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嫌悪自慢


 2019 7 19


 世の中は多くの人の善意で成り立ってるのはもう常識であろう。そのおかげで安心して生活できるし、自分のような凡人でもいっぱしのゲームクリエイターぶることができる。才能ある人が制作した作品を無償で提供してくれるからだ。 ゲームや小説だってそうだ。無償で提供してくれてるからユーザとして楽しいサブカルライフを満喫できる。が、その善意も身勝手な悪意で簡単に崩壊する。


 かつて世界的な影響力を持つミュージシャンが射殺される事件があった。自分はそのミュージシャンのファンでもないし、一般的な認識しかない。事件についても詳しくはないし、腹立たしいので調べようとも思わない。

 調べるまでもなくその愚かな犯人の動機は大体分かる。分かってしまうのは自分が犯人と大差ないパーソナリティだからだろう。

 

 その犯人には恐らく音楽的な知識や思想といったものは皆無であろう。音楽を理解する感性の持ち主なら見ず知らずのミュージシャンを殺害などできるわけがない。ミュージシャンの作った楽曲など理解できないし、しようともしてなかっただろう。ミュージシャンに対して見ていたのは知名度とか影響力といった、至極目に見えやすいものだけであったはずだ。内面を見ていたとは到底思えない。つまり、影響力なんて持ちたくても持てない、その他大勢。ただ自己顕示欲と自意識だけは人一倍高い凡人なのだろう。もちろん、才能なんかカケラもない。自分と大差ない人間。


 凡人は逆立ちしたって才能を持って生まれた人にはかなわない。誰だって知ってる。死ぬほどの努力でもすればあるいは、とも思えるが、努力が全て報われるわけでもない。そもそも凡人はその努力すらしない。努力すらしないが、陰で努力する人を才能の一言で勝手に妬む。影響力のある人に対し、俺もあんな風になりてぇ〜と、努力もしないのに才能や影響力だけを欲しがる。その気持ちは分からなくもない。


 が、才能なくても努力しなくても、影響力に便乗することはできる。影響力ある人の人生に大きく関わればいいのだ。(と、本人は思っている)


 例えば世界的な影響力あるミュージシャンを殺害すれば、世間は勝手に犯人を過大評価してくれる。(と、本人は思っている) 音楽に深い思想でも持ってると思い込んでもらえる。(と、本人は思っている) 犯人のプロファイルを試みる書籍が出版されるかもしれないし、事件が映画化されるかもしれない。犯人の手記が出版されるかもしれない。何より知名度が一気に上がり、歴史にも名を刻める。(と、本人は思っている) 才能なくても、努力しなくても一足飛びにだ。これほどラクなことはない。才能ある人は神様じゃない。一人のか弱い人間だ。殺害するのに才能も努力もいらない。善意を無視すれば誰でもできる。


 凡人はどうせ努力なんかしたって大した作品は作れない。作ったところで笑われたりディスられたり、相手にもしてもらえない。とても恥ずかしくて辛い思いや挫折を味わうことになるのは分かりきってる。でも、影響力を持つ人を殺害でもすれば、簡単にその影響力に便乗できるのである。(と、本人は思っている)


 もちろん、そこにはミュージシャンの楽曲を待っている、本当に音楽を理解する感性を持つ大勢のファンの気持ちなど関係ない。要は犯人の自意識や自己顕示欲さえ満たされればそれでいいのである。自分が犯人に音楽を理解する感性などないと断じる根拠がこれだ。

 

 影響力があるならミュージシャンでなくても、俳優でも、スポーツ選手でも、作家でも誰でもいいのだ。彼らの才能を世界から奪うことによって、世間の注目をいっときでも集めるのが目的なのだから。

 大勢のファンに喪失感でも与えれば、殺害されたミュージシャンに匹敵する世界的な影響力を凡人でも持つことができるのである。(と、本人は思っている)

 犯人は殺人犯として服役するデメリットと、その中身のない影響力を秤にかけたに過ぎない。

 そんな短絡的で自己中心的な行動をとる奴らのために、尊い才能が無駄に失われる。善意で成り立ってる世界から善意が消え、規制と監視がはびこる世界になる。


 自分自身、こんなこと腹立たしいので語りたくもないし、考えたくもない。なぜならこれこそが、奴らが心の底から渇望してることだから。

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