〜出逢い編〜
私とあなたとの出会いって、突然だった……。
甲野先生、覚えてる?私、あなたと出会ってなかったら、両親に勧められてた人と結婚してたかも……。
「ほら、ローズ!甲野先生が呼んでるぞ〜!」
「え〜!今、忙しいの!」
「行ってあげなさいよ!」
「しょうがないなぁ……」チェリーがそう言ってなかったら、私は学院長と仕事してたかも…。
「で?甲野先生は私をとこに呼び出してるの?」
そう聞くと、チェリーが笑っている。
「ちょっと、何か企んでるでしょ?ひょっとして、甲野先生が私について何か言ってるとか?」
「さぁ〜。それはどうでしょう?とりあえず、屋上に来てくれ、だってサ」
私は、屋上に行き、甲野先生を捜す。
(……いないじゃない!ったく、忙しいのに……)
「誰かをお捜しですか?そこのお嬢様?」
背後で声がする。振り向くと、甲野先生がそこに立っていた。
甲野雪彦先生は、聖マリア.クルーズ女学院の美術科教員で、日本人なのに、周りでは
「英国紳士」なんて、呼ばれてる。歳はちょうど、45歳。美術の先生にあるような、美しい物が大好きな、気のいいおじ様的な人。
「仕事中、呼び出して悪かったな。」
「……いえ、別に…。」
(何を考えてるのかなぁ……?)
「単刀直入で、すまない。お前さんが好きだ……もちろん、この歳だ。無理とわかっている。だが、私は本気だ…。」
いきなり、
「好き」って言われても私は、どう応えていいか正直、戸惑った。
「甲野先生、いきなり『好き』って言われても困ります。少し、時間をください」
「そんな時間、与えると思うか?」
そう言って、甲野先生は私を抱き寄せて言った。
「愛していいなら、時間なんていらない。」
そう言って、私にキスをする。体が甘く痺れ、力が抜けていく。甲野先生は、体をそっと離すとこう言った。
「私が、怖いか?」
「………」
初めてのキスだったせいか、言葉がでなかった。甲野先生は、私に囁く。
「あとで、私の部屋に来てくれ」
「…はい…」
その夜、私は甲野先生の部屋に向かった。私達の学校は、全寮制だが、教員と一緒に卒業までいれるシステムになっている。甲野先生の部屋は、教員寮の2階の奥。
「甲野先生?私です……。ローズです……」
「鍵なら開いてる。入ってくれ」
思ったより広い部屋。ニスの匂いが鼻をつく。
「すまない。こんな、せまっくるしい部屋で。散らかってるだろう?」
「いえ、そんなに狭くは感じません。でも、なぜ私を部屋に?」
「ここじゃあ、なんだ。付いてきてくれ」
そう言って、甲野先生は私を別の部屋に連れて行く。
「甲野先生?さっきの部屋は?」
「私の仕事部屋だ」
甲野先生は、仕事部屋から普段使っている部屋に連れて行った。仕事部屋より広い部屋。窓が少し開いている。甘い薔薇の香水のような、匂いがする。甲野先生は、私を抱き寄せるとそのまま、ベッドに倒す。
「こ、甲野先生?」
「『愛してる』と言ったろう?」
そう言って、私にキスをする。
(…ダメ、力が入らない…)
「初めてだから、どうしていいかわからない。だが、優しくすることはできる。いいか?ローズ?お前さんが、言ってくれないとお前さんのような乙女を抱くことができない」
「好きです……。甲野先生、好きです」
そう言って、私にキスしながら服を脱がす。
「んっ……」
目を閉じていても、甲野先生の存在を感じる。大きな手が私の胸に触れる。体を離そうとすると、力が抜けて、甲野先生に抵抗ができない。
「ローズ……」
「あっ……」
耳元で囁かれ、乳房を口に含まれてそのまま、意識が飛びそうだった。
「あ……ん」
(これが、甲野雪彦先生なの?)大人の力にかなうわけがなく、ただ、快楽に身を委ねるしかなかった。
「すまない。ローズ…これ以上いくと、歯止めが利かない。それでもいいか?」
「歯止めが利かないなら、いいです」
そして、甲野先生はキスをする。それは、どこまでも、甘かった。
次の日、この日は少し、肌寒かった。
「もう冬かぁ〜……」
