであったのだが・・・
・・・そんなソフィアな" あわわ "に保護欲をかきたてられたのか・・・
男性たちはソフィアを守ろうと接近し・・・お近づきになろうとした。
ソフィアにとっては イケイケな男性たちを周りにはべらせるのはいい気分なのだが・・
会話になると・・ダメダメとなる。
異性相手のコミュ二ケーション能力がマイナスとなる残念少女であった。
だが!
男性たちをはべらせている聖女候補の姿は学園として看破できなかった。
見苦しいというよりは・・・聖女という権威をおとしめる行為である。
たしかにソフィアは学園において優秀な成績を収め・・・聖女としての能力も認められているが、
心構えはまだまだ未熟であった。
特に異性である男性に対して あまりにも見苦しすぎたのである。
このままでは・・・ソフィアは聖女としての能力自体、低下してしまう可能性があった。
聖女として重要な力は・・・慈愛の精神。
慈愛の精神こそ・・・聖女の能力の源泉、神聖なる力なのである。
この神聖なる力によって・・・結界を張り 魔獣と呼ばれる凶悪な生物から一定の地域を守る。
なんの力も持たない一般庶民にとって聖女は 地域を守る要となる。
また・・・それだけではなく かなりの治癒能力もあるという・・・
だが ソフィアは・・・あまりにも男性たちにチヤホヤされ 慈愛よりも 女としての自覚を優先してしまうかもしれない。
そうなれば・・・聖女としての力を失ってしまう。
数少ない貴重な聖女候補であるソフィアが 聖女落第にならないために とある対策を取ることにした。
それは・・・・・あの場所で過酷な修行をしてもらう事であった。
そう! あの場所! あそこである!
ラビリンスの地下20階の説教部屋!
ユセル大公やナイフ伯爵が・・・悲鳴を上げながら頑張って拷問をうけている地獄世界!
ついでに・・・赤いビキニをしているペンギン・・ペンターノ審問官がムチをフリフリして調教していたりする。
そんな所へと・・・ソフィアを送り込むことにしたのであった。
もちろん強制的に・・・!!
聖女として自覚も覚悟もないソフィアを あの地獄に送り込み・・ペンターノ審問官からの訓練を受ければ・・・
・・・まちがいなく立派な聖女に成長するでしょう!
ちょっと過酷だが・・・仕方がない!!
この案を考え出したのは・・・この学園で講師の職についており なおかつ聖女の称号をもっているエリスリーナ。
「ちょっと過酷すぎる問題があるのですが・・やってみるしかないでしょう。あの子が聖女になるために・・・」
次の日・・・聖女エリスリーナに誘われ・・ソフィアは大深度ラビリンスに入る。
そして、容赦なく・・落とし穴につきおとされ 説教部屋という名の地獄へと落ちていった・・・・
「あつい! あつい! だめ! うぎぁぁぁぁぁぁ がぁぁぁぁぁぁ」
説教部屋でソフィアの悲鳴がこだまする。
その後・・・彼女がどうなったかは・・・・たぶん、命に別状はないはずである。
一応・・聖女候補なのだから!!
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




