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異世界へようこそ

俺が目覚めると、眼前にエロゲーのキャラが居た。

何故、エロゲーかって?

だって金髪青眼の絶世の美女なんて、現実世界にいる?

パッキンに、青い瞳。

青緑の碧眼とは違い、完全なブルー。

居ないよ、そんな女性、リアルに。

これは、夢に違いない。

衣服にしたって、もうエロゲーとしか言えないような露出したもの。

戦士風といったとこだろうか。

俺がマジマジとエロい・・・、真剣な目で見ていると美女が話しかけてきた。

「異世界から来た者だな?」

何だろう、聞いたことないような言葉なんだけど、意味が分かった。

「おっぱい揉んでもいいですか?」

ここは何処ですか?と聞いたつもりが、本音が出た。

でも、夢だからいいよね?夢なんだから。

俺は、夢から覚めたときにパンツがガビガビになるのを覚悟した。

だって、高校生だし、こんな美女相手なら、パンツくらい洗いますよ!

「殺されたいのか?」

「・・・。」

物凄い殺気を当てられた。

夢なのに・・・。

体が震えるというか、呼吸が出来ない。

というか、起き上がったのに腰から砕けて地面にへたり込んだ。

「とんだ弱小動物だな。」

そう言われてお姫様抱っこされる俺。

近い近いっ!

顔がっ。

美女の顔がっ!!

童貞の俺には、殺気より強力な攻撃だった。

そのまま、俺は何処かへ、連れて行かれた。


美女の説明によると、ここは異世界らしい。

「そんな馬鹿な。ここは俺の夢ですよ?」

そう言って笑っていると、剣を腕に突き刺された。

「んがttttt。」

声にならない声をあげて、俺は地面を転がりまわった。

目から大量の涙が零れ落ちる。

めっちゃ痛い。

「痛みがあるだろう。」

そう美女に言われた俺は、ここが夢の世界でないことを悟った。

いや、でも普通、刺す?

抓るとかじゃないの?

抗議をしたかったが、そんなことを言える相手じゃなかった。

「異世界の人間がこの世界で生きていくには冒険者になるしかない。」

なんだろ、これ、俺が夢見た世界じゃね?

いつか異世界に行って、冒険者になる。

そんなことを夢見ている高校生は、何万と居ますよ?

いや高校生だけじゃない、大人を合わせたら500万人と居るはず。確か、いつか異世界へ行こうという小説サイトの読者がそれくらい居た。

親戚のおっちゃんが、いつか俺は、異世界に行ってチーレム無双するんだなんて、言っていたのも思い出した。

50歳無職のおっちゃん、よくうちの家に金借りに来てたなあ・・・。

異世界はあったよと伝えたら、喜ぶだろうなあ。

ふと、俺は自分の衣服を今更ながらに確認した。

外出用の普段着を来ていた。

なんだよ、なんなんだよお。

お年玉はたいて買ったジャージ来てねえじゃんっ!

異世界へ行けるという高いジャージを買ったんだけど、残念ながら俺は着ていなかった。

無職のおっちゃんとお揃いのジャージ。

うちの親に土下座までして借りた金で、おっちゃんも買ったのになあ。

そう感慨に耽ってた俺は、ある疑問が湧いてきた。

「冒険者しか?」

「突然現れた異世界の人間を誰が、温かく迎えてくれるというんだ?」

まあ、確かにそうなんだけど。

勇者召喚とかそういうシステムはないんですかね・・・。

まあいいや、冒険者で。

「この世界で冒険者になるには、大きな壁がある。」

「壁?」

なんだろ?魔法とかスキルとかか?

ここはやはり、チート的なものが。

「この世界には幽鬼という、人に害をなすものが存在する。」

「・・・。」

なんだろう。

小説やアニメで見た感じが全然しない。

「闇に存在する奴らは、普段は夜、出現するのだが、場所に寄っては、昼でも出現する。」

そう言って美女が指差した先には、黒い影が居た。

揺らめくような黒い影が。

なんか暗闇の洞窟に連れてこられた時から、嫌な予感はしていた。

そりゃあ、お姫様抱っこされて連れてこられた時には、ついに卒業かなんて、淡い夢も見ましたよ。

でも剣で刺されりゃあ夢もエロい妄想も吹き飛ぶよね。


揺らめく影はゆっくりとこっちへ向かってきた。

美女が一歩前に踏み出すと。

影が消えた。

いや、俺の目では追えない様な速さで襲いかかってきた。

目に見えない速さで、美女が何かした。

恐らく剣を抜いて斬ったのだと思うが音しかしない。

「こいつらを倒せないと冒険者にはなれない。」

そう美女が言い放った。

「無理です。」

俺は、きっぱりと答えた。


それから、問答無用で俺の修行が始まった。

当初期待していた、チートスキルも魔法も一切なく、地道な修行が始まった。

腕を刺された時から覚悟はしていたが、師匠の修行には容赦がない。

血反吐を吐くのなんて日常茶飯事で、死にかけることも1週間に2、3度ある。

何度も何度も逃げ出したが、その度に捕まり、鬼のような修行が再開される。

そんな辛い俺の唯一の慰みが、師匠のエロい体だった。無防備で接してくるので、ラッキースケベが偶にある。本当にそれだけが、生きる楽しみだった。

「師匠、そんなエロい体を無防備にさらして、俺どうにかなりますよっ!」

そう、言ったことも何度もあるが。

「死にたいなら襲いかかってくればいい。」

そう返されるだけだった。

師匠と修行しながら旅をしていると、そのエロい体に寄ってくる野盗なんて、ゴキブリのように湧いてくる。

顔を見た途端、逃げ出して行く奴らも多いが、知らずに襲ってくる輩も多い。

既に死んでいった野盗は、4桁を超えると思うのだが、減る気配がない。

「師匠、そんなに強すぎたら、嫁の貰い手がありませんよ?」

俺がそう言ったとき。

「お前が私を守れるようになれば、お前の嫁になってもいい。」

なんて事を、言うから俺は死に物狂いで修行した。

しかし、強くなればなるほど、師匠の背中を遥か遠くに感じるようになった。

当初は、エベレストの頂上にいると思われた師匠の背中は、今や、宇宙の果て。

一生かけても背中を拝むことさえできないレベル差を感じるようになった。

その頃になると、修行は更なる過酷さを極め、幽鬼の巣に放り込まれたりもした。

意識がなくなるまで、助けは来ず、このまま師匠と居たら死ぬ日も近いと思った。

幽鬼の巣に放り込まれても1日以上もつようになった頃に、俺は書置きを残し一人旅へ出た。


お世話になりました。

師匠に教えて頂き、一人の冒険者として生きていく自信がつきました。

御恩は一生忘れません。


そう書き残して、俺は逃げ・・・、旅立った。


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