チェリーが、半袖の制服の上から、寒そうに腕をさすった。
「冬って言ってたって、まだまだ先の話でしょう?」
「そうだけどさぁ〜…」
「寒がり」
「もうすぐ冬だから、遊びに行きたい?」
甲野先生は、美術の成績をつけながら言った。
「ほら、私って行動的なイメージないてしょ?だから、遊びに行きたいなぁ〜…なんて」
「……少し、考えさせてくれないか?」
(……そうよね。一応、教員ですもの)
「あっあのね、別に無理しなくても……」
「……うん、空いてる」
「えっ?」
「だから、暇ってことだ。だから、どこ行きたい?」私は少し考える。
「……あなたの行きたい所なら、どこでも」
甲野先生は、笑いながら
「おいおい、お前さんが言い出したんだろう?」 「まぁ、そうだけどさ…」」
甲野先生は私を抱き寄せて囁く。
「なら、お前さんを好きにしていいんだな?」
「……そっそんなこと、言ってないでしょ!あっ……」
「そうか?そんなこと言ったような気がするがな」
甲野先生は私にキスをして、囁く。
「可愛いんだな。お前さんは」
「そっその手には、乗らないわよ!」
甲野先生は、私を押し倒した。キスはどんどん激しさを増した。舌が絡み、下着に手を掛ける。キスだけで力が抜けて、快楽の底に落とされてしまう。「今夜は、最後までやってしまおうかなぁ?」
ドキッとするほど、甘い声で囁く。
(……もしかして、本気?)
「大丈夫だ。優しくする。安心しなさい」
そう言ってキスすると、脚に手を伸ばす。脚を触られると、肌がそれだけで敏感に反応する。
「んっ……!」
私の中に、甲野先生の指が入る。太くて、少し、ゴツゴツした節くれだったような指。粘膜が指に絡み、体が熱くなった。(ヤダ……こんなに濡れてる)
少しでも理性を保とうするが、甲野先生の手つきで理性が飛びそうだった。「ダメだな〜。こんなに濡らしてしまうなんて」 「そっそんなこと言ったって……あっ!」
「すまない。痛いか?」
「大丈夫……。大丈夫だから……」
「そう言って、本当は痛いんじゃないの?お嬢様?」
甲野先生はそう言って、そっと、脚から秘部へと、舌を這わせる。
「ローズ、もう限界だ。そろそろ、入れてもいいか?」
「……せっ先生もう欲しい……」
自分でもとんでもないことを口走る。甲野先生は、
「痛いと思いますが、我慢してくださいませ。お嬢様?」そう言って、私の中に甲野先生の指と比べ物にならない質量が入る。その大きさに、私は息を呑んだ。
「…まずいな〜…。全部入った。力を抜いてくれ、よけい痛い思いするぞ?」
「…むっ無理。んっ……あっ!」
「動くぞ?」
そう言って、私の上で動く。圧倒的な大きさなだけに、息もつけない。甲野先生の顔は、少し歪んでいる。
「くっ、かなり締め付けてるなぁ〜……。力を抜いてくれ、少しでいいから。なっ?」
「あっ……あん!あっはっ!」
「なんなら、騎乗したっていいんだよ?」
「へっ変態!」
甲野先生は、私の上に覆い被さり、口元を少し歪めて笑った。妙に、色気を感じた。
(……ダメ、もういきそう……)
ゆっくりした動きだが、それだけでもすぐ、いきそうだった。
「…すまない。ローズ、もう私も限界だよ…。そろそろ、中に出してもいいか?」
そろそろ、先生も限界に近づいてるらしい。たぶん、先に昇天してしまいそうな気がする。
「だっダメよ…!!一緒にイッチャおうよ……」
また、とんでもないことを口走る。
「言ったね?」
そう言って、キスしながらゆっくりと腰を動かす。先に昇天したのは、私だった。
「あっはっ……あん!」
気がついたら、私は眠っていた。隣にいるはずの先生がいない。甲野先生は、窓際に立っていた。パイプをくゆらせながら。その後ろ姿がお父さんみたいだった。
「甲野先生?」
「あれ、起こしてしまったか?すまないなぁ〜。起こしてしまって」
「別に、いいのに。疲れていただけ。だって、あんなに激しいなんて思ってなかった私がいけないの」
「ローズ、ちょっと来てくれ」
「?」
甲野先生は、私を呼んだ。何だろう?
