表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/108

倉庫のコンサート(1)

 倉庫の床にしたたかにオデコを打ち付けた俺は、うずく股間を押さえながら再び顔を上げた。

 しかし、またまた、不思議なことが起こった。

 先ほどまでいたはずの女の子たちが、忽然と姿を消しているではないか。

 幼女に股間を踏みつけられた激痛で一瞬目を逸らした、ほんの数秒の事である。

 どこかに行ったとは到底思えない。

 その証拠に、今だ倉庫の入り口のシャッターは締まったままである。

 そして壁についた勝手口のドアが開いた音など聞こえなかった。

 ということは、まだ、この倉庫の中に、あの女の子たちはいるということなのだろう。

 俺は、あたりを見回した。

 しかし、倉庫の中はがらんとして何もない。

 昨日、この倉庫を借りたばかりなのだ、まだ、什器などありもしないのである。

 したがって、隠れるところなどないはずなのだ。

 それにもかかわらず、女の子たちの姿は見えなかった。


 だが、俺の目の前には、明らかに女の子とは別の何かがうごめいていた。

 まず一つ。お座りをした子犬が、ハッハッハッと息をしながら嬉しそうに尻尾を振っているではないか。

 その子犬の横では、白黒の子猫が前足をなめながら念入りに顔を洗っていた。

 そんな子犬と子猫に隠れるように、子ウサギの赤い目がプルプルと震えながらこちらの様子を警戒しているのが見える。

 その集団の中でもひときわ大きな存在のペンギンが、首を振りながら、きょろきょろと自分の足元を見回している。

 なにが、そんなに不思議なのか、足をペタペタと忙しそうに地団駄を踏むように動かしていた。

 そしてなによりも気になるのは、俺のすぐ鼻の先でレッドスライムが目を吊り上げて偉そうにしていたことだった。

 その様子はとても怒っているようで、すでに顔は真っ赤っか。

 といっても、最初からレッドスライムは赤でしたか……

 というか……どこからが、顔?


 俺は、冷静に考える。

 女の子たちはこの倉庫から出て行ってないとすれば、もしかして、この5匹のペットたちが女の子に変ったのだろうか?


 そんな馬鹿な!


 まぁ、普通の人間ならそういう反応をするだろう。


 だが、俺は違う。


 なぜなら、俺はかつて魔獣戦隊マジュインジャーの隊長だったのだ。

 騎士養成学校にマーカスとして入る前の俺は、母と一緒に森の中で生活をしていた。

 その時に、自分がテイムしたのがヒヨコと子猫とアオダイショウとミドリガメである。

 それらの仲間にピンクスライムを足したのが魔獣戦隊マジュインジャーなのだ。

 森で遊ぶにしても5匹のマジュインジャーと俺はいつも一緒だった。

 そして、魔王【ドゥームズデイエヴァ 】と戦う時も共に戦った。

 そう、俺の血を浴びたマジュインジャーは、強い魔獣へと変身するのだ。

 ヒヨコは、朱雀になって天を舞い。

 子猫は、鋭い爪と牙を持つ白虎へと姿を変える。

 アオダイショウは、青龍となりうね狂い。

 ミドリガメは、相手の攻撃を阻む玄武となった。

 そして、残るピンクスライムは、スライムドラゴンとなり全ての敵を呑み込んだ。

 どうやら、俺の血には、魔獣たちを進化させる能力があるのだ。

 それをすでに知っていた俺は、目の前のペットたちが仮に人間に進化したとしても、別に驚きはしない。


 だがしかし、不思議なことに俺の体はどこも痛くない。

 もし進化したのであれば、俺には血を流した跡があるはずなのだが、それがない。

 いくら体中を見回しても、どこにも傷がないのである。

 ならば、このペットたちは俺の血を浴びて進化をしたわけではないのだろうか。

 ということは、どういうこと……?


 ……………………

 …………

 ……

 まさか…………

 …………

 ……


 いや、今は考えまい……

 とにかく、今、必要なのは現時点の状況を正確に認識することなのである。

 目の前にはレッドスライムを含むペットが5匹。

 そして、俺の着るモノはパンツが一つとズボンが一着。

 あと、俺の部屋から持ち出してきた道具が入ったカバンがあるだけだ。

 当然、金はない……


 まず、優先すべきは、着るモノだ。

 着るモノがなければ、働くことすらできない。

 働くことができなければ、金を手に入れることすらできないのだ。

 やっぱり裸はまずい……

 いくら、ココが海の側だと言っても、やっぱりまずい……

 だって、夕方になってくると、だんだんと寒くなってくるんだモン!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