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第1部 12芒星魔方陣 編  5章 見えないガーディアン 1話

 ミーティングが終わった夜、警察の資料室で中断していた捜査資料を調べていた。

「お疲れさま、どお?進んでる?」

 資料室に小河が差し入れを持って入ってきた。

「お疲れさまです、これが最後の資料です」

 私は最後のファイルに目を通していた。小河は机の上の幾つかのファイルを開いて見ていた。そして最後の捜査ファイルを調べ終わった。

「終わりました。結局、百聞は一見にしかず。昨日の現場が一番分かりやすかったですね」

「結局、私達が持っている情報以上の事は何も分からなかったって事ね」

「ええ、そうですね」

「じゃあ遅くなったけどご飯にする?」

 私は腕時計を見る。もう夜9時過ぎになっていた。

「そうですね、先輩呑みに行きます?」

「とりあえず行こか」

「ちょっと待って」

 私は署員に捜査資料提供にお礼を言ってから警察署を出て近くに新しくできたイタリアンレストランに行く事になった。

 車に乗り込み走らせる。

「お店ってこの交差点を左だったわね?」

 私はハンドルを切りながら小河に訊いた。

「そうだったわね」

 交差点を曲がった所で2人の視線の先で大きな火柱が上がった。

「今の何?」

「爆発?行かないと」

「行きましょ、先輩、赤色灯」

「OK」

 シルビアは車の速度を上げる、その間に小河はダッシュボードに有る小さな操作盤をスイッチを入れると赤色灯とサイレンがなり出す。

 公安6課のオフィスから見てほぼ真南の位置に見える。車から降り直ぐに武器を構え警戒態勢に入る。

「これって」

「札?式紙?」

 辺りの人影は既に無いが金属片が散らばっている。建物の先に進むと残骸が大きくなってくる。

「先輩、これって」

「・・・サイボーグかオートマトン?」

 さらに奥で銃声が聞こえた。その音を聞いた小河は音のした方向を睨み付けた。

「誰か居る。戦っているみたい」

「先輩」

 私は銃を目の前に構え一度目を閉じた。瞼に高速のプログラムが走る。その計算処理は1秒に23Gb、それが私に移植された脳髄膜コンピュータの計算処理能力である。

 瞼を開けると前に魔法陣が現れ円形の陣の中に映像が映し出される。

「オートマトンの方をやるわよ」

 私はそう言い銃を構えた。銃の回りに青い光が線を描くように現れライフルの形状になる、そしてスコープにのレンズにも魔法陣が現れている。

 この魔法は私専用のデジタル魔法「アーメリ」武器庫と言う意味である。

 私は撃鉄を起こしその場に腰を落とし体を安定させるとスコープをのぞき込み照準を合わせた。

「戦っている人の方は見えてる?」

「いえ、私には見えてません。オートマトンだけです」

「まだ引き金を引かないで、人の後ろにオートマトンが居るから私が合図したら撃って」

「はい」

 私は2フロア先で激しく動き回るオートマトンに照準を合わせつつ小河の合図を待った。

「撃て!」

 合図と同時にトリガーを引いた。私の撃った銃弾は壁の手前で小さな魔法陣が現れ銃弾が魔法陣に消え、さらに壁の向こう側に現れた魔法陣から銃弾がワープしオートマトンに命中した。

 オートマトンは1発命中する毎に吹き飛び3発目には頭部分が粉砕されながら倒れていった。

「もう1人を押さえに行くよ」

「はい」

 私は直ぐその場から立ち上がり小河と共に追いかける。フロアから廊下に出て2つめの部屋の前で突然、小河が止まりH&K P2000を構える。

 私は小河の後ろに並び突入に備えると、突然、川島先輩は私を突き飛ばした。同時に入り口から炎が吹き出しだし、小河は爆発で吹き飛ばされる。

「先輩!」

 小河は体を起こし、落とした銃を取った。

「爆風に合わせて自分から飛んだから大丈夫よ」

「よかった」

 と同時に私は入り口から突入する。すると、中には1人の女、黒のハーフパンツにグレーアンダーシャツと黒でシースルーの様に透けたロングコートを着ている。女は既に何か呪文の様なものを唱えていて、既に女の前には5枚の札が空中に浮かび魔法陣の様な星形の模様が現れ札と共に模様が回転を始める。

「やばい」

 直ぐに相手の呪文の解析を始める。

「該当しない?」

「シルビア!」

 女は空中に浮かぶ模様の中心から炎を出している。私はシールド魔法を実行した。

 間に合うか?

