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神様居るんだなあってbyカイリ

この俺、カイリ様にはかつて、一人の親友が居た。


初対面から意気投合。

一緒に笑って泣いて。

喧嘩もしたな。

いっつもつるんでたわ。


なんで過去形になるかっつうとだな、

そいつが引きこもっちまったのよ。


家にも行ったんだがなあ。

親に聞くと、部屋から出たがらないんだと。

で、親友と同じクラスの奴らとっ捕まえて調べたらな。

イジメだよ。


寄ってたかって言いがかり付けて、ハブって。

ゴミ箱に靴捨てて、殴る蹴る。

女子トイレに閉じ込めるだとか。


なんで俺様、気付けなかったんだろうって。

あいつもきっと、俺様に心配かけたり巻き込んだりしたくなくてさ。

分かるけど分かんねえ。

そこは頼って欲しかった。


んで、俺様はイジメの主犯格をとっ捕まえた。

問答無用でボコボコにしてやった。

あいつをイジメた理由、何だったと思う?


誰でも良かった。

憂さ晴らししたかった。

だとよ。


もう、怒りを突き抜けて脱力したわ。

そんな下らねえ理由で俺様の親友が。

引きこもっちまった。


その時俺は思ったんだ。

この世は力が全てなんだ。

イジメは数の暴力。

あいつにだってそれ以上の力があれば、きっとやり返せたろ。


その日以降だな、俺様が力を求めるようになったのは。

俺様は暴れまわり、親友のイジメに関わったクソ共を全員とっちめた。

親友代理の俺様に土下座するまでボコった。

他にも、生意気な奴は片っぱしからこらしめてやった。


いつの間にか、俺様は番長的ポジションに。

それでも親友は出て来てくれねえ。

もう外は安全なんだがな。

俺様はいつ親友が出て来ても良いように、この学校の番長であり続けなきゃならねえ。

誰一人、俺様よりでかいツラはさせねえぞ。

逆らうクソは徹底的に叩き潰す。


そいつが不死身ってんなら、心を折るまでよ。


「不死身と馬鹿ヂカラだったら……どっちが勝つだろうなぁ?」


なあ、クソ不死身くん?


「矛盾…ってやつか」


今更身構えてもよぉ!意味ねぇんだよ!


「おらぁっ!」


俺様の鉄拳でクソがホームラン級にすっ飛び、後ろのコンクリに命中。

クソがずり落ち、壁に出来たへこみを見た時さ。

神様居るんだなあって。


考えてもみろよ。

あいつだけ不死身だなんてよ、マジふざけんなって。

存在自体信じてねーけど、神様クソじゃねーのって思った。

じゃあ俺様にも何かくれよ!

ってな。


そしたらくれた。

俺様に打って付けの、この馬鹿力ヂカラをな。


「なあ、さっき矛盾って言ったよな?お前。

聞こえてっか?」


派手にぶっ飛んだが、自分で不死身っつーくらいだから生きてんだろ。


「どっちがホコでどっちがタテなんだ?」


タテは分かるが、ホコが分かんねえ。


多分武器なんだろうけどよ。


「俺がホコだよな?んでお前がタテだ。

タテって防具だよな?」


クソ不死身くんは座ったままピクリともしねえ。


「お前、何を守ってんだよ?」


俺様は親友を守ってるから、ホコでもありタテでもあるかもな。


「てか、守れんのかよ?」


いつまで死んだふりしてんだよこいつ。


「起きろよ…」


俺は足元の適当な小石を拾い、クソ不死身くんに投げ付けた。

狙いは外れちまったが、小石はクソの頭の横で弾けた。

フルパワーじゃなかったのにこれだよ。

神様グッジョブ。


「お前の言う通りだ」


「あぁ?」


急に喋り出しやがった。


「俺は守れない…守れなかった」


クソ不死身くんはボヤきながら、壁を支えにして立とうとしている。


「あいつを…ヨリコを」


「ヨリコ?」


女の名前か。


「俺は何も出来なかった…」


「おい!てめぇの話聞くために連れて来たんじゃねぇんだよ!」


俺様はクソ不死身くんに近付いた。


「あの時の俺は不死身じゃなかった…」


「るせぇんだよ!」


クソ不死身くんの前髪を掴んで持ち上げる。

へっ、逆らう気力もねえか。


「あの時俺が不死身なら守れたのにな…」


「なぁーにボソボソ呟いてんだよ。誰も聞いてねえっつうの!」


こいつマジでイカれちまったのか?


