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飲み込む

 銃火器を持ち込むのもロハじゃない。

 社会の表に枝葉を、裏には根を張らせた権威であってもだ。

 ほかの輸入品と紛れさせるためいちいち分解し組み立てる手間を設け、質のいい『道具』を海外から安全に購入できても、指先サイズの部品一つに仲間たちは首を賭けねばならない。


 弾倉に詰める時、弾の一発ごとから実際の何倍もの重みを雀は感じる。

 消費した物資の分だけ、雀は弁財を要求してやりたかった。たった今壊した拳銃一丁あれば、危険を冒し手配してくれた一家何人分を養えると思っているのか。


「鬼ごっこの次は、かくれんぼね。ミユキのあまりのイイもんっぷりに逃げ回るのは仕方ない。でもたまには反撃しないとダメ。ワルもんなのに真面目さが足らないんじゃない?」


 ふざけた格好でふざけた言い回しに舌を躍らせ、ふざけた現象を起こしてくる。バケモノとはそういう理不尽な存在なのだ。


 脳幹に突き刺さったナイフを抜けば。外科手術より綺麗に治って、雀が刺したナイフの方が腐り出す。


 雑木林に身を潜め、雀は憤慨した。手持ちの武器は使い果たし、メイド服はすっかりと軽い。


 汗が滲んで、古傷が疼いた。


 ――『真面目さが足らない』。今の自分を見たアレの評価。

 これだから、雀は怪物を好きになれなかった。物量と人員を総括用し用意周到に練った計画。これを『結果が全て』の一言で全否定してくる。


 理不尽とはつい先日戦ってまだ日も浅かった。主の調査を踏まえ、別に心得も個人でつけて今回は臨んだ。


 今度は倒す以外の抗戦だ。勝ちにこだわる必要はないし、七月の雪辱は晴らすべからずと主にも釘を刺された。


 今回の敵は、常識で挑んではならない。

 前提を捨てねばならない。

 目を閉じて戦った方が、むしろ勝てる。だが絶対に目を閉じてはならない。


 全く役に立たない。

 その意味の通り有り難い忠告だった。


 こうして現在、身を隠しては、それがなんだという話ではあるが。雀にその気がなかったのに、敵の方が勝ち負けにこだわっている。


 善とか悪とか、変質的な価値基準のおまけつきときた。


(わたくし)ばかり相手していますが。三上創はよいのですか? あなたの狙いはそちらだったのでは?」

「あの――保護すると言っておいて、あぶなくなったら売る気かよ!」


 創の側の同級生は彼女の代わりに怒った。


「こっちは逃げる時間は十分過ぎるくらいあったんだぞ! 今だって! そうなのに創がそうしなかった理由をちょっとは考えたらどうだ!?」


 あれは確か、火原井千代紙(ひばらいちよがみ)だったか。


 怒りに爆ぜる身体もだが、声変わりもまだという耳に響く怒声だ。


「そんな、悪いよちよちゃん。空木さんは私達を助けようと来てくれたのに、今も必死で戦っ――あたッ」


 ストーカーに保護される時点で安全なんかどこにもないと、飛び跳ねた拍子に千代紙は創の脳天にチョップ。


 能天気と叱った千代紙の気持ちには概ね雀も同意だった。逃げる創の背後を守って前線を離脱する口実にもなって効率も上がるし、雀としてもやはり隙を見て逃げ去ってほしかった。


「逃げたいの? だったらどうぞご勝手に。逃げたら後できちんと追いかけるから。どうせふりだし、ゼロに戻るんだ。ゼロはいい。無駄な時間をミユキに取り戻してきてくれる」


 なんだか今までの抵抗が無駄のように雀には聞こえた。


「うちの坊ちゃんといい勝負、腹に来る声ですね」

「そこにいたのか。でもほらミユキの言ったとおりになった。ワルもんの君はミユキに負かされちゃった。ひとりぼっちになったミカミソウも結局は負ける。君に許された抵抗の時間は、ミユキに見つかるまで」


