表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

一人で推理


翌日、薫から山本家の住所を知らせるメールが来た。

でも、最初に<元の住所>とあり、

「タイへ夫婦で逃げた。海外移住や。一足遅かった。計画的や」

と、続いていた。


「まさかタイまで行けないし。手がかりは消えたな」

と、夜に電話をかけてみた。

「そう言うことや。腹立つ。山本マユに関しての情報は集めてるけど」


薫は、聖に調査しろとは、言わない。

山本夫婦を遠くからでも見て、人殺しかどうかの判断を依頼しただけだ。

自分で調べるつもりなのだろう。


「カオル、この住所調べた。マンションの画像も見た。なんか見覚えがあると思ったら、殺人事件の犯人が住んでいたよな、確か」

聖は、ある考えがあって、言ってみた。


「そう、なんか?(暫く間があいて)ホンマや。双子老婆殺人事件の犯人の……隣の部屋、やんか」

「隣、なんだ。……色々知ってるかも」

「分譲マンションで……年齢的に、同じ小学校に通っていた確率が高いな」

「……そうなんだ」


マユは<やさしいお兄ちゃん>だったと

言っていた。

ヨウムの為に叔母二人殺した男。

男は、山本家とマユの暮らしぶりを知っていたに違いない。

聖は生前のマユと接触の合った人間に会いたかった。

男は堀の中。どうやって合えば良いのか

刑事にでも聞かないと、わからないではないか。


<死者>と認識したくなくて、ずっと知るのを避けて、

生前の事を何も聞きはしなかった。

自分はマユの事を何も知らない。

ソレが今は歯がゆい。


「セイ、なんで、殺人犯が隣に住んでいたと、知っていた?」

刑事は訝る。

想定内だ。

答えは用意してある。

「あの事件、アルビノのヨウムを飼育するのに金が欲しかったんだよ。俺、ヨウムが気になって覚えているんだ。……飼い主が収監されたら、あの鳥はどうなっちゃうのかなって」


「はあー。成る程。……そういう事か。セイの興味は鳥か」

薫は納得した。

「アルビノのヨウム、珍しいんだ。……引き取り手が無いなら、貰いたい」


「……分かった。調べる。そうか。ヨウムの件で面談希望やな。死刑を求刑され、まだ確定されていない。留置所で面会は可能や。本人が拒絶しなければ。隣に住んでたんや。実際の山本家の生活を知っているに違いない。マユと友人やったと言って聞き出してくれるか?……要請してみる。すぐには無理やで」


「……俺、20年前の誘拐事件も興味あるけど。京都の、事件だし」

「あ、セイは京都の大学、行ってたんやった」

「うん。……カオルは現場を調べたのか?」

「いや。京都の事件、それも20年前に、現場は調べ尽くしている。奈良の俺がチョロチョロできない」


「行ってないのか。……彼女の墓には行ってないか?」

「それは行ったよ。T寺に」

 ……T寺、と聖はメモする。

 一番知りたかった情報を得た。


「セイ、20年前、芦川美雪、『雪菜』の母親は、家の前で、娘がマンションの前を通り、本家に行くまで見送ったと証言している。当時3才の子供や。危なくない見通せる道だから、一人で行かせたと。……しかし、実際本家には行っていない。本家は、門に扉はない。母親が家の前から見て、門の中に入ったと思った、そう、言っている。思い違いか、錯覚か、分からない」

 薫は最後に早口で、付け足した。


 20年前、マユ(本当は雪菜)を誘拐したのは山本夫婦の可能性が高い。

 どこで拉致したのか?

 ポイントは限られてくるのではないか?

 母親が、雪菜の姿を目で追い、本家に辿り付いたと、だから姿が消えたと、

 錯覚したとしたら、やはり自宅と本家のマンションの、

 本家に近い場所だ。 


 聖は明日にでも、現地に行こうと。心を決めた。

 ……マユは、今夜も現れない。

 ……自分一人で推理するしか、ないのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