表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必殺・裏稼業  作者: Taylor raw
関本屋無惨
3/97

 この辺りのドブ街の風体の良くない連中が送ってくる視線を気にすることなく関本一家は帰り道を急ぐ。


「番頭や丁稚たちの怪我の程はどうなんだ?」


「医者によると全員どこかの骨が折れてしまったそうよ…… 三助は目も覚まさないわ」


 おふみのもたらすその悪い情報に典和は歯軋りして怒りを噛み殺す。

 奴ら・・の差し金に十中八九間違いない。


「ヤクザものの服装はどんなだった?」


「黒かった…… 丸に轟の文字が背中に見えたわ」


 足を早めながら典和は膝を叩いて悔しがる。

 轟々組ごうごうぐみと言えば稲富商会と因縁の深い付き合いであることは周知の事実である。


「くそっ! 奴らは認めねえだろうが稲富の飼い犬、轟々組に間違いねえ……!野郎‼︎ そこまでするなら私にも考えがあるぞ……! 稲富!」


 その時、おふみはこちらと目が合った侍風の男の顔に思い当たり思わず声を発する。


「あっ……」


 男はこちらが気づいたことに気づくと背を向け、足早に立ち去ろうとしたのでおふみは慌てて追い縋った。


「待ってください、お侍さん! 先ほどはありがとうございました! まさか、私を心配してここで待ってくださっていたので?」


 近づいてみるとやはり先ほどおふみを館まで送ってくれたぶっきらぼうな侍で間違いなかった。

 しかし男は顔を顰めながらしっしっと手を振る。


「ふん、そんなんじゃねえよ。じゃあな」


「お待ちになって!」


 男はおふみの言葉に振り返ることなくその場を足早に立ち去った。


 典和は不思議そうにおふみに問いかける。


「おふみ、あれは誰だい?」


「先ほどこの街は危ないからって私をあの屋敷まで案内してくれた方よ。ああ見えて結構親切なのよ」


「そうか…… 礼が出来なくて残念だ。おい、ぼっとするな菅四郎。急ぐぞ」


「へい……!」




 おふみを送った貧乏侍が夕飯の段取りを考えながら歩いていると聞き知った声が耳に入り思わず舌打ちする。


せいさん珍しいじゃない。人に優しくするなんて。可愛い子だったね。惚れちゃった?」


 勢二郎が振り返るとそこには予想通り、薄黄色の町人風の服を着た顔立ちの整った娘が悪戯そうな笑顔でもって木の上から見下ろしていた。


「覗き見してんじゃねえよ、お駒。趣味の悪い。そんなんじゃねえよ。あんなガキに懸想するかよ」


 お駒は木から飛び降り勢二郎の肩をコツコツと叩く。

 勢二郎は迷惑そうに顔を顰めるがお駒はそんな彼の様子に一向に構わない。


「ごめんね、これが忍びの者の性だから。そうね、あの子勢さんの妹さんにどこか似てるわよね」


 勢二郎はお駒のその言葉に憤然として背を向けその場を立ち去る。


「似てねえよ。勝手に俺を詮索すんじゃねえ」


「あっ待ってよ勢さん。怒らないでよ」


 お駒はいつものように揶揄った勢二郎を追いかけていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 勢さん、ご縁が出来ましたね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