 私が展開したシールドより数センチ先に別のシールドが発生し迫り来る炎を弾いた。

「先輩、それは?」

「間に合った、ジュリアンから貰った魔術本よ、魔力が無い私でも扱えるように本に魔法を封印してある」

「姉さんが?」

 姉さんがブックを作っていた事は知らなかった。それより対峙している女はまた次の詠唱を始めた。

――ENTER――

 私はすぐさま女に向けて銃に拘束魔法を込めた魔弾を撃った。

 女は目の前に人の形をした札を投げつけるとその札が女と同じ位まで大きくなり魔弾を受け止めた。私は次の魔弾を撃つ迄に女はコートを翻すと周辺の埃をまき散らしながら突風が吹き荒れた。

 目を開けた時にはオートマトンの残骸と幾つかの紙切れが残っていただけだった。

「逃がしたか」

「シルビアを相手にして逃げ切るなんて、かなりの実力者みたいね」

「そんな、買いかぶりすぎですよ」

「まあ、逃げられたのは仕方無いとして・・・問題はこの人形よ」

「そうですね、晩ご飯、お預けですね」

「そうね」

 小河は苦笑いしながら本郡に連絡を取っていた。その後、マリアを筆頭に現場検証が終わったのは深夜2時前まで掛かった。


 翌日、私は似顔絵を作成しミーティングルームに集まったマリア達に配った。

「ごめんなさい、暗かった上に直ぐに戦闘になっちゃって」

「それより、襲ってきたのは陰陽師だったのね?」

 マリアは配った資料に目を通しながら訊いた。

「はい、あの式神と特徴的な5芒星の魔法陣を見た事から陰陽師だと見ています」

「その陰陽師がオートマトンと戦っていたのは何だったのかしら?」

「そのオートマトンですが、殆どのパーツが日本製でしたが外装パーツの塗装は中国製でした」

「つまり中国製のオートマトンと言う事になる訳ね」

「はい、そうなりす」

 マリアの質問に私は答えた。

「まず、外事第2課に斎藤と北条、それから学研都市の中国籍の企業が有るかどうか調査、日本企業をカモフラージュしている可能性も考慮する事、それを小河とシルビア、ジャンとジュリアンは現場周辺でオートマトンを隠している場所を探して、私は無駄だと思うけど外務省を当たってみるわ」

「分かったわ」

 ジュリアンは直ぐにジャンを引き連れミーティングルームを出て行った。

「先輩、行きましょう」

「OK、行きましょ」

 商工会議所の学研都市支部で企業登録書を参照した。しかし中国籍の企業は無かった。

「やっぱり自分の足で調べるしか無いわね」

虱潰(しらみつぶし)しに探すしかないか」

 捜査が空振りに終わった商工会議所を出ながら小河が言った。まずは貿易商社から順に調べて行った。

 朝から調べて4社目が終わった頃には夜8時を過ぎていた。

「今日も遅くなったわね」

 昨日も未明まで仕事だったため実質徹夜だった。

『BA74地区で事件発生、現場に急行して下さい』

「了解」

 現場は4階建ての倉庫ビルで建物の中では既に鑑識班とマリアが現場検証をしていた。

「お疲れさまです」

「あそこ見て」

 マリアが指を指す方を見ると、粉砕されたパーツが周囲に散らばっていた。

「オートマトンですか?」

「そう、昨日、シルビア達が遭遇した物と同タイプのね」

 私は改めて倉庫内を見回した。

 軽く10~20体は有ろうかと言う台数のオートマトンが全て破壊され残骸が散らばっていた。

「それだけじゃ無いよ」

 マリアはまだ現場検証がまだ終わっていないオートマトンの残骸へ歩き1枚の紙切れを拾う。

「また式神?と言う事は」

「陰陽師・・・」

「この陰陽師、我々より数段先手を行ってる。それに・・・」

「それに?」

「まだ我々の知らない所で何かが起きているみたいね」

「ところで、あの人達は」

 私はフロアの端で何かを物色している3人組の男達に目を遣った。

「公安7課、私達の商売敵ってとこね」

 その男の1人が私達の所へやってくる。

「この件はお前等6課も関わっているのか?」

「7課もこの件に関わっているの?」

 マリアが男に尋ねた。

「ああ、どうも軍隊が関わっている様だからな、その線で追いかけていた」

「私達はデジタル魔法の不正プログラムを追いかけているうちに陰陽師に行き着た」

「あらーら、幾ら大規模なオートマトン密輸現場に居合わせたと言っても、こちらにも陰陽師を追いかけているのよね」

 7課の男と世間話をしていた。

「よし、引き上げるぞ」

「は、はい」

 私は戸惑いながら引き上げる。しかし、小河は慣れた表情で私に「帰るわよ」と言った。


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