プロローグ第一弾・とある新人官僚の話 (皇宮地図付き)
カールレン皇宮見取り図
人の目を楽しませるような不思議なオブジェ、街路樹に噴水。
・・・荘厳にして華麗、煌びやかな建物が立ち並び多くの人達が忙しそうに行き交う。
ここはどこぞのテーマパークなのか!?
いいえ! 違います!
この大陸で覇を唱えるヴェイネス帝国の中枢・・・皇帝の住まう聖域、カールレン皇宮である。
初代皇帝がこの地に皇宮を構えて以来・・・帝国の拡大にともない、この皇宮も拡張していった。
何度にも渡る増改築を経て、多くの建築物が立ち並び・・・もはや皇宮というより大都市!
ある意味 拡大する帝国を象徴するような皇宮なのである。
建物同士を結ぶ渡り廊下、縦横無人に駆け巡る複雑な立体通路、どこぞの地下鉄駅を思い浮かばせるほどのラビリンス。
そう!! 増改築のやりすぎによって・・・まさに迷路と化してしまっていたのである!
あえて言うなら・・・違法改築の集合体なのだが・・・・この帝国にはそんな法律はないので合法である。
クノッソスの迷宮など若造扱い!! 本当の迷宮とはこういうものだと証明するほどのありさまになっていた。
そして今日も・・・この皇宮でよく見かける風景、迷子となってしまった若い新人官僚がいた。
「この書類を今日までに片付けないといけないのに・・・どうしてこんなとこで迷子!」
書類の束を抱えた新人のテル君20歳(ロリな嫁さん募集中)は 蜘蛛の巣のような通路の十字路!?で頭を抱えていた。
各通路には道しるべ、または案内係の人までいるというのに・・・・毎日、毎時間、一定数の迷子が発生するのだ。
この皇宮の通路は・・・ずばり言ってしまうと時空がゆがんでいる。
東に真っすぐ言ってるはずなのに西に向かっている。
一階のはずなのに三階。
一本道の通路を進んでいるのに何故かもとの場所に戻っている。
ある種のホラー、怪奇現象!
それゆえに 理屈で理解してしまう人ほど迷子になってしまう。
思考力のある人ほど迷うのである。
そうだ!! 理解してはならない! 感じるのだ!!
この新人のテル君もへたに頭がいいゆえなのか・・・迷子になってしまっている。
ちなみに・・・貴族特権だけで皇宮勤めをしている人達は・・・知能がそれなりなので・・迷子にならなかったりするw
「た・・・たすけて!!」
新人のテル君は 通路ですれ違った少女に思わず声をかけてしまった。
長い黒髪をしたテル君好みのロリ顔だったのは言うまでもない!
だが、すぐに後悔した。
とんでもないぐらい高位の人物だったからである。
一般庶民が着用するような安物のワンピースをしていたので、身分が低いと思い込んでいた。
だが・・・その少女の顔を見たとたん・・・テル君! 冷や汗を背中から豪快に流したのである。
まちがいない! 特徴的な黒髪、あの長い黒髪少女! あの少女は!!
ロリ好きなテル君の目を誤魔化すことはできない。
王族の中で一番ロリな彼女は・・・第4王女のアリスフィーナ姫
年齢は10代前半だったと思う。
そして、テル君好みの顔形をしていた。
とにかくテル君・・・・20歳にしてやってしまった一生の不覚!!
焦ったあまり王族に声をかけてしまったのである。
平民出のテル君は 冷や汗をかきながら、非礼を詫びようとおもっきり頭を下げた。
・・・というかもはや頭を下げる行為ではなく 前屈体操のような姿勢になってしまっていた。
そんなテル君のトンデモ行為を見て・・茫然と立ち尽くしてしまったアリスフィーナ姫。
王族に対して度が過ぎた敬意の表れだとは分かっているが・・・あまりにも愉快過ぎる!
「いいよ! いいよ! そんな卑屈にならなくても・・・でも、見かけない顔だね! 新人の人かな!?」
「た・・たいへんなご無礼・・・申し訳ありません!! 先日、ここに配属された者なのです」
アリスフィーナ姫からの御言葉に・・・焦るテル君。
「なるほどね!! ここは官僚泣かせのラビリンス。迷子になったのね。安心していいよ!
うちの魔法で脱出させてあげるから」
「あっ・・えっ 魔法ですか!?」
「うん・・魔法を発動させます!」
「皇宮内での魔法の使用は禁止に・・・」
王族とはいえ・・・決まり事は守らなくてはならない!
だが・・・目の前の姫は魔法を使おうとしていた。
テル君は・・自分のために決まり事を破ろうとする姫を止めようと声をかけたときには遅かった。
目の前の視界は薄らぎ・・・姫の姿は消えてしまっていた。
そして・・・なにか空間がゆがむ感触・・・不思議な浮遊感・・・。
数秒後・・・
テル君は茫然と立ち尽くしていた。
「ここは!?」
周囲を見渡すと・・・森の中である。
青々と茂る緑の葉が天を覆い・・・あちらこちらから木漏れ日が差す。
周囲をぐるりと見渡すと・・・少し離れたところに見慣れた皇宮の建築物。
「ここは・・・迷いの森!?」
広大なカールレン皇宮内には・・迷いの森と呼ばれる地域があった。
だが!! 名前で勘違いしてはならない。
この森で迷ってしまうため・・迷いの森と名付けられたのではないのだ。
その逆である!!
迷子を助けるための 迷いの森なのだ。
そう!! 迷路のような複雑怪奇な皇宮内通路で、おもわず道に迷った人達が、
そのまま迷い続け・・遭難、餓死することを防ぐために魔法的安全機構が設けられたのである。
皇宮内でさまよい迷子になったとしても6時間ほど待てば・・・自動的にこの迷いの森へと瞬間移動・・いわゆる転移させられる。
そのおかげで・・・皇宮内で遭難死した人はいない!!
先史時代の高度な魔法科学による摩訶不思議な魔法機構。
その仕組みを解明した者はいないが・・・とにかくこの安全機構によって皇宮内での遭難を防いでいる。
だが・・・今回のテル君はアリスフィーナ姫の魔法によって強制的に飛ばされたのである。
安全機構の魔法でなく・・・姫の魔法によって・・・
テル君は 姫のたぐいまれなる魔法に感謝した。
だが、何か引っかかるような記憶がある。
たしか・・・第4王女アリスフィーナ姫は魔法が使えないという噂話。
勘違いだったかな!?
「・・・とりあえず姫様の御厚意で助かった。すぐにでも部署にもどって書類を片付けないと・・・今日中に仕事が終わらない!」
テル君は書類を抱えて・・・猛ダッシュしながら皇宮内にもどるのであった。
余談であるが、テル君は結局・・・部署に戻れなかった。
そう! 再び・・やっぱし、お約束通り皇宮内の通路で迷ってしまったからである。
テル君! ドジである!
テル君! 部署への道は遠い・・・
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)