「目を閉じて」
私が目を閉じると、耳元で囁いた。
「もう、いいよ」
目を開けると、窓の外は雪が降っていた。
「これを見せてやりたかったのさ」
外は何もかも、白かった。
「甲野先生、こんな私が恋人でいいの?」
抱き寄せて囁く。
「当たり前なことを言うな。別に、いいんだよ?嫌なら、私と縁を切ったっていいんだよ?」
「そんなこと、できない。私は、あなたの側にいれるだけでいいの。それだけで、私は幸せなんですから」
「えっー!!ローズって、もう甲野先生とやちゃったの!?」
「声が大きい。誰かに聴かれてたら、どうするの?」
ここは、聖マリア.クルーズ女学院の中庭。私とチェリーはよく昼休み中に、話している。なぜか、私達以外の人は、ここには来ない。いつも、アフタヌーンティーを飲みながらチェリーと話す。
「で?どうだった?初体験は?」
「あんたって、本当、甲野先生と同じ。変態ね?」
「ぶ〜……。ただ単に知りたいだけなのにぃぃ……」
「それが変態だって言ってるの!」
チェリー・クラウド=キャンベルは、私の大親友でなんでも、話せるたった一人の人間だが、度を越すと、私はかなり突っ込む。でも、ケンカをしている訳ではない。コミュニケーションだ。
ある日、甲野先生は出張で彼の母国、日本に一時帰国という形でヨーロッパの美術品の美しさについて講演会を行いに行った。
「大丈夫だ。どうせ、4泊5日の一時帰国だ。心配しないでくれ。安心しなさい」
「だけど……」
私が不安そうに言うと、彼は私の肩に手を置いて言った。「『安心しろ』って、何度も言ってるだろ?大丈夫。講演会が終わったら、すぐ戻ってくる」
「……本当ね?」
彼は私を強く抱き締めて言った。
「本当は私だって、お前さんを連れて行きたいよ…。日本の美しさがどんなものか、見せてやりたいよ……」
「いつか、連れて行って。日本に」
「約束する」
そう言って、彼は私にキスした。もう、永遠に会えないとでも言うように。
「ありゃあ〜甲野先生が出張しちゃってるのか〜…」
「…講演会を兼ねての一時帰国だって。1泊2日もできないハードスケジュールだって」
「『心配しないでくれ、私はすぐ戻ってくる』とでも言われたんでしょう!羨ましいな〜恋人がいる人って…」
「何?皮肉言ってるの?あんただって、ちゃんといるじゃない。アルベルトが」
チェリーの恋人、アルベルト・ライプニッツは、隣の男子学院の生徒。
実は、聖マリア.クルーズ女学院と聖サニー.ロック男子学院は、渡り廊下で繋がっていて、行事事などを一緒に行う事が多い。そのため、カップルが多いのだ。甲野先生は、男子学院の美術科教員だが、女学院で授業をするのも少なくない。だが、保健室はひとつしかないため怪我人もとても多い。女学院と男子学院、それぞれの学院長は市に知って掛け合ってるらしいが、ロンドンの市議会議員は、
「建設費用は、これ以上出せない」
との事。保健室はそこそこ広いし、ベッド数もあるにはあるが、体育祭での怪我人が多く、ベッドが満床になってしまうそうだ。
「保健室のマドンナ」と呼ばれている、メアリー・シックネス先生は、
「私1人で大丈夫。怪我人が出ないことが私の願いだけどね」
なんて、言っている。私はごくたまにしか保健室を使ったことがない。だが、ほとんどの生徒の中で男子学院の生徒が利用者数が多い、とメアリー先生は愚痴をこぼしている。
そんなある日、甲野先生が日本から帰国して来た。講演会の主な会場は、芸術大学だったらしい。
「真剣に聞いていた」
彼は帰国早々言っていた。
「先生?疲れてない?もし、疲れているなら早めに休んだらどう?」
甲野先生は、何も言わず窓の外をじっと、見つめていた。
「甲野先生?どうしたの?」
「……いや、なんでもない。お前さんの言うように、早めに休んだほうがいいか考えてたんだ。帰国して来たばかりだからな」
そう言って、私をベッドに押し倒した。
「ちょっと!離してよ……あん!」
「すまない。今日は、歯止めが利きそうにない。しばらく、お前さんを見てないからなぁ」
「でっでも、私まだ授業があるの!お願いだから、離してよ……。あとで、出来るんだから、ね?先生?」
「今じゃなきゃ、ダメなんだ。頼む」
なんだか、今日の甲野先生は様子がおかしい。日本で何かあったのだろうか?
