祭りのあと
皇宮の片隅に広がる迷いの森。
ラビリンスの安全機能によって 時空転移される転移場所でもあった。
そして現在・・・とんでもないことになっていた。
クーデター事件の終了とともに・・・安全機能が復活、遭難していた兵士たちが一斉に転移してきているのだ。
しかも・・・それらの兵士たちの大半が 飢えと渇きのため 倒れ伏している・・・その数、推定1万人!
この大量すぎる遭難者救護のため 看護師たちが森の中を走り回っていた。
もちろん・・看護師だけでは手が足りない。
他の部署からの救援や ボランティアの手を借りて・・・救護活動を展開していた。
衰弱しすぎて歩けない兵士は担架で運ばれ皇宮内の病院へ・・・
フラフラになっている兵士たちには 胃にやさしいお粥のようなものを配る。
時には・・・薬の投与も!
全裸姿をしている者には・・・とりあえずガウンコートを手渡した。
ちなみに、この全裸兵士は アリスが第一陣として・・転移させた者たちである!
ともかく死者がいなかったことは不幸中の幸いであった。
ちなみに・・・敵味方関係なく救護をしています。
いくら敵だといっても・・同じ帝国兵士なのだから・・・
そんな喧騒と騒ぎの中、炊き出しの列に 他の兵士とともに並ぶ半裸の男。
そして、看護師からお粥のようなものを手渡され・・美味しくいただく。
「たまには こういうのもいいものだ!!」
その男・・・ルティス皇帝であるのだが、周囲の誰もが 彼を皇帝だと気づいていない。
こんなとこに皇帝が居るわけがないという固定観念のせいかもしれない!!
そのかわりに、彼の上半身の筋肉モリモリには 十分に気付かれており、ちょっとした注目の的になっていた。
「す・・・すごいぞ あれ」
「なんて筋肉だ! 誰なんだ!?」
彼は皇帝である前に・・・筋肉であった。
そんな筋肉皇帝なのだが・・・いきなり立ち上がり・・・大きく手を振ったのである。
そう!息子である皇太子ヴェーラが側近を引きつれ こちらに向かってきたからであった。
「父上!!」
「お~ 来たか! 待っていたぞ!」
この会話から・・・周囲の人たちはやっと気づいたのである。
そう!・・・あの男!! あの半裸の筋肉男・・・もしかして皇帝ではないのか!?
我々と同じお粥を食べていた・・あのお方が・・
「こ・・皇帝様!?」
「えっ!?」
「あっ!」
すると まるでドミノ倒しかのように・・・周囲の人達が一斉に平伏したのである。
「こ・・皇帝様、失礼いたしまして いや! なんとお詫びすればいいものか・・・」
周囲の過剰な反応に対して 皇帝ルティスは 何か気の利いたリアクションでもして和ませようと考えた。
そう! やはり・・皇帝といえば、筋肉!! ポージングであろう。
というわけで・・周囲の人たちに力こぶ、筋肉モリモリを見せつけながら ついでに・・・勝利宣言をするのである。
「悪しきユセル大公は余の筋肉パンチで倒した。余の筋肉によって平和がもたらされた。余の筋肉は最強である。
筋肉による筋肉のための筋肉な帝国!! 帝国は筋肉とともにあり!
・・・あと! 大公に組した一般兵士には寛大な処置をするので安心していいよ」
皇帝ルティス・・・歴史に残る筋肉演説をぶちこんできた。
ちなみに 皇太子は苦い顔をしている。
「お~ おぅ~ お~」
「筋肉ばんざーい! 筋肉に栄光あれ!」
「ばんざーい」
意味不明な言葉も含まれていたが とりあえず人々の歓声が上がる。
その上、大公に組した兵士たちの不安が これで払拭されるであろう。
なんたって皇帝の発言であるのだから・・・
・・・・ただし! 罪に問わないのは一般兵士のみ!!
ある程度の上級仕官、貴族階級の人達は・・後々、厳しく尋問され処罰されます!
