選定の話
「ふふーん! 結局アタシと組むことになったわね」
何やら得意げに、胸を張って僕にそう言ってくるのは、先ほどのじゃんけんに勝ったマフラだった。
結果として、マフラが僕のペアとなり、こうして隣にいるわけだが……。
「最悪だ……」
「何が最悪よ!」
僕の失言が聞こえていたらしい。しかし最悪なことには変わりない。
だって、僕を犠牲にしようとする人ですよ?
僕はその決まってしまった結果にため息をつき、マフラがそれに対してぷんぷんと怒っている。
しかしそんな僕らの状況とは関係なく、ギッシュさんが一歩前に出る。
ギッシュはギルド内を見渡して、みんながペアを組み終わったことを確認してから、冒険者選定についての詳しい話を始めた。
「それじゃ、決まったようだから話すぜ。……今回、俺のようなランクの高い冒険者が、拠点としている街や村のギルドから『選定の試験官をする』っていうクエストを受けて、こうして冒険者の選定を各地で始めている――」
そうしてまとまらない話をすること数分。
「というわけだが……、ぶっちゃけ俺はやる気がない」
ギッシュはそう話をまとめた。
数分に及んだ話を要約するこうだ。
・最近質の悪い冒険者が増えてきて、彼らがクエストで失敗することなどが多く、ギルドは自らの信頼が落ちてしまうことを懸念していること。
・その問題を解決するために、高ランク冒険者(SからEランクまで存在する中のAランク以上)が実務的な試験を施し、その結果を見て冒険者の資質が欠けているものから、冒険者資格をはく奪すること。
・その際の試験や裁量は全部クエストを受けた冒険者に任せるということ。
以上が大まかではあるが、話の要点である。
そしてもう一つ、
「というかこのクエストはほぼ拒否権がないというか、受けなかったら問答無用で俺らも冒険者資格はく奪されるんだとよ。だからまあ、脅されてしぶしぶ受けたクエストだ。あんまりやる気はねぇよ」
ため息とともにそんな無気力宣言をするギッシュ。
そして「だから」とギッシュは続ける。
「一人ひとり技量を図るとか面倒くさいことはしない。でもギルドにもどんな試験をしたかの報告はしないといけねぇから、ある程度は冒険者らしいことをしてもらう。……そこで俺が考えた試験がこれだ」
そういって腰から抜いた一枚の紙を広げ、ギルド内の冒険者たちに向ける。
「ルーカンスの一本道。ここをペアで攻略してもらう」
ギッシュが持っていたそれは、クエストの依頼書。
もちろん依頼者はギッシュで、受けるのは僕たち冒険者だ。
クエストを受けさせて、それを成功するか否かで選定するということだろう。まさに冒険者らしい選定方法といえる。
「クエスト達成条件は、俺がダンジョン内のどこかに設置した武器の回収。回収した武器はお前たちの達成報酬だ」
そのクエスト達成条件を聞いて、ギルド内が騒がしくなる。
「なんだ思ったより簡単そうだな」
「身構えて損したわ」
「武器の回収くらい余裕余裕!」
みんなが拍子抜けしたように「楽勝」という中、ギッシュが口を開く。
「ああ、ちなみにその武器全部で三十個しかねぇから。……早い者勝ちな?」
この街の冒険者はだいだい百人。
生き残れる冒険者は六十人だけらしい。