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マユじゃない

剥製屋事件簿シリーズその九は18禁なので削除か15禁に書き換えか18禁に移動と指示を頂き、その頃多忙で、簡単反応、削除しました。でも、九が欠けるとわかりにくいかも、と思い直し18禁に移動しました。ややこしくて申し分けないです。

応接セットのテーブルの上にコンビニの袋が二つ。

結月薫は一度中に入ったらしい。

おにぎり、唐揚げ、焼き鳥、ビール缶……。

薫はそれらをテーブルに並べながら何度もため息をつく。

「あーあ。一体どういう事や。俺のマユちゃんは、どこに、おるんや」

呟きもする


「で? 一体、どういう事なんだ?」

セイは、一口ビールを飲んでから、まったり聞いた。

必死で<マユ>に無関心を装って。

(絶対、今夜も泊まる気。焦らなくていい。話はゆっくりできる)


「あ、セイ。もしかしたら、近くで白骨遺体が発見されたの、知らん?」

薫はまず、確認した。

昼間作業室に居て、ニュースにも無関心であったなら、

家の近く、僅か800メートル先の騒ぎも知らない可能性が有ると。

「県道通ったとき、パトカー見た。白骨死体の小さな記事も見た覚えはある」

ありのまま答える。

薫に、嘘は付かない。聞かれたことには正直に答えないと後で辻褄が合わなくなったらヤバイ。

薫は矛盾を見逃さない。


「俺が発見者やねん。この前、あの場所を通って、マユちゃんの、衣類の残骸を発見したのがきっかけで、辺りを捜索したんや」

「衣類の残骸?」

分かっているのに質問する。

「ダウンコート。ベージュで小さい薄茶のドット。最後に家を出たときに来ていたコートと同じ柄った」

「……でも、別人だったと、さっき言ってた、よな」

「……うん」


薫は、一気にビールを喉に流し込み、タバコに火付けた。

聖もビールを飲み、焼き鳥をひと口食べる。


「明日ニュースに出ると思うけど、遺体の身元はユキナちゃんと判明した」

「……ユキナちゃん、って?」

 

(何で、ユキナちゃん? て、いうか、誰それ? 違うだろ、ぜったいマユだろ?)

 詰め寄りたい衝動を理性で抑える。


「芦川雪菜ちゃん。有名な未解決事件の被害者や」


「へーっ……そうなんだ」

セイは反射的にスマホで、今聞いた名前を検索していた。

芦川雪菜ちゃん事件

平成○年3月15日

当時3才だった雪菜ちゃんは午後6時頃

自宅から50メートル先の祖父母宅へ行くと一人で出かけた。

1時間後に母親が迎えに行くと、雪菜ちゃんは来ていないという。

母親と祖父母で近所を捜すが見つからない。

一旦自宅に戻ると郵便受けにメモが入っていた。

(ケイサツニデンワスルナ)


父親の帰宅を待って家族で相談し警察に通報。

誘拐事件とみなし捜査するも手がかり無し。

未だ行方不明。


「20年前の京都の事件や」

薫は2つめの缶ビールを開けた。

聖は、この事件はよく覚えていない。


「つまり、20年前に殺された子供の骨も、あったって事?」


偶然、マユの遺体と近い場所に埋められていたのかも、と思った。


「いや、違う。子供の骨じゃ無い。成人女性や」

「……どういう事?」

「遺体は死後5年から2年。ユキナちゃんは誘拐され成人するまで、どこかで生きていた、という事や」

「……?」


マユの遺体だと、思い込んでいただけか?

ああ、でも同じダウンコート。

奇抜なデザインでもないし、偶然だったのか?