 雀は死なない。創も死なない。実行に殺されるまで。


「人生、そう上手く運びませんよ」

「なんでワルもんの君が『イイもんの魔法使い』のミユキにそんな上から目線なの? 十四点」

「そんな上とか、下とか……この目で見ちゃったら、仕方がないでしょう」


 雀の細身を隠せる太さの雑木林に立てかけておいた散弾が火を噴く。重音と鉄塊も。密輸した散弾銃は猟用じゃない。戦場で敵陣を果すまで吼え続けよと、連続射撃を与えられ産まれた生粋の破壊装置。


「また死んだー!……魔法使い相手にこう何度も、すごいや。前に戦ったことがあるワルもん?」


 穴が開いた胸に破裂した心臓が出来上がっていった。脳髄にナイフを刺して笑っていたのだし銃弾が貫通しても朗らかにしているのは雀にも予想がついた。


「不意打ちは、以前、街に来られた方を参考にさせていただきました。痛い目にも遭いましたので、あなたのことも当然警戒して、今回はいろいろ準備を」


 スチール製貫通弾もその一つ、雀自ら武器を手配した主に追加で打診した。


「その人もワルもんだったのかなぁ」

()()()()()()、としか私には」

「どんなだった? ミカミソウの次にミユキの敵になるかも、参考に教えて?」

「頭がよくて、無口な方々でしたよ。そういった意味では、あなたとはそりの合いそうにありませんね」


 てっきり今回もそうなるかと創は用心して臨んだ。


「首、どうしたの? 痛むの?」

「心臓がさっきまでなくなった方に言われるとは」


 首筋を撫でた雀は肩を落とした。背後には特に気をつけていたのに。

 コレはずっと真っ向勝負だ。背中を預けるパートナーもいない。自分の能力に絶対の信頼がある。か、もしくはコミュニケーションが苦手な知性なのかも。


「隙あり! 【ゼロゼロビーム!】」


 実行の目線に合わせた両手から、虹のような多色の光線が発射。空間で停滞した貫通弾が回避した雀を追いかけまわし銃口に入り込み、銃身を腐らせた。

 銃を放棄。弧を描いて実行の背後に侵入、途中で創達を回収する算段だった。抵抗手段を失くしたからには、これ以上の戦闘行為は任務に支障を来たしかねない。


 銃を撃って。爆弾を投げて。バズーカを発して。得られたデータは決して潤沢だと言えない。


 不意打ちは有効だった。認識可能な意識まで人のそれから逸脱していない、街の犠牲者を減らす一助としては(おお)いに強みになる。


 最大の脅威は時間の干渉の手段。物質のみ働く可能性は高いと雀は見ていた。


 空間を掌握するほど広範囲だと、そうしたら戦う前に目標の創を始末できた。不意打ちの前提も崩れる。


「だったら、あなたの攻撃下で動き回っていただけの私でも、逃げ切れます。見たら、運動が苦手そうで」

「あぶない!」

「――【アルティメットせいぎパンチ!】――」


 軌道上に曲線で抉る形で、実行は雀の目の前に身を(さら)した。拳を突き出す。道化師の見かけで、プロボクシングに負けじと威張るような、まさかのアッパーカットがくるとは雀の想定外だった。


 腐っても竹刀を振るってきた創が、始めの足捌きで実行(ミユキ)は、どんな企てで頬肉を剥いたか察知しなければ、直撃した不意打ちが決定打となっていた。


「無茶しやがってからに! 飛び出す気なら『飛び出します!』って私に選手宣誓してからにしなよね」

「スポーツじゃないと言いたいけど。……ごめんなさい」


 砂煙から千代紙は創を引っ張り上げようと。だが実行を遮る場面に飛び出し、拍子に雀に体当たったせいで、足がもつれて、複雑に絡み合って今度は千代紙まで巻き添えに倒れた。


