アリス・神官になる
ヴェーラ皇太子軍は・・・カールレン皇宮全域をほぼ制圧した。
だが・・・クーデターの首謀者であるユセル大公は捕縛できていない。
兵士1万人を動員して・・皇宮中をくまなく探したのだが 発見できなかったのである。
しかし・・・とある目撃者の情報から ユセル大公の居場所がある程度、特定された。
その場所とは・・ラビリンス!
とある目撃者とは・・かつて新人官僚だったテル君である。
ひさしぶりの登場である。
その彼が・・・逃げていくユセル大公を目撃したのだという。
そして・・・その跡を追っていくと、皇宮の奥深く・・ラビリンス地区に入っていった。
さて!!
ここで問題となるのは・・・ユセル大公を追って・・・大深度ラビリンス地区に兵員を投入するかである。
父上である皇帝陛下もラビリンスに逃げ込んでいる以上・・・救出しなければならない。
そして・・・ユセル大公の捕縛も必要。
皇太子ヴェーラは 少し悩んだが・・・ここで例の件もついでに実行する決断をした。
第四王女アリスフィーナ姫は・・・このラビリンス内をよくうろうろしているらしいとの噂話・・・別名、幻の姫!
皇帝陛下を保護し、ユセル大公を捉える そのついでに例の件・・アリスフィーナ姫を抹殺するのだ!
皇太子ヴェーラは側にいるナイフ伯爵に "やれ!"の目線を送る。
すると伯爵は相槌をうち 両手を大きく掲げ、ひざを折り、芝居かかったような振舞いを始めた。
「皇太子閣下様! わたくしに・・おまかせあれ!
2500名ほどの兵をお貸しいただければ・・・皇帝様を保護し、その上、大公を見事に捕えて見せましょう!」
ユセル大公と話たときと同じようなことを皇太子にも言ってのけるナイフ伯爵。
もちろん・・・皇帝陛下の保護、大公を捕えるとは言いつつ・・・第四王女アリスフィーナの抹殺も この任務に含まれていた。
「ふむ! ナイフ伯爵よ そなたに任せる! 任務を必ず成功させるのだ!」
「はっ! わたくしにおまかせあれ」
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
今や! 大深度ラビリンスは ルティス皇帝にクーデターの首謀者ユセル大公、参議のネイレル、
その他、クーデター軍や皇太子軍の兵士まで入り込みごった煮状態!!
この地でまさに・・・・・空前絶後の戦いが始まろうと・・・・しなかった。
戦いはなかったのである!!
ラビリンス内部の時空のゆがみにより・・・たとえ百万の人達が 入りこんだとしても・・・
ラビリンスの人口密度はスカスカ状態。
ちなみに・・・
これら兵士たちによってアリスの隠れ部屋が見つかってしまうのではないかという懸念を持つかもしれないが、
おそらく大丈夫であろう。
このラビリンスは 果てしなく広く・・しかも通路がたえず変化し続ける。
アリスの隠れ部屋を発見してしまう可能性は天文学的確率のようなもの・・・
いわば太平洋のど真ん中で 1億年前に絶滅した首長竜を見つけ出すようなものであるww
とにかく・・・このラビリンスはとてつもなく広いのである。
そんなわけで・・・ルティス皇帝やユセル大公などの特定人物の捜査どころか・・・
・・自分たちの居場所さえわからなくなってしまい 迷子になってしまうのであった。
まさに・・・・さまよえるヴェイネス帝国人♪
ナイフ伯爵も・・・このラビリンスの本当の恐ろしさを理解しきれていなかったのである。
大公どころか第四王女さえ発見できず・・・疲れだけが蓄積していく。
「・・・わたくしのしたことが・・・まさか、このラビリンスが これほど複雑な構造だとは・・・思わなかった」
◇◆◇◆◇◆◇
ルッルルルル♪ ルンルンルン♪
道に迷った兵士たちが彷徨うラビリンス内にて・・・・
楽し気に歌をうたいながら 一番奥地にある秘密の隠れ部屋に帰る少女がいた。
もちろんアリスである・・大喜び中である。
そう! アリスの懐ポケットには・・・大量の宝石がつまっており・・・我が世の春を謳歌していたのであった。
「えへへ・・・これで100年は戦える♪」
じつに嬉しそうである。
そして・・・二日後、ラビリンスはいまや阿鼻叫喚の地獄絵図になっていた。
ラビリンスに入り込んだ兵士たち・・・・
クーデター軍の兵士もナイフ伯爵が引き連れてきた皇太子軍の兵士も・・・仲良く飢えと渇きのために苦しんでいたのである。