「ちょっと父上、 筋肉で勝利宣言はやめてください! 恥ずかしいです!」
半裸な筋肉で勝利宣言をする皇帝に・・・ちょっと引き気味の皇太子ヴェーラ。
「そうか!? うけもいいし・・好評な気もするのだが・・きっと名演説として歴史に残るぞ・・ 」
「えっ! あんな恥ずかしい演説を残さないでください!! まぁそれよりも・・父上! 怪我がなくて安心しましたよ!」
「あの弟程度で・・・怪我などせんぞ! 余の必殺アッパーカットでノックダウンをさせた!」
「さすがです 父上!・・・・えっ!? アッパーカット!? 殴り合いでもしたのですか!?」
「もちろん! 王家の人間なら・・上半身裸となって殴り合いをするものだぞ! そうだ! お前も裸になって殴り合え」
「・・・・いやです! 絶対に嫌です!! 裸はいやです!」
「・・・・おまえは相変わらず王家の人間としての心構えがなっておらん」
「王家と裸は関係ないはず・・・・」
「いやいや 男として・・・上半身裸は常識だぞ!!」
「露出狂にしないでください!」
「筋肉と裸!! 息子にも・・男のロマンを知ってもらいたいものだ」
ルティス皇帝は皇太子の不甲斐なさに涙をするのであった・・・・
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後・・・ユセル大公派閥の貴族たちは国家転覆罪として 次々と逮捕されていった。
かなりの大物貴族も含まれており・・・多少の反乱もあったが 筋肉によって鎮圧されている。
帝国における封建貴族の力をかなり削ることが出来た。
絶対王政にむけて 駒を一歩! 進めたのであった。
これらの出来事によって・・・重火力・攻撃魔法主義に傾いている世論に
筋肉主義という新しい風を吹きつけ 世間の風潮をかえることには・・・ならなかった!! 残念!!
こんな無茶ぶりな筋肉を使える者は・・皇帝ルティスを始めとした王家の者ぐらいであり・・・誰もが真似できるものではなかったからである。
というわけで・・・この筋肉が世間に広まることはなかった!
あちらこちらの街角で男性たちが・・・もしかしたら女性たちも筋肉を見せポージングするという世界を夢見ていた皇帝は、
意気消沈、落胆してしまったのである。
世間的な見方をすると・・・この筋肉は王家が秘匿する秘密兵器的魔法という扱いになっており
重火力・攻撃魔法の一つとして数えられていたりしている。
皇帝の筋肉モリモリポージングは・・・一種の魔法だと見られていたのであった!!
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
一方・・・・・クーデターの首謀者、肝心のユセル大公はどうしたかというと・・・大変なことになっていた。
ラビリンス地下5階の広場で・・・ナイフ伯爵の唇を奪うがごとく・・ユセル大公は激突。
二人は抱き合いながらゴロゴロところがり・・通路を駆け抜け・・・なぜか・・そこにポッカリと開いた穴に落ちていった。
二人をのみ込んだ落とし穴は・・・二人が落ちると同時に穴の蓋は閉じ・・・二人は仲良く地獄へと落ちていったのである。
そしてここは・・・ラビリンス地下20階・・・
・・・アリスでさえきたことがない・・・ラビリンスの最深部。ここは地獄だった。
地下深くから吹き上げる熔岩が川のように流れ
あちらこちらから噴きあがる炎。
洞窟全体が 溶岩の明るさによって赤く燃えたぎり・・・高熱を放つ。
そんな世界に・・・ユセル大公とナイフ伯爵が落ちてきたのであった。
ここは・・このヴェイネス帝国が誇る由緒正しき説教部屋!!!
ヴェイネス帝国がまだ帝国と名乗っていなかった大昔・・
・・・初代国王が この国を亡ぼす危険分子を再教育させるために
あらゆる魔導を駆使して造り上げたのが この説教部屋である。
そして・・・この説教部屋には・・・初代国王によって創造され・・・この部屋を任されている生物がいた。
齢年齢不明!! 長寿種族・・・見た目はペンギン・・・やっぱしペンギン。
子供程度の身長の青みかかった見た目が可愛い・・・なぜか赤いビキニをしているペンギンが・・・
・・・スポットライトに照らされながら出現したのであった。
そして その手に鞭を持ち・・・パッシン! 実にいい音を奏でていた。
『 ようこそ説教部屋へ 私の名はペンターノ審問官! お前たちを再教育するのです 』
ユセル大公とナイフ伯爵は・・・愕然とした。
たしかに・・伝説というか語り部の話では
その昔・・初代国王が とあるペンギンと契約し・・国を危機におとしめる国賊をこらしめるため 説教部屋をつくったという。
「ちょっと待て! 説教部屋だと・・俺は国賊では・・」
パシッン!