 少女三人の肉団子が完成。


「こんな状態となっては、私が叫びたいことではあるんですがね……。創、怪我は?」

「幸いなことに、お尻が痛い以外は、どこも」


 パンチも奇跡的に創には当たらなかった。シャドウボクシングを打つに(とど)まった実行の不意打ちは創の背後にいた雀には不発で終わった。


「作戦を読まれ誘導されました、いやはやお恥ずかしい」

「今の方が絶対お恥ずかしいけどね」


 無策からの無謀が雀に無駄にならなくてよかった、と。踊る胸に声が弾む創に、千代紙の指摘。


 正面攻撃。一撃必殺。


 技に馬鹿でも恥ずかしくなりそうな命名をしている大の大人が、普通の大人と同様にずる賢い――なんてのがオチとは。


「笑ってる場合かよ。どう見ても絶望的状況だぜ、私ら」

「そうですね。ですが、ふむ」


 三人三者、一塊に団結しておきながら文殊の知恵の一つも浮かばない創達に、実行は過剰な攻撃を加えようとしなかった。


「ミユミはとっても頑張ったのよ。苦労したの心血を注いだの! その気持ちをもうちょっとわかって!」

「あーハイハイ、それはなんともまあご愁傷ご愁傷。で結局?」

「ワルもんがこんな最後なんて、認めない! 見てらんない!」


 癇癪を起こした子どものように大人の身体で地団太を踏むものだから、三人とも砂埃に咳き込んだ。すぐ隣で息を吐かれると余計塵が飛んで隣の人の症状が酷くなった。


 咳、くしゃみ。その音に混じって。


「――車?」


 クラクションの音に創は耳をそば立てた。


「公園の前は人気がずっとなかったのに」


 千代紙と来た際も向かいの通りに車は一台も走っていなかった。


「我々の手配で住民を払っていましたからね。ちょっと危なそうなので、移動しておきましょうか」


 ゴロゴロと三人が這った後ろ。一台の白のバンが車止めを踏み倒し公園に侵入してきた。速度を保ったまま実行を掠めて走り去っていった。


「生きてっか雀ちゃん!」

「その声、啓三さんですか。助かりました」

「なぁああにが助かっただよ、轢き殺されるかと思った!?」

「なんだか面白いことになってますね。でもナイスランディングだったでしょう」


 運転席で豪快に笑う男への千代紙の文句を引き受けたのは、後部座席のスライドドアを閉めた背広を着た男。雀には四多良(したら)と彼も敬称で呼ばれた。この彼が走行中の車から手を伸ばし三人を車の中に引っ張り入れた。


