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怒りや憎しみの顔じゃねえbyカイリ

その後、俺様がどうなったかっつうとだな。

まあ生きてる。

生かされたが正しいか。

クソ不死身くんがな、俺様を助けやがった。


馬鹿力を得た俺様の最初の一撃が、地面に穴を開けたよな。

その穴の中に、俺様は引きずりこまれた。

クソ不死身くんの手でな。

だがそれだけじゃ助からねえ。

ガレキがガンガン降り積もり、穴が墓穴になっちまうだけ。


で、クソ不死身くんは、もひとつ手を打った。

穴に入れた俺様の上に覆い被さったんだ。

フタをするみてえにな。

やっぱりお前がタテだったか。


ガレキを受け止める衝撃で、クソ不死身くんの体がガクンガクンと揺れる。

俺様はアタマ打って弱ってたのもあるが、黙ってるしかなかった。

喧嘩の相手に守られたんじゃあな。

俺様の負けだ。

情けねえ。

コンクリをも砕く馬鹿力を、串刺しでも死なねえ不死身が上回りやがった。


廃ビルが完全に崩壊したらしく、ガラガラ鳴ってたのが静かに。

こいつこの後どうすんだろうな。


手足を穴全体に突っ張ってたクソ不死身くんが、姿勢を変えて体を縮める。

おい、随分気張ってるみてえだが。

気張り過ぎてウンコ漏らすなよ。


不死身のフタが緩んで出来た隙間から、いくつかのガレキが穴に落ちてくる。


「ぐぐぐ…うりゃああーっ!」


『ボゴォッ』


縮こまったクソ不死身くんが体を大の字に広げて立ち上がり、

ガレキの天井を一気に押しのけた。

小さな破片が俺様の顔に当たる。

ああ、お日様がだいぶ傾いてら。


クソ不死身くんに腕を引っ張られ、俺様は穴の外に。

俺様の処刑場は見る影もなく、ただのガレキの山になっちまってる。


「生きてるか?カイリ」


「何とかな…」


「いやあ、ビルの解体って大変だな」


クソ不死身くんは、のんきに辺りを眺めてやがる。

服はズタボロだが、本人はピンピンだな。

まだアタマがズキズキするが、手を突いて上半身を起こすくらいは出来る。


「おい、不死身」


「ん?」


「なんで俺様を助けた。

潰し合ってたのによ。

ほっときゃてめぇの勝ちだったろ」


「ああ、それか。

死なれたら喧嘩が終わっちまうだろ?」


クソ不死身くんが身構えた。


「さぁカイリ、続きやろうぜ」


「はぁあああ!?」


自分の大声が傷に響く。

こんだけ暴れといて(俺の馬鹿力のせいでもあるが)まだやる気かよ。

やっぱ、こいつイッちまってるわ。


「どうした?立てよ馬鹿力」


「…もういい。

まいったよ。

俺様の負けだ」


俺様にはもう、こいつをぶっ飛ばす気力も体力もねえ。

プライドもズタボロ。

馬鹿力と不死身の矛盾対決は終わりだ。

こいつのメンタル、どうなってやがんだよ。


「そうか、俺の勝ちか」


「ああ」


「じゃあひとつ良いか?」


クソ不死身くんが人差し指を立てた。


「んだよ」


「最後に一発殴らせろ。

それでこの喧嘩はやめにする」


「ケジメってか…」


負けを認めたからには、惨めに足掻いたりしねえぞ。

俺様は痛む体に喝を入れ、堂々と立ち上がってみせた。


「…来いよ、不死身野郎」


クソ不死身くんは一瞬の溜めの後、ガレキを蹴って俺様に飛びかかる。

その顔は、怒りや憎しみの顔じゃねぇ。

ゲームやって勝った時みてえな、したり顔だった。


「不死身の…勝ちだぁっ!」


『ドガッ』

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