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戦闘狂

夢にまで見たドラゴンの背中。

いやそんな夢を描いたことは一度もない。

俺の夢は、卒業で埋め尽くされていたので。

まあ、とにもかくもドラゴンの背中は、最悪だった。

岩のようにゴツゴツしていて、乗り心地は悪いし。上空を飛ぶから寒さも半端ない。

「正道、乗り心地はどうだ?」

「まあまあ。」

「正直な奴だ。」

いや、かなり謙遜してるだろ。

まあまあ所か、最悪なんですが?

「なあ剣豪に会うって言って、都に乗り込んだら騒ぎになるんじゃないのか?」

「構わん。ごちゃごちゃ言ってる幽鬼が居れば、殺せばいい。」

物騒にも程がある。

「それに、戦いが行われるのは、コロッセオだろう。我が行っても問題ないくらいに広い。」

「どんな闘技場だよ・・・。」

「普通の戦いでは、無いからな。剣豪を見たことないだろう?アレの強さは我に匹敵する。」

嫌っていう程見てますよ。

強さはもちろん、あのエロいボディも。

「剣豪が消滅されるかもしれない相手って誰なんだ?」

王族っていうのは聞いていたが、誰かは知らない。

「第一王子のガオだ。まあ、そこそこ強いが我ほどではない。」

「おかしいじゃないか?剣豪が消滅って?」

「剣豪は、力を失っている。」

そういや、俺をここに飛ばした、クソ天使も同じこと言ってたな。

「勝負は五分五分なのか?」

「いや、剣豪が負けるだろうな。」

「・・・。」

「古い知り合いだからな、最後に見届けてやろうと思ってな。」

「そこは、戦いを止めとけよっ!」

「こんな面白いイベントを何故止める?それに我が止めたとしても、止らない。剣豪とはそういう奴だ。」

止らんだろうな・・・アレは。

誰が止めようと。

「お前が止めれるなら、止めてみるがいい。それはそれで面白いからな。」

あれだな。

コイツ、退屈なんだろうな。

幽鬼を襲ってるのも退屈しのぎなんだろう。

とんでもない竜だ。

「下を見てみろ。」

そう言われても、下は見えない。

黒竜がでかすぎる。

端っこの方に行けば見れるが、落ちそうなのでやめた。

こっちは、しがみ付くので精一杯だった。

「幽鬼たちが群れている。」

結構、高いとこ飛んでるはずだが、竜は目もいいんだなあ。

「暇つぶしに、潰していくか?」

「ちょっ、やめとけよ。暇つぶしなんて他にもあるだろ。」

本当、どんでもない竜だ。

「ぶははは。同族でもないのに、おかしい奴だ。」

意思疎通が出来ない、三剣人の世界にでる幽鬼ならいざ知らず、この世界の幽鬼は、いい奴が多い。

というか、人間より幽鬼の方が、よっぽど信用できる。

本当、世知辛い世の中だな・・・。

「都へ着いたぞ」

着いたって言われても見えねえよ。

「降りるのか?」

「いや、コロッセオは、少し外れにあるから、まだだ。」

それから暫くして、黒竜は着陸態勢に入り、コロッセオに着陸した。

黒竜が言うようにコロッセオはとてつもなく巨大だった。外側の観客席に黒竜が降りても、問題ないくらいに。

黒竜を見た幽鬼たちは、黒竜から離れるように逃げて行った。

それにしても、何万人いるんだ・・・幽鬼は。

数十万人、いや数百万人は、収容できる観客席。正直、目がよくないと、戦いなんて見えねえだろ・・・。

黒竜の背中で、そんなことを思ってたのだが、コロッセオの中央に居た人影がこちらに向かってきてたので、俺は姿を隠した。

「久しいな、剣豪。」

「そうだな。」

師匠の声は、黒竜の顔らへんから聞こえた。恐らく浮いているのだろう。魔族だからな。

「それより、正道。いつまで隠れている。」

バレバレだ。

「ど、どうも。」

仕方なく俺は、竜の背中から、ヒョコッと顔を出した。

「こちらに来ていたのも驚きだが、何故、黒竜の背に居る?」

「ドラオの友人らしいですよ。」

「なるほどな。」

「何だ、剣豪。正道の知り合いだったのか?」

「不肖の弟子だ。」

「なんとっ!正道、剣豪の弟子だったのか?それにしては弱すぎる。」

もういいって・・・、聞き飽きてますよ。

「あのう、師匠。一緒に帰りませんか?」

「いいだろう。この戦いが終わるまで待っておけ。」

待てねえから、言ってんだろ。

てか、この人、勝つ気なの?