「空木さんの、知り合いですか……?」

「そう尋ねる君が三上創さんだね。我々が来たからにはもう安心だ」


 落ち着かせる気があって言っているのは伝わった。だが、創には彼の向けてくる笑顔から、言い知れない感情が発露した。


 顔になにかが滲んで、それを、怖がるべきだと。


「坊ちゃんは。車で落ち合う手筈でした」

「それについて言伝(ことづて)を貰ってきた。雀ちゃんと、三上さんアンタに」

「私……!?」

「調査に時間を懸ける必要ができたとかで。例の遊園地で落ち合うそうだ」


+++


 遊園地と運転手が言うものだから、暢気に遊んでいる場合かと思わず悪態をついた時分を思い出し赤面。その創に雀が慰めるつもりで言った。


「啓三さんと四多良さん、ああ見えて私達くらいの年齢がストライクゾーンですから、先輩がなにを言おうと、興奮して流してくれます」

「不安にさせてくれてどうもありがとね後輩ちゃん――って、創、あんた腕、掻きすぎじゃない」

「乾燥、してるのかな。ここに来てから気になっちゃって」


 服袖越しに腕を(さす)った創。肌が荒れる。せっかく綺麗なんだからと止めてほしい反面、千代紙は。


「無理もないでしょう――こんな廃墟に連れ込むなんて、やっぱりあんた、創をどうにかしようっていう犯罪者?」


 西区にある廃遊園地はそれなりに有名スポットだった。部活に塾漬けだった創にしても。


 アトラクションの屍を吹き抜けた風。錆を含んだ重い残暑の風は、精神的不快もさることながら肌、呼吸器系にも悪循環をもたらす。


 車内で治まった咳とくしゃみを創はまたぶり返し、二人もそれに釣られた。


「へぶしゅ!?」

「…………すん」

「なんか、腹の奥がムカついてきた!」

 

 ポーカーフェイスはくしゃみもポーカーなスタイルに徹していた。


「お前メイドだったら、鼻かむもんとか常備してないの!?」


 銃の手入れに使う紙やすりなら余分に常備していたので、二人にも。


「鼻かみ用で常備しているんじゃないの!」

「『鼻かみ用』で持ち歩いているんですが。だって、同じ(かみ)です」

「顔面、鉄でできてるから感情薄いんじゃね!?」


 こんなガラスを貼りつけたような紙面で鼻水を拭こうものなら、鼻もいっしょにずる剥けてしまう。


「主人にもこれで毎朝毎昼、毎晩鼻かんでいますよ。私がよだれを拭いたらこれで一発で目覚めますし。寝坊した日とか」

「人肌は雀さんが思っているより、優しくできていると注意しても聞いてくれないので、諦めて自分からティッシュを持参する習慣を身につけました。よかったらどうぞ」


 苦しければ咳止め用の飲み薬に。


 必要なら、エチケット袋も用意してある。


「……受け取りませんでしたね」


 創の肩に据えたポケットティッシュを除ける真っ黒い手。どうやら手袋を嵌めていた。


「ポケットティッシュで信用を買おうとする。図々しいですよ、折々(おりおり)坊ちゃん」

「呼び立てたのをお詫びしたかったですが。襲撃者だと思われましたかね。無理もありませんが……駄目ですよ。人を見た目で決め付けちゃ」


 お前が私達をこんな場所に呼び出したんだな。千代紙に睨まれた招待者、雀はその人物の脇に控えた。


「あなた、やっぱり、式折々(しきおりおり)()()……()()()()()()()? 一年に最近転校してきた」

「……雀さん、二人に式の名は」

「言いつけ通り話してません、敵の側でしたし。そんな余裕もありませんでしたから」


 目を伏せる雀に、身の竦む創。場に一人孤立した雰囲気に千代紙は堪え性が利かなかった。


「創、シキオリオリって? あれ私らの学校の制服、だけど」

「ちよちゃんはなんにも知らないんだから。私にかかりっきりで」


 校内の噂にも興味がない。式は新三巫市でも意味のある名だし。轟く()の家系に関わらず折々はそれなりの問題児で通っていた。


 その噂に違わず、セーラーを着て校外でも過ごしている。やはり趣味なのだろう。前と後ろを切り揃えた茶碗みたいな髪型。外見で惑わすという悪評の根源は、ここからきていた。