「……だっ、大事な授業なの……お願いだから、離してよ……」
「片桐先生には、私から言っておく」
そう言って、いつもより激しいキスをする。私は、呼吸が出来ない。息を吸うために唇が離れた瞬間、私は甲野先生から自力で離れた。
「いったい、どうしたのよ!?」
「……すまないが、今は言えない」
「学院長に何か言われたの?」
「………」
「答えて!」
「…学院長に何かを言われた訳じゃない。私自身の問題なんだ」
「……どういうこと?私には、理解出来ない」
「……ただ単に、お前さんが恋しかっただけさ。心配しないでくれ。ただし、歯止めが利かないのは、本当だ」
「でっでも、私まだ授業があるし……」
「たまには、ズル休みしたらどうだ?片桐先生には、『風邪気味』とでも言っておく」
甲野先生にしては、珍しい発言だった。今日は、本当に歯止めが利かないらしい。私をもう一度押し倒し、さっきより激しくはないが、甘いキスをした。脚に手を伸ばし、下着に手を掛けた。すでにそこは濡れていた。
「おいおい、キスだけでこんなに濡れているのか?指が奥まで入ったぞ?」
「……だって、先生がいきなりキスして来たから……あん!」
「ほう、ここ感じるのか?」
そんなことを聞かれると、体が熱くなった。
「……変なこと聞かないで!……んっ」
キスをしながら指を奥まで入れる。
(……ダメ…もう限界……)
これ以上、指を入れられたら理性が飛びそうだった。
「……イクのか?」「………もう限界………」私がそう言うと、甲野先生が妖しい目つきで私を見つめた。
「…まだまだ、子供だな。体が大人でも、心はまだまだお子様だな」
そう言って、私の中に入ってきた。制服のスカートが、濡れてもしょうがなかった。
(……どうしよう、このまま、イッテも、いいのな〜?)
「……ダメだ、ローズ。私も限界だ。中に出すぞ?」
何回か動いたあと、先生が顔を歪めた。私は、そのまま昇天した。
気が付いたら、夜だった。私も甲野先生も寝てしまったらしく、来訪者が来たことに気がつかなかった。
ある日の早朝、甲野先生がいなかった。
(もう職員室に行ったのかしら?)
サイドボードを見ると、メモ用紙に書かれた手紙が置いてあった。
『おはようさん。あまりにもお前さんが気持ち良く寝ていたので、そのまま職員室に行きます。今日は、土曜日だ。ゆっくり休みなさい。何か用があるなら、職員室に来なさい』
見慣れた彼の少し斜めった字。そういえば、今日は土曜日だ。甲野先生の言うように、ゆっくり休もう。
コンコン
誰かが扉を叩いた。こんな時間に誰だろうか?
「開いてますよ。入ってきてください」
入ってきた人物に、私は驚愕した。
「片桐先生!どうしたんですか?こんな時間に?」
「ローズさん、少しお話してよろしいでしょうか?」
「なんでしょうか?」
片桐先生は、後ろ手に扉を閉めた。
「あなたに、恋人がいることは知っています。そんなあなたに言うのもどうしようか迷ったんですが……。区切りをつけたくて、今はっきり言います。あなたが好きです。苦しいくらいです」
「……ごめんなさい。片桐先生。私には、甲野先生が……」
「知っています。甲野先生がどれだけあなたを愛しているのかも。ですが、僕にはあなたしか見えないんです!」
片桐先生は、いつもと少し違った。目つきは、男が女を見るときの目つきだった。
「…ローズさんお願いします!僕とお付き合いさせてください!」
「……ごめんなさい。あなたとは、お付き合いできません。自分の恋人で十分です」その一言が、片桐先生に大きな衝撃を与えたようだ。
「片桐先生、本当にごめんなさい。私には、甲野先生しか見えてないのかもしれないです……」
「……そうですか、僕は、何を考えてたんだ?恋人がいる人に知って告白するなんて……」
「片桐先生には、素敵な人がいるじゃないですか」「?」
私はクスクス笑った。
「保健室のメアリー先生ですよ!」
「……でっでも、メアリー先生には、旦那さんがいるって……」
(まさか、あの噂を本気にしてたんだ……)
『あの噂』と言うのは、
「メアリー先生には旦那さんがいる説」のことだ。ほとんどの生徒がこの噂を本気にしている。まさか、片桐先生も本気にしていたとは……。(…まぁ、おもしろいから、いいか)
私は、そう思うことにした。
次の日、甲野先生が遊びに行くと言って、私を誘った。
「どこに連れていってくれるの?」
朝から尋ねているが、さっきからずっと黙っている。口元には、少し笑顔が浮かんでいる。よほど、楽しい所なのだろう。
「ローズ。目を閉じて」
私が目を閉じると、
「そのまま、前に進んで」言われた通りにすると、
「そこで、止まって」
「甲野先生?いったい、どこに連れていってくれるの……?」
「目を開けて」
目を開けると、目の前は遊園地。
「ここに来たかったんだろ?」
「どういうこと?なんで、行きたかったとこ先生が知ってるの?」
「内緒」
そう言って、私をエスコートをするかのように腕を差し出す。
「さぁ、参りましょうか?お嬢様?」
「はい!」
何年ぶりだろうか?遊園地に来たのは。たぶん、ずっと昔だろうか?
