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いきなりアリエーヌ(2)

 魔王が討伐されたあの日、キサラ王国に戻ったチョコットクルクルクルセイダーズの四人は消えたマーカスを探し街をさまよっていた。

 日も大分暮れ、夜更け過ぎになっている。

 だが、街の通りには、魔王討伐の興奮覚めあらぬ住人たちが、さも祭りのように騒いでいるのだ。

 そんな中をマーカスを探して走る。

 しかし、見つからない。

 だが、魔王を討伐したという噂は、人づて伝わり、今や町中を覆いつくしていた。

 アリエーヌたちが通り抜けるたびにいたるところから歓声が沸き起こる。

 だが、アリエーヌは叫ぶ。

「これは、ワラワの功績ではない! 一人の男、一人の英雄によってこの国は救われたのじゃ!」

 そして、目に涙をたたえ大声を上げるのだ。

「その男名は【マーカス=マッケンテンナ】! ワラワの夫となる男じゃ!」

 その宣言を横で聞いていたグラスが驚く。

 ――なんでアリエーヌが……なんでアリエーヌが……そんなことを言うの?

 ――マーカスは僕の事を好きなはず。

 普段、円周率しか唱えないグラスが、珍しく怒鳴った。

「マーカスの気持ちも聞かないで、そんな事、許されるわけはない!」

 驚くグラマディとキャンディ

 しかし、この二人もグラスに追随した。

「そうやなぁ……グラスはんの言うことも、もっともや。ウチも含めて、だれが妻にふさわしいのかマーカスはんに直接聞いてみるのがいいですやろ」

「ちょっと待て! なら俺も参加する! この【グラマディ=ボインジェンヌ】! 子作りならだれにも負けん!」

 アリエーヌが、叫ぶ。

「お前たち何を言っておるのじゃ! ワラワはキサラ王国第七王女【アリエーヌ=ヘンダーゾン】ぞ! それ分かったうえで申しておるのじゃろうな!」

「そんな事、ウチには関係あらしまへん! マーカスこそ、我が家、ワインハンバーガー家にふさわしい男、胃袋とあそこをがっちり掴める我が家の勝ちや!」

「ははは、お前たちでは無理だ! お前たちが作れる子供の数などたかが知れている。ボインジェンヌ家の俺なら、野球チーム2つ分ぐらいの子供は作る自信がある! むっつりスケベのマーカスなら、きっとそれを望んでいるはずだ!」

「僕だって……グラスハート家だ……そもそも、マーカスは僕の事を好きなんだぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 四人の額が、ぶつかりこぜり合う。

 凱旋を祝福する国民たちの眼前で、四人の女の子は火花を散らしていた。


 そんな小競り合いがあってからのアリエーヌの動きは速かった。

 すぐさま国王である【コラコマッティア=ヘンダーゾン】に直訴する。

「ワラワは、【マーカス=マッケンテンナ】と結婚するのじゃ!」

 もう、魔王討伐を果たした名誉で鼻高々の国王は、娘のいう事をすぐにでも聞きいれたい。

 だが、マッケンテンナ家は豪商であるが、いかんせん、たかが一般人の家柄。

 王家と婚約するには立場が違いすぎた。

 しかし、時期を同じくして、ドグスが騒ぐのである。

 家に帰ってきたウチのマーカスたんが、魔王を討伐してからと言うもの豹変してしまったわ。

 魔王を討伐し姫様たちまで救ったというのに、くれたのは騎士の名誉だけやて。

 セコイと思わんか?

 全てを犠牲にしたマーカスたんは、身も心もボロボロになったというのに、この国は何もしてくれへんのやで!

 どない思う?


 魔王討伐が行われたあの日、ドグスは、アリエーヌがマッケンテンナ家に殴り込んできたと思った。

 訳が分からぬドグスはとりあえず、アリエーヌたちを丁重に送り返すと、すぐさま、手下に情報を集めさせた。

 おおかた、うちのマーカスたんと入れ替わっていたヒイロとかいう坊主が、何かしでかしたんやろう!

 そう思っていたのだ。

 だが情報を集めるに従い、それは勘違いだと分かる。

 しかも、替え玉のマーカスことヒイロ=プーアがどうやら魔王を打倒したようなのだ。

 これは使える!

 ドグスはいやらしく微笑んだ。

 このなり替わりの情報を知っているのは、ヒイロとその母のスギコ、そしてドグスだけである。

 そして、今現在、魔王討伐の知らせから一週間たった後でも、なぜかヒイロとスギコの消息は分からない。

 いなくなったのであれば、好都合。

 これ幸いと愛息子のマーカスたんを、その英雄へと祭り上げたのである。

 まぁ、仮にヒイロたちが名乗り出てきても、大金でシバけば、その口を黙らせるぐらいはできるとたかをくくっていたのも事実である。

 ドグスが街にバラまいた金によって扇動された国民の口は、国王への不満と変わっていたのである。



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