プロローグ
お手にとっていただきありがとうございます。始めてプロットというものを作って書きました。お付き合いいただけると幸いです。
死にたくないと、それだけを考えて生きてきた。
母は僕を置いて消えた。父は根っこから腐っていた。それは父という肩書きのオスの化け物でしかなかった。だから僕はその化け物を男と呼んでいる。
この世界では自分は救われることはないのだということも、小学一年生ながらに感じていた。けれども小学一年生というのは肩書きだけで、行けたことも行こうとしたこともなかったわけだが。
男は僕にありとあらゆる虐待を行った。暴力はもちろんのこと、右腕にわけのわからないものを注射器で注入されたり、やけどを負わせられたりで、僕の右腕は真っ黒な痣で染まっている。
働きもしない、遊びだけを生きがいとした男に、抱く感情は無かった。
ただ、男がパチンコへと出かける時、家に残されるその時だけは自分の世界を守ることができた。母に一切の興味がない男は、母の書物をそのままにしているのだ。
その本をありったけの集中で一気に読むのが何よりも楽しかった。
男にどなられ、殴られ、出かけるのを音で感じ、母の部屋に籠もり、書物をあさり、帰ってきた男の玩具になり、気絶するか泥のように眠る。
母の部屋の書物を全て読み終えてから三年。世間体的に言えば高校一年生になったある日、男が僕を外へと連れ出した。みすぼらしい服装で、僕は久しぶりの外に感動を覚えた。横断歩道の先にいる人の群れは、新鮮さにあふれていた。
その人の群れに、僕の体は吸い寄せられていた。
いいや、そうじゃない。
男は、僕を突き飛ばした。
いつも楽しそうな笑顔をする男の顔を見て、僕は隣から襲ってくるブレーキの音を心地よく感じていた。
最後までお読みいただきありがとうございました。今回は前作とは変わって落ち着いたテンションで行かせていただきます。次回もよろしくお願いします。