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監獄の少年

目が覚めたら、うす暗い石造りの部屋にいた。


汚れた、殺風景で、少し寒い部屋。

視線の位置的に…立っている?寝ぼけているのか体の感覚が確かでない。

それよりも気になったのは、目の前の鉄格子だった。


もしかして…牢屋?状況を確かめないと。


そう思い、体を動かそうとしてみたら、どうやら自分が拘束されているらしいことに気づいた。やはり、牢に閉じ込められているみたいだ。


そこまで分かると浮かぶ疑問はただ一つ。なぜ?


「---」


ーー誰か。そう言ったつもりが、喉がかすれた音を漏らすだけで、声にはならなかった。呑み込むつばもない。唇の上で舌を滑らすと、がさがさとした感触が感じられ、次に唇にピリピリとした痛みがはしった。


ふむ。


やはり、自分がなぜこのようなところにぶち込まれているのか、解せない。必死に考えたところで、悪いことをした覚えはないのだから、考えはぐるぐると同じところを回るのみだった。


いくらか霞が取れてきた視界。目を凝らして房の外を見ることに集中する。薄暗い中ではよく分からないが、どうやらここには僕が閉じ込められている独房のほかには、何もないようであった。


突然、ざっざっ、という音が聞こえてきた。複数の人間が近づいてくる音だ。こんなに近づくまで足音にすら気づけなかったなんて、相当衰えているらしい自分の体に少々の呆れを感じた。


どんどん近づいてくる足音の主は、三人組の男だった。うち、2人は兵士のような恰好をしており、1人はかなり裕福そうな、貴族のなりをしていた。

3人とも、巨人と呼んでも相違ないほどの大男ばかりで、顔を見ようとすると見上げるような形になった。


一行は僕の独房の前に群がると、中を覗き込んだ。


「***、**、********」


「**、*****、****」


「****、******、*******」


知らない言葉だ。言語は幅広くたしなんでいたつもりだが…遠い異国の言葉だろうか?


2人の兵士の話を聞いていた貴族の男は、満足そうな、意地汚い笑みを浮かべて僕を見た。


「*****、***、*****」


僕の方を指さしながら、男は話した。意味が分からなくてもそれが罵倒だと分かるような、嫌な響きだった。


むっとしてにらんでやると、男は怒ったように顔を赤らめ、何かを怒鳴り散らして去っていった。残った兵士の2人は頭を下げていたが、男が闇の奥へと消えて行くのを確認すると、顔を上げてこちらを見てきた。


1人が懐から鍵を出し、独房を開ける。


出してもらえるのだろうかという希望が一瞬頭をよぎったが、それはもう一人の男が発する威圧的な雰囲気であっけなく否定された。


無理やり後ろを向かされ、壁の方を向かされる。あまりにも強く押されたため、壁に両腕をつき、突っ伏すような格好になる。


何をされるのだろうかーーという疑問は、ヒュッという鋭い音と、すぐ後に背中を襲った激痛によって解決される。僕は、鞭で打たれた。


着ていた粗末な服は、4発目であっけなく破け、僕は生身の背中をさらして鞭に打たれ続けた。


❖❖❖


次に目を覚ましたとき、僕は地面に寝ていた。どうやら、鎖からは解放されたようだ。目の前に、カビだらけのパンと浅い皿に薄く張られた水が置いてあった。


僕はパンをつかみむさぼるように食べ、皿の水を一滴も逃さないように舐めとった。少量ではあったが、腹にモノが入る感覚と、喉が潤う感覚に救われるような思いだった。


鎖から解放されて、ひとつ、気が付いたことがある。


体が()()()いるのだ。それも、拘束されて暴力を振るわれたことによる衰弱、では説明がつかないほど。明らかに、幼い少年の体だった。


食事とも言えないような補給行動を終え、落ち着くと、僕は()()()()みることにした。


「ステータス」


念のため、誰にも聞こえないような小声で唱える。


すると、僕の目の前に薄青色に光る文字が浮かんだ。僕にだけ見えるように、僕の情報が映し出されているのだ。


ーーーーー

名前:アルフレド・ツェーザル・ヴァールブルク

種族:人間

年齢:5

所属:ヴァールブルク帝国

<特殊状態:捕虜>

レベル:1

HP 25/50

MP 120/120


力  F   火 D

体力 F   水 A

耐力 F   風 S

知性 SS   地 D

精神 SS   光 A

速さ F   闇 E

器用 F   空 S

運  F   血 SS

ーーーーー


「アルフレド・ツェーザル・ヴァールブルク…?」


自分のステータスには、見たことのない名前が載っていた。歳も14歳分若返っている。それに、僕はヴァールブルク帝国という国を知らなかった。


「異…世界…転…生……?」


地図を丸暗記している僕は、見たことのない国名に、ある可能性を想起した。



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