十六.五話 知らない少女
「はひぃ、はひぃ……」
豚のような丸々とした貴族の男は土の地面を走っていた。こっそり作っていた隠し通路の中に豚によく似た声が響く。
貴族の男は自分が大好きであったが、流石にこの時ばかりは自分の耳を疑う。わたしの声はこんな阿呆のようであろうか?
走ることを知らなかった脚でのろのろと走り続け、やっとのことで男は出口を確認する。
「はひぃ、はひぃ、ぶへっ、ざ、ざまぁみろ! わたしは、帝国の、幹部候補! そう、そうやすやすと殺られるものですかあああぁーーぁっ?」
出口の扉を推し開こうとした男は、開かない扉を前に間抜けな声を出す。男は半狂乱状態になりながら、その肉体を何度も扉にぶつける。
「くそっ! くそっ! なぜだ! なぜ開かん! 錆びない魔法の扉だぞ!」
「ーー簡単よ」
突然、誰もいないはずの通路に聞きなれない女の声が響いた。
男は目を向いて扉から離れる。
「だ、誰だ?! 出てこい!」
そう叫んだ瞬間、男の真下の地面が鋭利な槍の形になって男の体を股から串刺しにした。
男は悲鳴もなく絶命する。
「……ふぅ、お仕事終了」
少女は、ちょうど男のいた位置の一歩前。その地面の中から姿を現した。
少女は可憐な淡い桃色の髪をツインテールにして、誰もが美人だと認めるほどの美貌を持っている。釣り気味の目の藍色の瞳は男のどす黒い赤い血を見て。
「うぇ、汚なっ」
そう言って、男の周囲の土を操り、雑な墓を作る。
「さてと、フェリ様に褒めてもらおっ♪」
恩恵者『アースマスター』