両親が、若いときだった。
(懐かしい……)
昔の思い出が甦った感じがした。
「なんだ、泣くほど嬉しいか?」
「そうね……」
甲野先生は、私にキスをすると、
「喜んでくれて、私は光栄にございます。お嬢様」
「大袈裟ね、さっきから」
「これくらいが私にはちょうどいいくらいだ」
学院に戻って来ると、甲野先生は遊園地で買ったウサギの耳のカチューシャを着けてくれ、と私に頼んだ。
「何故?」
「ローズに着けてほしいからっていうのと、可愛いから」
仕方なくカチューシャを着けると、
「こっち来て」
「?」
そして、そのまま私を押し倒した。
「ちょっと何よ!?」
甲野先生は私にキスをすると、
「そんな風に顔を赤らめるローズ、可愛い」「…変態」
「…当たり前のことを言うな」
そのまま、甲野先生は私の下着に手をかけ、
「お前さんだって、欲しがってるじゃないか」
「やっ…………ちょ………ダメだって……んっ‥」
「もうここが濡れてる。つまり、もう私が欲しいのか?」
「そんなこと……言ってない……あっだめ……」
「まだ、イカせない。イクのはその後」
そう言って、甲野先生は指を二本に増やし、私の中を弄る。
「もう、奥まで入った。どこが一番感じる?」
私は、気持ちよすぎて声が出ない。
「もう、入れていいか?」
「……早く……入れて」
そう言うと、彼が私の中に入ってくる。
(……ダメ……もうイクかも……)「……まだ、ちょっと力が入ってるんじゃないか?」
私は、これ以上にはない快楽を味わった。低くて、甘い声で囁かれると、鼓膜が甘く震える。優しい手付きで胸を弄られると、快楽の底に落とされる。手付き、声、息遣い、そのすべてを残さず拾いとり快楽に変えてしまう。ちょうど、絶頂に達したときだった。
「……すまない、ローズ。しばらく、このままでいていいか?」
私は何も言わずに頷く。私は少しずつ理性を取り戻し、甲野先生に話しかける。
「……先生?」
「?」「……結局、お風呂には入ってないね……」
「どうして?」
「……なんとなく」
「…誘ってるのか?」
突然そんなことを聞かれると、体が熱くなる。
「……!?そんなことしてないって!」
「…欲しがってるくせに」そう言うと、繋がった部分を軽く揺すった。
「………あっ……!!」
「……可愛い声が出るじゃないか」
耳元で彼が囁く。
「……変態」
「…だからって、止めることはないからな」
そう言って、ゆっくりと腰を動かした。
「………!?あっ………!だからって、そんな奥まで入れないで……」
少しかすれ声で甲野先生は耳元でクスクス笑った。
「……!?」
「……感じるのか?」
そう言うと、私にキスをした。甘い甘いキスだった。
翌月の最初の週、甲野先生は私を連れて、美術館巡りをしようと言って、学院の連休を使ってフランスへ連れて行ってくれた。
「ルーブル美術館は、全部の作品を見るのに5ヶ月かかるそうだ。だから、フランスの人々は何を見るのを決めてからここへ足を運ぶそうだ」
私は、フランスに来るのがこれが最初だったがルーブル美術館のことはある程度知っていた。だが、甲野先生の口からルーブル美術館について改めて聞かされると、いろいろと新しく知ることがたくさんあった。
「……そんなにかかるんだぁ……」
「一度でいいから、お前さんを連れて行ってやりたかったのさ」
その後、私達は館内を巡り、あの有名な名画、
「モナリザの微笑み」を2人で見た。謎に満ち溢れた微笑みは、私の心を見透かしているかのようだった。
「ローズ、今度はイタリアに行こうか」
「決めるの早過ぎ」
