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失踪自慢 前編


 2019 6 22


 以前ここに「同人作家が結婚とかを機に失踪する常套手段」みたいな辛辣なことを書いたが、その程度ならまだ笑って許せる範囲内と考えを改めたところである。

 むしろ本当にそうなら喜ぶべきことであり、祝福するのがユーザーとしてのあるべき姿だろう。もう作品を見られないという喪失感はあるにしろ。

 別にそれはタテマエでも構わない。スランプに陥ったり、制作に嫌気が差した場合でもいいだろう。それで失踪するなどつい最近までの自分なら許さないところだったが、いつかまたカムバックする可能性もあるわけで、スランプや一時の気の迷いで引退するのもまあアリかなと、考えを改めることにしたのだ。


 これはなにも同人作家に限った話でもあるまい。プロの作家でもそういうことはままあるかもしれない。

 なにしろ昨今のサブカル業界の生き馬の目を抜くような進化のスピードはユーザーでもついて行き難いものがある。作品や同業者は増えているのに受け皿は案外少ない。一人のユーザーがフォローできる作品数も限られるから当然そうなる。

 結果、プロのお仕事とはいえ一点あたりの単価はデフレを起こし、プロといえどバイトでもしなきゃ生活できないってのは自分がハガキ職人だった時代から言われてたことだ。もしかするともっとひどくなってたりして。


 プロの方がむしろブラックな気がする。これが同人作家ならやむにやまれぬ事情も理解せねばなるまい。嫁さんもらって家族養わにゃならんとなればいつまでも同人活動やってるわけにもいくまい。仕事に専念するのが分別ある大人の判断。しかしそれを我々ユーザーに理解してくれって、製作者は言えるか?

 自分だったら多分ムリ。なにも言わずに失踪してさっさと忘れてもらった方が気が楽だ。もちろん、自分はプロでも何でもないので平気で失踪できるのだが。

 いや、だからといって、「実は自分も結婚することになったのでもうやめまーす」なんてしょうもないオチにもってく前振りでは決してない。第一、そんなメデタイ話などない。


 とまれ、その失踪したくなって忘れてもらいたい気持ちも分からなくもないのだが、これはファンの気持ちが理解できない製作者の勝手な思い込みな部分も多分にある。取り残されるファンの喪失感のほどがよく分かってないところがある。


 才能ある人って、存外、自身の才能を過小評価する傾向がある。戦ってるステージがめちゃくちゃ高いのでそうなるのも致し方ないのだろうが、「自分一人いなくなったところで大して誰も困らないじゃなーい」とか、本気で思ってたりするのが困りものだ。待ってるファンとしてはたまったものではない。じゃあ、その埋め合わせは何でやれっていうの? 俺が好きなのはあなたの作品なんですよ? って、若い頃の自分は思ってたし、それは今も変わらない。さっさと忘れるなどとんでもない話なのである。


 プロなんだから、才能あるんだから、それを苦しんでもいいから引きずり出して、たとえ一人しかいなくてもユーザー、ファンがいる限り、その一人に届けろやってのが彼らに求める姿勢だし、それは今後も変えるつもりはない。

 が、それで人生、生活が破綻しては本末転倒である。彼らは神様じゃないし、基本的人権だってある。自分ごとき程度の低いユーザーが無責任な我儘言ったところで製作者の生活を保証できるわけではない。

 だから一方的に引退宣言されても、いきなり姿を消したとしても、そりゃその時は頭にもきたけど、どうにもなんない事情ってのがあったのかもしれないし、それをわざわざ説明する必要もないってのは理解できる。


 が、理解できるからと言って納得できるわけでは決してない。取り残されるユーザーの人権も保証して欲しいのである。いや、ここで人権って言葉は不適切なのだが、他に適当な言葉が思い当たらないのでここでは便宜上、人権としておく。

 つまり、好きな作品がもう見れない! なんて絶望しないよう、最低限のセーフティネットを用意してほしいっていう程度の話だ。


 引退でも失踪でも、とにかく制作はもうやめる、ってときでも、せめてその前段階として「いつか必ず戻ってくるぜ!」と、無責任でも嘘でもいいからユーザーに希望を残しておいてほしいんである。


 ユーザーはその言葉を頼りに頑張れる。薄々嘘だと勘付いていても、いつまでも待ち続けられるのがユーザーなのである。それが才能ある人の、最低限の責務だとも思う。アンタはその才能でもって我々を虜にしたのだから、そのケツを最後まで持てって。

 若い頃はそう考えてたし、今も変わってない。


 が、それすら許されない事情もあるって気付いた時、自分は茫然としてしまう。

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