乗せられやすい僕と、クール時々笑顔な君と。2
前作もありますのでぜひお読みください!
「ごめん! 待った……よね」
なにしてんだ! 初デートで僕が遅れるか普通!?
「1分くらいね。大丈夫よ」
「……ごめん」
もう一度謝ると駒野さんは、にこっと笑った。
……かわいい。
「いいよ、別に。行こ?」
仲のいい人にしか向けられない笑顔が、僕にも向けられるようになって2週間。
かわいい。……じゃなくて!
僕ら……いや、僕には大きな問題があった。
手が繋げない!
どんなタイミングで繋ぐの!? ねぇ教えて!
……だから、キスもしてない。
せっかく初恋が実ったのに……。実ったのに……。
「うわぁ、すごい人混み! 流されちゃいそう。ね?」
……かわいい。「ね?」ってなに反則。
「ホントだ〜。やっぱ日曜日は人が多いんだね」
ん? もしかして今……手を繋ぐチャンス? どう思う、親友よ。『行けるって』か。そうか。
乗せられやすい僕は、架空の答えに乗せられることにした。そうしなきゃ無理だし?
手汗OK。駒野さんの機嫌OK。僕? ……繋ぎたい。
「はぐれないでね?」
ちゃんと笑えてるかな、引き攣ってないかな……。
駒野さんの顔は、かなり赤くなっていた。珍しくてじーっと見てると、見返してきて目が合った。で、慌てて逸らされた。
……かわいい。普段のクールさどこ行ったの?
今日一番の大事件が起こったのは、別れ際だった。かわいさに悶えつつ遊び回って、ほくほく気分で「じゃあね」と言おうとしたとき。
「上田くん」
名前を呼ばれて、視線をやや下に向ける。駒野さんは背伸びをして、それで……。
たぶん今、僕の顔は赤い。さっき慌てて去っていった駒野さんの顔も、赤かったけど。
家に帰ったら、電話してみよう。直接話したいし、次の約束もしたいし。
「さっきはありがとう」って言ったら、どんな反応するかな?
僕は少しニヤつきながら、家路を急いだ。