ペンターノと名乗るペンギンから放たれた鞭は・・・ユセル大公に巻き付くと・・・即座に電撃が走った。
「ぎゃぁあぅぅぅぅ」
赤く染まる洞窟に大公の悲鳴が鳴り響く。
そして その様子を横で見ていたナイフ伯爵は・・・その鞭さばきに驚愕した。
「なんてペンギンだ! 鞭の挙動が全く見えない! まるで鞭が時空転移してとんできたようだった
あのペンギン ただ者ではない!」
ナイフ伯爵は 得意の演技も忘れ・・・全身を震わしていた。
「わたくしは・・ナイフ伯爵・・・ナイフ家代々に受けつがれた暗殺術を継承した者・・・負けるわけにはいかん」
伯爵は・・・懐にしのばせているナイフを手でつかんだ瞬間・・・
・・・ペンターノと名乗るペンギンが縮地!? いや! 瞬間移動なのか、いきなり伯爵の横に現れるや、
ペンギンの短い足によって 器用にからめとられ・・・あっという間に卍固めにされてしまった。
相手は子供のような小さいペンギンなのに・・・まったく動きがとれない。
「うっ・・・なんてことだ!」
『 君も隣の馬鹿のように より厳しい説教が必要なのですね! 』
卍固めされた伯爵は その痛みによって意識を刈り取られた。
その後・・・ユセル大公とナイフ伯爵はどうなったかというと・・・
ペンターノの指導によって・・・ラビリンス地下20階の溶岩洞窟の中で悲痛な修行をおくることになる。
溶岩川の火渡り!? 溶岩川での水泳訓練!?
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
アリスは隠れ部屋に魔導ディスプレイを設置した。
そして・・・天蓋ベットで寝転がりながら・・ポテチ的なおやつを口に頬張り大好きなアニメを見ている。
「かぐら君~!! かぐら君! すてき~♡」
もちろん見ているアニメは""魔導少年かぐらなカバラ""
アリス! 異世界エンターテインメントにはまり込み・・完全にダメな子になってしまっている。
その上・・部屋の四方、天井まで かぐら君のポスターを張りまくっていたりする。
あと かぐら君フィギュアも部屋中に飾られ・・かぐら君抱き枕まである始末・・・
そう! かぐら君抱き枕を抱えたアリスは ベットの上でゴロゴロと転がりながら悶えるのであった。
「うちはずっと・・・かぐら君といっしょ!」
これらのグッズはどこから手に入れたかというと・・・魔導鍛錬教室の奥にある倉庫に山積みとなって置かれているのであった。
どうやら母親ミリナも・・・このアニメファンだったのか!? 謎である!!
父親であるルティス皇帝には・・・カールレン学園に行くように言われたが・・・
夢の中の三十六課で20年間の勉学をしたというのに 現実世界で学園にいく必要があるのか!?
「めんどくさいのよね~」
それに・・・他の貴族子女との関係もややこしい。関わりたくない!
それ以前に礼儀なんて忘れた!
挨拶なんてどうやったらいいの!?
とりあえず・・・入学だけしといて、登校拒否でいいや! 別に行く必要もないだろ!!
そんな学園にいくより・・・うちの転移魔法を駆使して・・・貿易業とか始めたほうが面白いわよね。
いまのところ・・・金貨2枚をあの兵士たちからせしめている!!
この金貨2枚を資本にして遠隔地域間貿易でも始めようかな~
南の国の香辛料を転移魔法で一瞬のうちに運び込む。
西の国の香木とかもいいかな!?
この国の毛織物を遠国へと運び込む。
転移魔法は貿易稼業にとっては とんでもないぐらいのチートなのだ!
色々、考えていると金貨2枚では足りなさそう!
いやいや! はじめは地道に少額の商品を売り買いしながら やり方や知識を手にいれないとね!!
厳密にいえば金貨2枚どころか・・・特大の宝石やら 剣や鎧も保持しているので まったくお金がないわけではないので
いずれどこかで売るつもりではある!
どちらにしろ・・・うちの夢は広がっていく!!
うちらの戦いはこれからだ!!
その後・・・・アリスは商会をたちあげ、東西貿易で暴利をむさぼり、笑い転げながら
異世界エンターテインメントをこの世界で広めたかは不明である!?
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