ここは一度入ったら出てこれないと言われるラビリンス・・・両軍とも水も食料も補給できない。
両軍の兵士たちは・・・まさに悲惨な状態に陥っていた。
それでも・・・わずかだが魔法を使える兵士や騎士は・・・水を召喚し、なんとか気力を保つ者もいた。
だが・・・自分の分と あと数人程度の水を召喚するだけで・・・魔力が枯渇してしまう。
全員に水の補給など不可能である。
そのため・・・ほとんどの兵士は 通路のあちらこちらで悲惨な叫びをあげるのであった。
「の・・・のどが・・のどが渇いた」
「み・・みず!」
「お・・・お金はいくらでも出すから・・・水をくれ」
「金貨ならたくさんあるぞ~ だから 助け・・・て・・」
「うん!? お金があるのなら助けてあげてもいいよ」
可愛らしい少女の声が・・・絶望の淵に追いやられた兵士たちの耳に聞こえてきた。
もちろん アリスの声である。
これは天使の声か・・・または金の亡者の声か!?
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
アリスは 隠れ部屋のベットの上で ゲットしてきた宝石を一つ一つ数えていた。
「 1個、2個, えっへへ~ 11個, 12個, きゃははは~ 14個, 15個, にゃははは~ 21個, 22個、ほっほほ~」
奇妙な声で高笑いする独特の成金パフォーマンスを演じていたが、
フトッ! あることに気付いた。
この宝石を現金化・・・できるのか!? おそらく無理!? 間違いなく無理!!
アリスは懸念しだしたのである。
・・・・そう! これだけ特大の大きさを持つ宝石を町の貴金属屋で換金は無理なのである。
金額が大きくなりすぎて・・取り扱いはできないだろう!
やはり、大手貴金属商会に持ちこむしかない!
だが、そうなると・・・身分書の提出が必要となり、
これだけ特大の宝石なら・・その出所を聞かれるであろう。
そして、間違いなく疑われる。クーデターのドサクサまぎれに 王座の間から盗んだのではないかと・・・・
まずい! まずい! 下手に売りに行くと・・私は御用となって牢屋行き!!になってしまう。
そうなると裏の世界の人間に売るしかないのだが・・・それはそれで危険である。
非合法組織とのつながりは避けるべき!!
結論・・・この宝石は宝の持ち腐れとなる!
「うっううう・・・とりあえずこの宝石の山は 今のところベットの裏にでもしまっておくしかないか!!」
宝石を換金することによる一攫千金の夢は崩れた・・・しかし・・・ここに新たなる一攫千金が現れたのであった。
あの人達・・・いまにも倒れそうになっている人達から お金を調達するのです!!
ラビリンス通路で 渇きのため横たわっている兵士・・・おそらくクーデターに参加した兵士だろうか!?
そんな兵士をアリスは眺めていた。
ちなみに・・・アリスの服装は、変形ドレスによって神官服モードにしている。
白い服を基調としており・・真ん中に太陽のマークがプリントされている。
これは・・太陽神ルーラーの神官服であった。
もちろん・・・無断での着用である。
一応・・言い訳すると、神官は免許制ではないので・・・自称も可能なのだ!!
あと補足すると 夢の中の三十六課では 異世界における宗教学も学んだので まったくの素人ではないと思う(不安)
とにかく・・・アリスはルーラー教の(自称)神官となり・・・クーデター兵士を助けることにしたのであった。
これは・・慈愛と親愛の心によってなされる慈善事業・・・
あとついでに すこしばかりの金銭も要求する程度なので まったく問題なし!!
・・・決して、後ろめたいことではないのです。
まぁ、あれですね! ユセル大公に味方するような兵士なのだから 免罪符という名の寄付金ぐらい提供してくれてもいいはず♡
◇◆◇◆◇◆
「た・・・たすけてくれ・・・」
・・・まるですがるかのように 神官服を着たアリスに助けを求めてくる数人の兵士たち。
おそらく・・空腹、渇きのためなのか うまく立つことができず這いつくばるような姿勢でアリスに近づいてきた。
この兵士たちは・・・クーデター側の兵士!! アリスと激戦をした人達の仲間である。
でも・・・死にかけていることだし かわいそうだし・・・ここは免罪符的寄付金で解決しましょう!!