「消滅したりしません?」

「さあな。相手が強敵なのは間違いない。」

さあな、じゃねえよ。

あんた一人の命じゃないだろ・・・。

三剣人の世界の命運背負ってんだろ。

「そう心配そうな顔をするな。危なくなったらお前が止めてくれ。」

どうせ出来ないと思ってるのだろう。

まあ、普通は、そう思うよな。

「いいんですね?止めても。」

「ああ。」

よし、言質は取った。

「ぶはははは。面白いな正道。アレを見ても止めれると思うか?」

そう黒竜が示したのは、遥か先に居た幽鬼の世界、第一王子ガオ。

コロッセオの中央に立っていた。

だから、ここ広すぎんだろ。

よく見ると、吠えていた。

ボディーはワーウルフ。

「ウォーっ!ウォーっ!」

どう見ても理知的に見えない。

「なあ、ガオってあんな奴なのか?」

「あんな奴だな。」

黒竜が答えた。

「会話できるのか?」

「さあな。」

まあ元から、話し合いなんて考えちゃあいないが。

「師匠、どう見ても頭のおかしい奴にしか、見えませんよ。やめときません?」

「あいつとは因縁があってな。決着をつけないとな。」

「力失ってるんでしょ?辞めときましょうよ。」

「余計な事をっ!」

そう言って、師匠は黒竜を睨んだ。

「いやいや、師匠が力を失ってるのは、俺をここにブン投げた奴に聞きました。」

「イプシオンか。」

そんな名前だっけ?ガーディアンの名前なんてイチイチ覚えていない。

「まあいい、正道。黙って私の勇姿を見ておくんだな。」

なにこのフラグ。

消滅する気満々じゃん。

「危なくなったら止めますからね。」

「ああ。」

そう言って、微笑みながら師匠は、コロッセオの中央へと向かっていった。

あのあま、どうせ出来ないと思ってんだろう。


「おーい、正道。」

遠くから俺を呼ぶ声がした。

道中まで、一緒だったオーガボディだ。

黒竜が怖いのか、結構離れていた。

とりあえず手を振ってみた。

「だ、大丈夫なのか?」

「ああ、大丈夫だ。俺も無事に着けた。ありがとう。」

俺は、素直に礼を言った。

「いや、あんま力になれんかったし、むしろ、こっちが礼をいいたい。今度、奢らせてくれ。」

「おお、楽しみにしとくよ。」

俺はそう言って、黒竜の背中から手を振った。

いや、マジでいい奴らだ。

「どうする、正道。下に降りるか?」

黒竜が聞いてきた。

遠いし、見えんし。

高いとこの方がマシじゃね?

「このまま、背中に居てもいいか?」

「構わんが、闘いを止めるのを手伝う気は無いぞ?」

「ああ、それは俺が何とかする。」

「ぶははははは、面白い奴だ。どう止めるのか楽しみにしておこう。」

俺が止めるんじゃないけどね。


コロッセオが突如ざわつき出した。

何十万と集まった幽鬼がざわつくと、もう何これ?戦争?

「幽鬼の王が登場だ。」

黒竜が俺に言った。

「知り合いなのか?」

「まあな。」

「知り合いなのに、幽鬼を襲ったりして大丈夫なのか?」

「幽鬼に同族に対する保護感情なんて無いからな。」

「そうか?気のいい奴ばかりだぞ?」

「お前は見ず知らずの人間が酷い目にあっていたら、どうにかしたいと思うだろう?」

「そりゃあ、そういうのを知っちゃうと思うだろ?」

「幽鬼も我ら竜族も、見ず知らずの同族がどうなろうと何とも思わん。」

いやいやいや、そこは思おうよ・・・。

「そんな場所を陣取りおって、邪魔であろう。」

そう言って、黒竜に話しかけてきたのは、先ほどコロッセオに現れた王だった。

多くの幽鬼たちが黒竜を恐れている中、平気で近寄ってきた。

「こんな広いコロッセオに邪魔もないだろう。」

「背中に何かついているぞ。」

オーガボディというか、もっと大きい鬼?なんていうのかわからんが、そんな奴が俺の事をゴミ扱いしてやがる。

「剣豪の弟子だ。」

「ほう。師匠の最期でも見に来たのか?」

「戦いを止めるらしいぞ。」

「ほう、アレを止めるのか。面白い。」

そう言って王と黒竜は笑い出した。

「正道さん、僕を追ってきたんですか?」

王の後ろで見えなかったが、僕男が居た。

お前に用はないっちゅうに。

いやあった。重大な用件が!

「いい所に居た。僕男!」

「僕男じゃないです。僕の名前はレト。これでも第2王子なんですよ?」

そんなことはどうでもいい。

男ボディの奴の名前なんてどうでも・・・。

「な、何てっ!?」

王子、王子って言いましたこの僕男?

