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終わりよければ全てよし

目の前に広がる光景は、見慣れた光景だった。

ショッピングモールの3階。

なじみのおもちゃ屋がある場所。

俺は、話題のギャルゲー「君の体は。」初回特典付き限定版を2つ購入した後だった。

俺のと50歳無職のおっちゃんの。

予約してるんで、初日に買う必要はないんだが、無職のおっちゃん曰く、初日に買うから意味があると。

そのお蔭で、とんでもない目にあってるんだが。

三階吹き抜けの中央には、エスカレーターと休憩スペースが存在している。

その休憩スペースが今、修羅場と化していた。

何人かが血まみれで倒れている。

犯人は、俺の20m先に立っていた。

血まみれの包丁を右手に持っていて、遠目に見ても常軌を逸していた。

ふらふらと立っている姿は、異世界の幽鬼を思い出させた。

奴の次のターゲットは、直ぐ近くにしゃがみ込んでいた女性。

女性は幼子を守るように蹲ってる。

常軌を逸してる男に、その姿がどう映ってるのだろうか?

子を守る親ほど尊いものは無いというのに、フラフラと親子に近づいて行っている。

おっちゃん、すまん。

俺は心の中で無職のおっちゃんに謝った。

俺は、「君の体は。」初回特典付き限定版が2つ入った袋を男に向かって投げつけた。

残念ながら、男に当たることはなかったが、男の気を引くには十分だった。

今のうちに親子には逃げてほしいが、震えて、しゃがみ込んでる女性に、それは酷なことだろう。

常軌を逸した男は、ターゲットを俺に変更したようで、ユラユラと近寄ってくる。

おいおいおい。

俺をその辺の一般ピーポーと一緒にすんじゃねえ。

異世界で冒険者だった、この俺に。

ゆっくりと近づいてきた男は、突如奇声をあげた。

「うがあああああああっ。」

オーガかコイツは?

今までの俺ならビビッたかもしれんが。

恐怖は一切ない。

男は包丁を持って突っ込んできた。

その動きは、俺にはスローモーションのように見える。

遅い遅い。

そんな動きで俺に傷付けれるわけねえだろ。

俺は、余裕をもって対処しようとしたのだが。

ちょっ。

俺の動きはもっと遅かった・・・。

いやいやいや、俺、もう少し出来る子だったよね?

自分の動きは、男の動きより更にスローモーションで。

所詮は、普通の高校生。

部活をやっている訳でなく、好きなゲームをやって、赤点にならないように勉強して。

適当に送ってきた人生のツケが、今、押し寄せようとしていた。

くそっ、少しくらい部活やっとけばよかった。

今、後悔しても何も始まらない。

俺は仕方なく、左手を犠牲にした。

包丁が突き刺さる。

痛みが脳に伝わる。

めっちゃ痛い。

めっちゃ痛いが、我慢できない痛みじゃあない。

この程度の痛みは、異世界で何度も経験している。

俺の左手に刺さった包丁が抜けず、男は包丁を離して、後ずさりした。

男は唸り声をあげる。

何、この人、もう人間ですらないんじゃね?

男は体制を低くして、俺に突っ込んできた。

タックルというやつだ。

180センチくらいあるガッチリした男のタックルを受け、俺は倒れた。

貧弱な俺の体に腹が立つ。

正気を失っている男は、立ち上がり笑い声をあげる。

「うひゃひゃひゃひゃ。」

左手に血まみれの包丁を持って。

くそっ。

もう一本もってやがった。

俺は右手で腹部を触った。

血まみれの右手を見て、悟った。

ああ、間違いない俺、死んだ。

現実世界には、治療魔法は存在しない。

未だ、警察すら来てない状況では、救急車なんて、まだまだ来ないだろう。

異世界で死にそうな目に、何度もあっている俺だからわかる。これは致命傷だ。

男は笑いながら、次のターゲットへ向かっていく。

くそっ。

無駄死にかよ。

死んだばあちゃんの言葉が頭に浮かぶ。

いつの日か、その命を賭して戦う時が来てもいいように、鍛錬に励みなさい。

すまん、ばあちゃん、鍛錬する暇なかったよ。

異世界じゃあ死ぬほど、鍛錬したんだけどなあ。

そう言って、貧弱な今の体を見て息を一つ吐いた。

俺は立ち上がっていた。

どうせ死ぬんだ。

無駄死にだけは御免だ。

「うおおおおおおおおおおおおっ。」

俺は叫び声をあげて、男に突っ込んだ。

男は、ガタイはいいが、足元がフラフラしている。

俺程度の体当たりでも威力は十分だった。

火事場の馬鹿力というやつだろうか。

男も俺も休憩スペースにある手すりを乗り越えて、落下していった。

ここは3階だ。

もし男が死ななかったとしても、あの親子に危害を加えることは出来ないだろう。

俺の死は、無駄じゃなかった。

今は、ただそう思いたかった。


ちきしょー、どうせ死ぬなら師匠のおっぱいを思いっきり、揉みたかった。

だんだんと意識が遠くなっていく。

落下途中なのに、世界はゆっくりと時間が流れていく。

ああ、おっぱ・・・。


予定通り完結しました。

読んで頂きありがとうございました。

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