「えっと・・・あなた方を 太陽神ルーラーの導きによって・・地上に戻すことが出来ます。
免罪符料金は・・たったの金貨1枚!!」
アリス・・・ここで神の名をかたり・・免罪符という名の寄付金を吹っかけてきた。
金貨一枚とは・・・某異世界での基準では10万円相当!
命の値段として安いのか!? ただし保険はききません。
「わ・・・わかった これで・・地上に・・」
その兵士・・・いや! 見た目の装備からすると騎士かもしれない。
そう! 騎士階級ゆえに懐は豊かだったのだろう。
とにかく・・・その兵士は震える手に金貨を一枚握り・・・アリスに手渡した。
・・・普通の精神をしているのなら・・・こんな神官がこんなラビリンスにいるはずもないし・・・
こんな寄付金を要求してくることはないと理解するだろうが・・・現在、極限状態に置かれていたため、
まともな判断力を失い・・・金貨一枚をさしだしてしまったのである。
「確かに金貨一枚・・・受け取りました! 太陽神ルーラーのご加護を!!」
アリスは軽く目をつぶると・・・その兵士はカゲロウのように消滅した。
もちろん・・・この兵士を地上に送ったのはアリスが行使した魔法・・・時空転移魔法である。
この魔法を分かりやすく言えば・・・・空間を曲げ瞬間移動・・いわゆるワープ航法もどきのようなものであった。
ただし・・転移する先を座標固定魔法で記録しないといけない。
そういう理由のため・・・アリスの知らない場所に転移できない制約がある。
先ほどの兵士は皇宮内での安全地帯・・・迷いの森へと転移させたのであった。
「まずは・・・金貨1枚ゲット!! これで買い食いができるかな!?」
アリスは ウキウキしながら・・・二番目のネギと鴨を背負っている獲物へと近づくのであった。
「えっと・・・あなた方を 太陽神ルーラーの導きによって・・地上に戻すことが出来ます。
免罪符料金は・・たったの金貨1枚!!」
這いつくばるような姿勢でアリスに近づく兵士に・・先ほどと同じようなセリフを発言した。
すると・・その兵士は悲鳴のような声を放ち・・必死の形相となってアリスの足にしがみついてきたのだ。
「 か・・金がないんだ! でも、お願いだ! 助けてくれ! 」
目や鼻から色々なものを吐き出しながら懇願するその姿、もはや・・恐怖そのもの!!
アリスは おもっきりのけぞり・・その兵士を蹴り上げその場から退いた。
「ぐわぁぁ ぐぇぇ」
それでも床をはいながら・・・アリスへと迫るその兵士・・・ほとんどゾンビ状態である。
「わ・・わかったわぁ・・料金はいらないから・・・代わりに・・その鎧と剣をお布施としてちょうだい!」
アリス・・・鬼気迫る兵士に押され・・妥協をした。
そして・・・・その兵士はなにを勘違いしたのか・・・それとも錯乱したのか・・・全裸となり・・
着用していた物を全て・・・アリスに差し出した。
「ぎゃぁぁぁぁ」
アリス・・・おもっきりの悲鳴!
そんなもの見せるなぁ・・・・・すかさず手で目を隠すアリス。
でも・・・この兵士・・ちょっと若かったよね・・・10代後半かな!?
ちょっと見てみようかと一瞬そんなことが脳裏を横切ったが、顔が好みでなかったのでパス!
さっさと転移魔法を発動して地上に送ることにした・・・・全裸で!!
ちなみに・・差し出された衣服は・・汚い、臭い、触りたくない!!
無茶苦茶邪魔なので・・・通路の端へと蹴とばした。
鎧と剣はおそらくお金になると思うので・・・・転移魔法でラビリンス奥の倉庫部屋に転移させた。
そのうち・・・どこかの店で売るつもりである。
ちなみに・・・全裸となって地上、迷いの森に転移したあの兵士はどうなったかというと・・・
たぶん、恥ずかしいことになってると思うので・・・考えることはやめにした。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