いや、同じではなく、似たようなダウンコートだったのかも。

(あーあ。一体どういう事や。俺のマユちゃんは、どこに、おるんや)

聖は、薫が言っていたのと同じ事を思った。


「あ、でも、なんでユキナちゃんだと見当が付いたんだ」

行き倒れの身元不明の遺体が

すぐ20年前の事件に結び付くとは思えない。


「それがな、匿名の電話があったらしい。遺体発見のニュースが出てすぐに」

遺体は芦川雪菜ちゃんだと、男の声で電話があった。

それだけでは悪戯の可能性もある。


「男はな、『本当ならエスカレートでA大に行っていたのに……可哀想な短い人生です』、と電話を切った。ユキナちゃんはA大附属幼稚園の入園が決まっていた。しかしそれは当時大きく報道されていない。その男は誘拐犯かもしれない」


 電話は奈良県の公衆電話からで、付近に防犯カメラは無い。男の特定は難しい。

「ユキナちゃんの母親に報告し、協力を求めDNA鑑定、となった。骨と頭髪で。……鑑定に時間が掛かった」


「成る程。その子は誘拐されて、犯人に成人するまで監禁されてたのか? そして殺された?」

「死因は現段階では不明や」

「ややこしい事件だな」

 聖は、おにぎりに手を伸ばした。

 <事件>に関心は薄い。

 アレがマユの遺体でなかった事が強烈すぎて。

 ではマユの遺体は?

 そればかり考えていた。

 でも、近くで<事件>

 過去の未解決誘拐事件と絡んでいるとなれば、

 マユは興味を示すに違いない。

 マユの推理を聞きたい。

 その為にも、もうすこし情報が欲しい。


「警察に知らせるな、って犯人はメモを郵便受けに入れた。金目当ての誘拐だよな?」

「犯人からの接触を予測して電話を待ったが、無かったんや。誘拐ではなく殺人事件の隠蔽、逃走の時間稼ぎに誘拐を装ったとも考えられた」

「でも、違ってた。誘拐だった。……身代金目当てじゃ無い誘拐?」

「結果的にはそうやな。何はともあれ犯人を捕まえなアカン。被害者の監禁場所の捜査もある。明日発表したらマスコミも大騒ぎやで」

「大変だな。……ご苦労様です。ワイン持ってくる。今夜はゆっくり出来るんだよな」

 聖はワインと

 チーズやサラミも

 薫のために持ってきた。

 日が暮れたばかり。これから先夜は長い。

 シロはまだ外で遊んでいる。


「セイも今夜はゆっくり出来る。明日から大変やで」

 薫はワインを美味そうに飲んで、謎な事をいう。

「へっ?……俺も明日から大変、なのか?」

「そうやろ」

「何で?」

「話、聞いてたんやろ? 誘拐されて20年監禁されていたかもしれない女の子の死体が、すぐそこで、見つかったんやで」

「うん。……それで、何で、俺が大変?」

「監禁場所から逃走し殺されたとしたら、監禁場所は近場と思わんか?」

「………近場?」

「そう。神流剥製工房、だけじゃ無い。長い間、人一人監禁可能な設備を保有する近隣住民は捜査の対象になる。……そこの動物霊園の敷地内も捜索対象範囲。……ドクター師の病院もリスト入り。どっちも今日電話しといた。セイは俺としては直接話したかった」

「………。」

 聖は、

 薫が雑談流れで喋った事が、

 具体的に、自分にどう影響するのか、すぐには分からない。

 考える。

 なんか、意味不明、理不尽。


「あのさ、ここで俺が、ユキナちゃんの監禁は有り得ないだろ? ユキナちゃんが誘拐されたとき、俺も子供じゃん」

 ちょっと考えて、反論した。


「そうや。セイじゃない。……嫌疑が掛かるのは死んだセイのとーちゃんや。この工房には監禁可能な設備があるやろ。父が監禁していたのを息子が引き継いだ可能性はある」


「なんだ、それ」

 薫の言っている事が受け入れられない。

 馬鹿馬鹿しい、

 有り得ないと、ただ繰り返す。


「そんなん、分かってるやん。分かってるけど、セイが調べられるのも分かってるから、前もって知らせに、きたんや」

 

 今はどうにもならない。

 久しぶりに会ったんだし、楽しい話をしよう。

 と言う。


「なあ、あのゲーム、新しいモンスターおらんやん」

 白い歯を見せて無邪気に笑うから、

 聖も釣られて

 それから

 ゲームやら

 アニメやらの話題で

 盛り上がった。


23時にシロが帰って来て

二人の食べ残しを、綺麗に食べて

そのまま聖の足下で眠った。




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