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じゃんけん

 マフラと口喧嘩を初めてから、数分後。

 僕は頭に鈍い痛みを感じながら、少し不機嫌に、お互いそっぽを向いていた。


「マフラもシンリもいい加減にしなさい!」


 そんなセイナのお怒りの言葉と共に、軽いゲンコツを受けたのだ。

 ジンジンと痛む頭をさすりながら、ふてくされる僕たち二人に、セイナが呆れ交じりに言う。


「そろそろ周りの人たちもペア組み終わってきているようですし、私たちも早く決めましょう?」


 その言葉に僕もしぶしぶふてくされるのを止め、


「……それで、どうやって決めるの?」

「くじ引き?」

「じゃんけんという選択肢」

 

 僕の問いに、マフラとピニャが提案するが、セイナが首を振る。


「じゃんけんで決めたりしたら、またマフラが『こんなのやり直しよ!』とか言いかねないし、ここはシンリに決めてもらいましょう」

「一番面倒くさい決め方な気が……」と僕。

「私もそこまで子供じみたこと言わないんだけど……」とマフラ。


 マフラと僕がそう反応を返す脇で、ピニャがセイナの言った決め方に肯定の意を示す。


「わたしはいいと思う。……さ、シンリ早く決めて」

「じゃ、じゃんけんでいいんじゃないかな? な?」

 

 僕が初めにピニャが提案したじゃんけんを推薦する。

 しかしピニャは「早く」というようにじーっと、僕の目を見つめる。

 僕はその視線から目をそらし、助けを求めるべく、隣のマフラにアイコンタクトを送る。


 女という生き物は往々にして、自分がいつも一番ではなくては気が済まない生き物だ。(偏見です)

 男に意味もなく、この中で誰が一番? などと劣悪な質問をして、その返答に自分の名前がなければ一方的に怒り出す。(偏見です)

 もちろんそれを好きな人に対してするのならばわかるが、その考えは好きでもない人間にまで及ぶ。(偏見です)

 だからできるだけ女には「この中で誰がいい?」的な質問はさせないようにするのが定石なのだ。

 もしこの場でこの僕が、誰とペアを組みたいかというセイナの問いにどう答えたとしても、結局は誰かが不機嫌になってしまう。

 できることなら今後も波風を立てずに三人と付き合っていきたい僕としては、それは極力避けたいことなのだ。……というか、もし選ばなかったからこの選定で僕が落ちるように邪魔してやるとか、そんなことになったら一大事である。


 だからこそ、僕はまっすぐに「じゃんけんにしようぜ!」という思いを乗せた視線をマフラに送り続ける。

 そしてその視線に気づいたマフラは、なぜかその頬を染める。


「ま、まったく……。シンリったらそんなにアタシのこと見つめて、シンリがそこまで組みたいっていうなら、別にペアを組んであげてもいいのよ?」

「この勘違い野郎が!」

 

 なぜそんなに上から目線な上に、僕の思いとは真逆に勘違いをするのだろうか。


「や、野郎って、アタシ女なんですけど⁈」

「今のは『じゃんけんにしようぜ!』っていう視線だっただろ?」

「どこがよ⁈ 今のタイミングで見つめられたら、アタシと組みたいんだなって思うのが普通でしょ? バカなわけ⁈」


 何を勘違いをしたのか、マフラは自分と組みたいと思われたと思っていたようだ。正直、僕のことをおいしい獲物だと思っていたようなマフラとだけは組みたくないことぐらいわからないのか? と思うが、口に出したらマフラの怒りが爆発するような気がして、僕は口にチャックをした。

 僕は全く使えないマフラから視線を外し、セイナに「やっぱりさ」と提案する。


「じゃんけんで決めよう」


 僕とマフラのやり取りを見ていたためか、セイナは反論することもなく、


「……はい。そうしましょうか……」

 

 少し落胆するようにその提案をのんだのだった。

 ピニャは少し納得がいかないのか、渋る様子を見せたが、結局は、


「……甲斐性なし」

 

 という一言を残し、首を縦に振ったのだった。僕が甲斐性なしとはどういうことなのだろうか……。

 しかし僕は考えるのも面倒くさいと、早くペアを組む作業にうつった。


 それじゃあいくよ。


 ――じゃーんけーんぽーん!


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