とにかく、フランスの冬は寒過ぎる。防寒対策したって、寒さは身にしみる。
「大丈夫か?ローズ?寒くないか?」
「…少し、寒いかなぁ〜?」
私がそう言うと、甲野先生が背後から抱きついた。
「…あったかい?」
「うん……あったかい」
「ホテルは予約した。今から、行く?」
甲野先生がそう言うときは、私を抱き締めようとする。
「行く!だって、寒いもん」
ホテルの部屋は、最上階の一番端っこの部屋。着いてすぐに、甲野先生は、キスをする。
「…限界だよ」
耳元で囁く。ベッドに押し倒すと、深く舌を入れる。体が痺れて、力が抜ける。
(…ダメ……キスだけで、力が、抜ける……)
「…もしかして、もう限界?」
いたずらっぽく笑う先生の目元が色っぽく、妖艶だった。「……!?まっ、まさか!そんな事、ないですよ……」
「お前さんが敬語のときは、限界の証拠」
私は、顔が赤くなるのを感じた。甲野先生は、私にキスして、
「…限界なのは、私も同じ」
「だ、ダメ!」
「?」
私は、先生に抱かれるのを拒んだ。
「どうして?こんなに、濡れてるのに?」
「……もう、終わりにして欲しいの」
「!?な、何故!?何故急にそんな事言い出すんだ!?」
「お母さんが言ってたの。『甲野雪彦は、女を弄ぶ、最低な男だ』って……」
「マリアナが……!」
「だから、別れて欲しいの」
甲野先生は、私の嘘に騙されたようだった。
(…簡単に騙されるなんて……)
「ローズ、嘘だろう?エイプリルフールじゃないぞ?」
「……本当に私がそう言うと思った?」
この一言に、彼はほっとしたようだった。口元に寂しい微笑みを浮かべながら……。
「…もしもし?お母さん?私よ、そう、ローズよ……娘の声も忘れたの?どうしたの?お父さんが、お父さんがどうしたの?」
『……驚かないで聞いておくれ、ロッドは、お父さんは、山の中で遭難死したんだよ?』
―遭難死――――
一番聞きたくない、お父さんのこと――。
私の父、ロッド・アレンジは、山岳民族について研究する国立大の教授だった。連休を利用して、研究室の人達と、アジアの山岳民族の研究をする為に、世界最高峰のエベレストの麓に住む民族の集落に行っていた。
――まさか、本当に死ぬとは、思ってなかった。『…お葬式、なんだけど……ローズ、来れるかい?』
「…………お母さん、考えさせて」『そうだね。いきなり来い、って言われても困るよね』
「…考えさせてね」
「どうした?」
「………お父さんが、遭難死したの……」
「ジェットが……遭難死?」
甲野先生は、そういって、私を抱き締めた。
「ジェットの忘れ形見が、お前さんだったとは……」
「どうして、お父さんのこと知ってるの?」
「そりゃあ、ジェットと私は同級生だからさ」
そういえば、お父さんと甲野先生は同級生だと聞いたことがある。もし、甲野先生が私のお父さんだったら?
そんなの、考えただけでも、おかしなこと。
あなたが望むなら、私はあなたのものになってあげる………。
そう、言いたかった。けど、言えない。重い沈黙に耐えきれず、甲野先生が口を開いた。
「最後の別れだ。ジェットに挨拶くらい行って来たらどうだ?」
「嫌!」
甲野先生は、驚いて私を見る。
「何故?何故、そうやって行くのを拒む?」
「本当のお父さんじゃないから、って言ったほうがいいかしら?」
「………!?」
確かに、ジェット・アレンジは本当のお父さんじゃない。実際、私のお父さんがいないってことを聞いたのは、私がこの学校に入学する、少し前のことだった。
突然の出逢い、突然の別れ。私達の仲が引き裂かれようとするとき、あなたはどうしますか?