「おや。式の愉しみが気になります?」

「ご、ごめんなさいジロジロ見て!」

「先輩は後輩の素行が気になるものです。式は構いませんよ。ところで先輩は、腕が痒いんですか、しきりに気にされているように見えますが」

「ちょっとね……」


 創は苦笑した。自分だって人を観察してんじゃんと千代紙が誤魔化しを重ねる。


「失礼」


 苦笑いを浮かべる創に向かって皺の寄った顔を傾がせたまま。殻を閉じ身を隠す二枚貝のように引こうとした手首を押さえると式が乱れた袖を剥いだ。


「どうりで。これはさぞかし気に障ったでしょう。ハンドクリームは」


 効きそうになかった。雀が顔の傷に使っている塗り薬も、効能を肌で知っている本人が妙案を求める面持ちを式に向けてきた。


「……空木ぃ! あんたが、創にあんな真似させた……あんたのせいで!」


 千代紙に胸倉を掴まれなくとも、雀にも判っていた。どう考えても、実行の攻撃から創が庇った時。空拳にも光線と同じ効果があったと今に気付いても遅い。


 雀の脇を挟み入れた創の片腕。肘の辺りまで縮み上がっていた。葉を切り落とした盆栽のように変形、その色もまた水気が失せている。


 袖に入り込んだのは、単なる水分の消失とは全く別。これは腕自体、肘から先が小さくなったのを表す。


「報告にあった被害とも、一致します」

「なに冷静面して分析してんのよ! なにか情報掴んでるなら、創の腕、さっさと元通り治すくらいやったら!?」


 冷静沈着な雀を揺さぶる以上、千代紙は暴力に及ばない。状況に狼狽えている彼女に、そんな冷静な行動は無理だと式は見たし、雀もそれが判って好きにさせた。


「そういう先輩が冷静でいられる方が、式には不気味です」


 と、言われても。それが目を細めた後輩についての創の本音だった。異物感はあったが痛くは全くなかった。見た感じ、色も相まって、腕に枝がくっついたみたいな不思議な感覚だった。


「うん、と。ないより……あった方がマシかなって」


 夢の話だ。顔を見合わせた式や雀には関係がない。


「それでもこれは」


 創の楽観さに雀は千代紙に縋り付かれたまま零した。

 報告書によると、あの『魔法使い』を名乗った単敵は、物体の時間を逆行する能力を具える。アレの被害者は乳児の状態で死体となり、雀の武器も光線で組み立てる前の状態に戻ったが。


 光線の当たった弾丸は射線を逆行、発射した銃は攻撃を受けなくてもバラバラになった。報告に目を通した後だからこそ、雀は武器を放棄する選択を取れ、でなければ赤子にまで身体が縮んで腐って死んでいた。


 要するに、実行が光線を浴びせると、浴びせた物体に触れた物もまた逆行する。


「坊ちゃん、予定を変更して調べていたのは、敵についてですか……それとも」

「……創、あんたその手」


 カチコチに固まったはずの創の手。その指先がなんと小刻みに動き出した。乾いた音を擦り鳴らしながら。


「いやっなに、これ!? ちよちゃん――なんとかして!」

「なんとかって言われても……ッ!」


 自分の意思とは関係なく、創の腕は右に左、上へ下へ跳ね回り出した。


 止めに入ろうとした千代紙の、頬を叩いた。


「とまってよ!!」

 上半身、特にもう片方の腕に力を込め止めようとした。


 ――ずる。

 ――ずるずる。


 ――ずるずるずルズルズルズルズルズルズル。


 思う限りの力を出し切った。するとなんと、軟い感触がした腕から生皮は剥がれ、創の引き絞られた半身にこびり付いた。


「創の腕が……」

「……生え変わった……」


 創が掲げ千代紙が仰いだ腕は、なんと元通りになった。


 ほぼ――完全というわけではない。


 化膿とは明らかに違う。透明な粘液を何滴も落とす腕には、なにか、そう。鱗のような模様が太陽の光を受けて。


 鱗は、腕、首筋。驚嘆にわななく創の額半分にも及び、耀(かがや)いた。


「式は先輩のことを調べました。狙われる理由が、敵と同じようにわかってないと守れませんからね」


 証拠がなく手詰まりになり、途中で切り上げることになったのは却って幸運だった。


「まさか……『これ』なの? 私が、あの人にワルもんって呼ばれた()()って」


 ショックを受ける創には気の毒だが。恵まれたからには、式は運に応えねばならない。


「ええ。三上先輩、どうやらあなたは……どこぞで、食べてしまったみたいです」


『人魚の肉』を。

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