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私のレベル、高くないですか?

「おおおおお!」というアントンさん達の期待と羨望の声を間近に聞くけど、私の頭の中は「??????」と「?」マークが目まぐるしく回っている。


「ええと、ウィルドさん。質問があります」

 私、プルプルと震えながら挙手。

「なんだ?」

「私、修行らしい修行していないんですが……? なのに、どうしてこんなにレベルが上がってるんでしょうか……?」

「いつもの接客に配膳、それと皿洗いとか荷物運びとか。それにガーディアン漕いで配達なんかが一番レベルアップの要因だしな」

「ガーディアンを漕いだだけで……?」

「メンテナンスも毎日していたし、あとミサト。ミオと面白がって視力治したり、美容関係とかで治癒能力使ってただろう?」

「えへへ」

 私、愛想笑い。


 横でキアラが、

「マジ? 私のそばかすも治せる?」

と目をきらきらさせて尋ねてきた。

「能力の使い方とか考えないで、いつも全開でやるもんだからその効果で体力も力もついてるだろ? しかも治癒以外にもガーディアンにも追加効果が生まれて普通ではあり得ない速さだし、飛ぶだろ? あれ『付与』って言うんだぜ?」


 ――うわあ……


「知りませんでした……というか、知ってるなら力の使い方を教えてほしかったです」

 額を押さえ唸る私。

「そういうのって個人差があってケースバイケースだからなぁ。自分で試行錯誤しながら力の使い方を覚えて行くもんだ」

 ていうか、あんだけ毎回最大限に力使って疲れなかったのか? ってウィルドさんに逆に不思議がられました。

 夕方まで自由時間をくれたのは、そういう意味も含まれていたんだ、とようやく知った私です。

「こ、これじゃあ、ウィルドさんと同じ『底なしの体力』だとおもわれてしまう!」

「いや、たぶん俺だけじゃなくて、まわりのおっさん達みんなそう思ってる」

「もう手遅れなんですね……」

 私涙目。

「まあ、勘はつかめてると思うからすぐに力加減を覚えるだろう」

「……ソウデスネ」


 話の区切りがついた途端、アントンさん達が私に詰め寄ってきた。

「そのガーディアンってなんだ? 飛べるって、もしかしたらユニコーンとか伝説の神獣?」

「俺の家系、将来はげるんだよ! 今からその遺伝子変えてくれない?」

「ソ、ソバカスだけじゃなくて、髪荒れとか肌荒れとかも有効!? お願いできないかな!?」

 詰め寄られて――私は、アントンにガーディアンを紹介しながら将来ハゲを心配するジョンと美容をお願いするキアラの『治癒』を施した。


 そんな私をジッと見つめるウィルドさんが言った。

「またレベルがあがって今、79だぞ、おい――80になったら『力の解放』が発生するからな、身体の変化に気をつけろよ」

「それって何が起きるか分かります?」

「職業レベルチェンジだな。人によるが……『治癒師』から『聖母』とか『賢者』とか『白魔導士』『クレリック』あたりかなあ……」

「やだぁ……、美味しい職業ばっかり……!」

 私、うっとり――して、はた、と気づく。


「……『聖母』? 私、まだ結婚してもないし、子供も産んでませんけど?」

「それは職業名であって、結婚してなくても子供がいなくても関係ない」

「……へぇ……そうなんですか。でも微妙……」

うら若き十代でまだ結婚さえまだな女子が『聖母』と呼ばれるのはなんとしても阻止したい。


「でも楽しみです。あと一上げれば職業レベルチェンジか~」

 うっとりしている私の肩をポン、たたきウィルドさんは、

「落ち着いたところで――今後の計画をたてるぞ」

と引き締まった声で言ってきた。


 ――そうだ、私にはやるべきことがある。


 お店は臨時休業の看板を出し、きっちりと扉や窓を閉めた。


 今、店内にいるのは――

 私

 アントンさん

 ジョンさん

 キアラさん

『若者を支援する会』の

 ウィルドさんと、いつもの常連のおっさん達が三人。


 そして、忘れてはいけないのが――

 ガーディアン!

 の計八人+一台の面子。



「へー、これがガーディアンかぁ」

「おいでおいで。わっ! 来た!」

「可愛いじゃない!」

 アントンさん等健全勇者パーティは、ガーディアンを撫で撫でしている。


 ――いや、もう犬扱いですね。


 そしてガーディアンも、自らハンドルやサドルでスリスリしてます。


 ――いや、君もう犬ですね。


 犬になったり馬になったり鳥になったり忙しい子だわ~なんて思いながら微笑んでいたら、

「はーい、ちゅうもーく!」

 もういいだろう、とウィルドさんが手を叩き、注目させる。


「では、これからやるべきことを整理する」

「はい」


 ①国の危機を救う

 ②腑抜けの勇者とメンバーをぼこる


「大まかにいったらこの2点だが、まず腑抜けヤロウ共に浚われて軟禁中のミオを救うのが優先ではないかと、俺は思う」

 とウィルドさん。私も同意で頷いた。


「ミオ救出と勇者達をぼこるのはセットで良いんじゃないかしら?」

 キアラさんが意見する。

「ミオ救出を優先か勇者達をぼこるのが優先か、かだな」とアントン。

「なら二手に別れるのはどうだ?」とジョンが提案する。

「そっちの方が効率がよさそう」と私、ジョンさんの案に賛成する。

「でも――分け方が難しそうよ? ミサトはミオを助けに行きたいだろうから任せるとして、一人では心配だし」

 そうなんだ。私にはガーディアンがついているけれど、正直不安。

 それで前回、失敗したし。

「そうだな、前回でミオの軟禁場所が変わっている可能性も高い。ミサトとガーディアンでウロウロして捕まってしまったら、人質になってこっちが不利になる」

「それまでに、勇者ぼこり隊が制裁を終えていたらいいんだけどな」なんてジョンさんが言う。


 ――『勇者ぼこり隊』っていいネーミングですね!



 侃々諤々と、話し合った結果――


 アントン達は正面突破で行く。

 同時『若者を支援する会』のおっさん三人は裏から突破。

 私とガーディアン、そしてウィルドさんは空から突破。

 と三方向から城に入ることにした。


「ミサトを含む、ここのメンバー達は随分とレベルが上がっている。城の中にいる奴らが今まで通り、修行しないで好き勝手にやっていたら余裕で勝てる!――だから心配するのは城の兵や騎士達の物理攻撃や魔法使い達の攻撃だ。物理と魔法を掛け合わせの攻撃は特に気をつけろ」

 ウィルドさんの注意にアントンさん達ははっきりと頷く。


「修行した成果、城で惰眠をむさぼっている奴らに見せつけてやりますよ」

「任せて。レベルが上がった私の魔法で蹴散らしてやるわ」

「俺の弓技、見せてやる!」

 ――おおおぅ、アントンさん達カッコいい!

「私も澪ちゃん救出したらすぐ応援に駆けつけますから!」

 ガッツポーズでやる気を見せる。


「俺達も忘れんなよ! おっさんでもやるときゃやるんだぜ!」

 と常連のおっさん達。

 ――正直、このメンバーが一番不安です……




「決行は夕方A4時! 城が夜の支度で忙しい時間帯を狙う!」


 ウィルドさんの一言に皆が、

「おー!!」

と一斉に声を上げた。




 ――いざ、決戦の時!







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