「なあ、カイリ」


「様を付けやがれ」


「俺を殺してくれ」


は?


「何言ってんだよ。

お前不死身だろ?」


「死にてえんだよ。

俺はヨリコを守れなかった。

だから死にてえんだよ」


不意に、このクソ不死身くんと昔の俺様が重なる。

俺様も出来る事なら守ってやりたかった。

親友のイジメが分かっていれば。

いや、もし分かっていてもあの時の俺様じゃ無理だな。


「殺せよ」


俺様を睨むクソ不死身くんの目はガチだった。


「ぐ…」


「どうした。

お前の筋肉が死ぬか俺が死ぬかだろ。

試すんじゃなかったのかよ」


「もう俺様の勝ちだ。

動けねぇんだろ?」


クソ不死身くんの右手が、俺の左腕を握る。


「動けば良いのか?」


いや、握るだけじゃねえ。

握りつぶそうとして来やがった!


「つぁっ」


なんつー握力だ!

俺様はつい、クソ不死身くんの前髪を離しちまった。

クソ不死身くんは着地し、よろめいている。


「この野郎!」


俺様は仕返しとばかりに、クソ不死身くんを蹴り飛ばした。


『ボゴォン』


これはかなりの力を込めたから、クソ不死身くんはまた壁にめり込む。

前よりも深くな。


ふと視界のはしっこに、鉄の棒が見えた。

思い付いたぜ。

普通じゃ死なない吸血鬼は、串刺しにしてやるのが一番だ。

不死身のこいつも、それで少しは反省すりゃあ良い。


「殺せだと?雑魚がカイリ様に指図してんじゃねーよ!」


俺様は走り、鉄の棒を一本拾い上げた。

片手で握れる太さだが、長さが何メートルもある。

今の俺様にとっては丁度良い重さだ。


「うらぁっ!」


壁に埋まったクソ不死身くん目がけて、鉄の棒をぶん投げた。


「ぐっ」


クソ不死身くんの腹に鉄の棒がぶっ刺さる。

棒の長さからして、いくらか貫通したはず。

そして貫通した分は、壁に刺さったんだろうな。


「そこで大人しくしてろ…」


ちょっと疲れた。

まだこの力に慣れてないからな。

気が済んだ俺様は帰る事にした。


クソ不死身くんはほっとく。

どうせ死なないんだろうが、少しは懲りるだろ。


さ、コンビニで漫画の立ち読みでもすっか。

出口は丁度クソ不死身くんと反対側だ。

俺様は180度ターンした。


「生きてるぞ」


背中から声がして、思わず立ち止まる。


「俺はまだ生きてる」


無視しても良かったんだが、負け扱いされるのは気に食わねえ。


「るっせーな…」


虫の標本みてえな惨めな姿を笑ってやろうと振り向いたが、笑えなかった。

こいつ、先端目指して歩いて来やがんのよ。

当然腹には棒がぶっ刺さったまま。

ゾンビ映画かっての。


「逃げんのか?」


クソ不死身くんが通過した分だけ、棒が血で濡れていく。

ドバドバーって感じじゃねえけど。


「どんだけ不死身だよ、てめぇ」


「次はどうやって殺してくれるんだ?」


「気色悪りぃっ!」


こいつ、もしかしたらマジで死ぬまで追って来るんじゃねえか?

早いとこ折れさせねえと…。

奴はもう、先端付近に迫っていた。


「ビビってんのか?」


「うるせぇ!」


クソ不死身くんの体が棒から解放されると、

腹の穴はすぐに肉で埋まって元通り。

服に開いた穴だけはそのままだった。


「それともチビったか?」


「うるせぇんだよ!」


馬鹿にしやがって。

この一撃でケリを付けてやる!

俺様はありったけの力で、クソ不死身くんをぶん殴った。


不死身っぷりを見せ付けられたせいか、


やり過ぎて殺しちまうかもなんて1ミリぽっちも考えず、フルパワー出しちまった。

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