「もしかして、あの中央に居る頭のおかしいの兄ちゃんなのか?」

「ああ、あの戦闘狂なら、兄ですよ。」

全然っ!ボディ違うやんけえええええっ。

俺の悲痛な叫びは、心の中に押し留めてと。

「この戦いって止めれね?」

「兄は頭がおかしいので無理です。」

「・・・。」

「正道さんの師匠を止めたらどうです?」

あれも負けじと戦闘狂なので・・・。

「レト、その人間は知り合いか?」

「はい、父上。僕のご主人様です。」

「なにっ!」

ジロッと俺を睨む幽鬼の王様。

「違います。ただの知り合いです。」

俺は、即座に否定した。

「酷いじゃないですか、正道さん。」

「お前の依頼は確かに受けた。が、俺が達成したわけではないだろう。無効だっ!」

男ボディには用はないっつうの。

しかも、闘いを止められないって言うなら尚更だ。

もう僕男に用はねえ。

あれ?なんか忘れてないか俺。

「ふっ、面白い奴だな。コイツは。」

「であろう、我は気に入っている。」

黒竜に気に入られても嬉しくもない。

「レト、探究心があるにも程ほどにしておけよ。これからは、訳が判らない歪みに突っ込んでいくんじゃないぞ。」

国王が僕男に何やら忠告していた。

ん?

そ、それだああああああああああ。

「はい、父上。」

「ちょ、ぼ、僕男君。」

「だから、僕男じゃありませんって。」

「三剣人の世界へ戻る歪みって、何処にあるんだ?」

「戻りたいんですか?」

「まあ、一応は。」

「この戦いの結末を見てからでいいんじゃないですか?三剣人の世界は消滅するかもだし。」

「そうだな。師匠も連れて帰らないといけないしな。」

俺がそう言うと黒竜と王が大笑いした。


そうこうしてるうちに、コロッセオの中央の叫び声が一段と大きくなった。

何、あの人、いや幽鬼か。

もはや獣じゃねえか。

それに対峙してる師匠は、遠目に見てもわかるくらいに意気揚々としていた。

間違いないな、あれは笑っているな。

本当、どうしようもねえな。

王の開始の合図と同時に、戦闘は開始された。

されたのだが、何をしているか見えない。

ピストルの弾が見えるくらいに鍛えた俺の目には、何も映らない。

ただ、衝撃波は物凄く、遠く離れた観客席まで伝わってくる。

観客は衝撃波と大きな音で盛り上がっていた。

そりゃあ、まあ、俺より遥かに強い幽鬼たちが観客だけあって、見えてるのかもしれんが。

「なあ、どんな調子だ?」

とりあえず、見えないので、黒竜に聞いてみた。

「剣豪の防戦一方だな。」

「そうか・・・。」

あのオフェンスの鬼が防戦一方って、よっぽど強いんだな僕男の兄は。

「よく防いでは居ますが、時間の問題ですね。」

僕男が俺に聞こえるような声で言ってきた。

「どうやって止めるんですか?あの兄は、ちょっとやそっとじゃ止りませんよ。」

「王様に聞いておきたいんだが、俺があの王子を消滅させた場合どうなるんだ?」

お宅のお子さん殺しますがって聞いてる俺ってどうなん?

「うはははっは。面白い、面白い事をいう。」

大笑いされた。

「まあ、殺れるなら殺ってみるがいい。その際は、何かしらの褒美をやろう。」

息子を殺したら褒美って、どうなってんの?まあいい、これで残されていた問題は解決した。

「おい、僕男。」

「僕は僕男じゃないです。」

「師匠が本当に危なくなったら教えてくれ。」

「それでいいんですか?」

「ああ。」

というか、あんまり早く止めたら怒るだろ、あのあま

凄い音と、凄い衝撃波。

盛り上がる会場。

が、何が起こってるか俺には全然わからん。

見えんし。

大勢集まってる中、一人ぽつーんと疎外された気が。

正直、何も面白くない。

状況がわからないと師匠の心配すら出来ん。

そんな中、ふと僕男を見て思ったのだが、こいつ強い。

いや、強いのは知ってる。

あっさりバジリスク倒した位だからな。

だが、あの時の強さとは、明らかにレベルが違う。

「おい、僕男。お前なんか強くなってね?」

俺と同じで、こっち帰ってから修行でもしたのか?

「これが本来の僕の強さですよ。」

「どゆこと?」

「三剣人の世界には神柱がありますから。僕ら幽鬼は力を制限されるんですよ。」

なるほど、幽鬼の微生物が闇でしか存在できなかったのはその為か。

この計り知れない力は何だろ・・・、黒竜に匹敵するんじゃね?

男ボディと判ってから、完全にモブ扱いしてた俺だけど、この強さはシャレにならない。

「なあレト、俺たち友達だよな?」

「何でいきなり名前呼び?まあ、いいんですけど。」

「お前の兄貴、消滅さすけど、俺を恨むなよ?」

「恨みませんよ。そんな事くらいで。」

そんな事って・・・。

「それよりも、そろそろヤバくなっています。」

「そうか。」

俺は、黒竜の肩に乗り、コロッセオを見渡した。

何か竜の肩に乗るって、今までと逆じゃね?

ふとドラオの事を思い出し、懐かしくなった。

おっと、そんな暇あるのか?

見えないからわからないんですが。

俺は、闘いを止めるべく立ち上がって叫んだ。

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