ある日の昼下がりより
隣空いてるよ
もう埋まってるでしょ。
俺がここにいられるのはすべて君のおかげだった。
君がいなければ俺はここにいられなかったしいたくなかった。
だから俺が君を好きになるのには時間なんてなかった。一瞬で好きになったと言っても過言ではないのだ。
それだけに俺はこれまで君にその想いを伝えないできた。こんなことを聞かされると君は俺を嫌うだろう。そして拒絶し俺と一生関わらずにその生を終わらせてしまうだろう。
でもそれは嫌だ。
俺の気持ちはそういう風に出来ている。
俺は自分勝手な人間だ。
だからずっと告白しないでここまできた。
なのに───。
「ねぇ、*は私の彼氏になる可能性はあるのかな?」
ある昼下がりの公園でベンチに寄りかかって休憩しているとそんなことを言ってきた。
つまり告白だ。
俺はこれでも男としていつも告白のタイミングを掴みきれずにいた。告白は俺からしようと決めていた。
なのになぜ今、君から告白されているんだ。
というかそもそも俺のことが好きだったのか。
嬉しいという気持ちの前にそんな戸惑いが次々と思い浮かんでは消えていく。
消えて残るのはやはり嬉しさだった。
確かに嬉しかった。
でも────。
俺はそれを断った。
いや断ったのではない。答えを保留したのだ。
「明日答えるよ」
君はすこしだけうなずいた。
それだけだった。
君との明日は来なかった。
俺は困った。そして戸惑い、憤りを感じ、そして絶望した。
「*さんは転校しました。」
朝のホームルームで先生はそういった。
みんなも同じく戸惑いをみせたがしばらくするとみんな静になり、最後には君のことなんて忘れたように日常に還った。
みんなとの隙間を埋めるために俺も無感動に還った。
───────────。
ある日の昼下がり。
俺はベンチに座っていた。
隣には俺の初めてできた彼女が一緒に座っている。
幸せだった。こんな時間が続けばいい。そんな風に思っていた。
そんな風におもってる。
あぁ、そういえばここは"君"との最後の場所だった。
ねぇ────。
「──隣空いてるよ」
それとなく俺は呟いた。そして───。
「もう埋まってるでしょ。」
隣の君はすこしだけわらった。
ただ、それだけだった。