第1部 12芒星魔方陣 編 4章 不吉な予兆 2話
「おはようーございます」
警察署の資料室にシルビアは入る。
「お早う、シルビア」
「二日酔いですか?」
「あの程度で二日酔いにはならないわよ」
「でも、先輩ってビール8本と焼酎も・・・」
「シルビアだって結構呑んでたじゃない」
「私の場合は脳髄膜コンピュータのお陰でアルコールを分解できるから」
小河は「羨ましいわね」と言いながら捜査資料を調べ始めた。
捜査資料を調べ始めて幾つか分かってきた事が有る。
1つは先月から超能力を使う不良集団の喧嘩抗争頻発している事。
2つ目はその中に拳銃を使用し重傷者が出ている事。銃の流通ルートを確認する必要がありそうだ。
3つ目に銃火機に対抗するグループがデジタル魔法を使用している事。
4つ目にそのデジタル魔法を使用していた者達が言う魔法が使えなくなった。その理由が分からない事。
最後に組織の名前が今ひとつ捜査資料でははっきりしていない事。ただ“マジックアロー”と言うワードだけが有った。
「少し騒がしくなって来たわね」
「そうですね、何が有ったのでしょう」
資料室は刑事達が居るフロアと一続きになっている。その為に事件が起きる度に人の出入りが多くなるのが分かる。
私は資料室を出てフロアの様子を伺った。竹村と沢田はショルダーホルスターに入れた銃を確認していた。
「何が有ったのですか?」
「また、不良どもの喧嘩があった見たいだ。悪いがもう出る」
沢田はそう言って慌ただしくフロアを出て行った。
「はい、小河です──」
と同時に通信が入る。
『─今から28分前、AL84の倉庫群で不良集団の抗争事件が発生、能力者が関係している模様─』
マリアからの通信は脳髄膜コンピュータを介して通信と映像が流れる。小河は脳髄膜コンピュータを移植していない為、電話を使い音声のみの通信となる。
「いま南署が出ていったわよ、私もこれから現場に急行したいのですが」
「私も行くわよシルビア」
「宜しくお願いします」
『―悪いわね、それじゃあ任せるわね夏菜、シルビア-』
「はい」「はい」
マリアの通信が終わると、私と小河は散らかしていた資料を片付け現場へ向かった。
現場は既に警察官が収拾させて入るようだった。数人の逮捕者をパトカーに乗せ走って行く所で鑑識の現場検証が始まる所だった。
「何だ、お前達も来たのか」
沢田は私達を鬱陶しそうに見て言い放つ。それに対して小河は沢田に愛想笑いを浮かべ鑑識班が1列に並び遺留品のチェックを終わった所を見ている。
「先輩、これは」
現場は廃ビルが周囲に並びまるでゴーストタウンの様になっている。この学研都市は開発途中で建設が途中で止まったまま放置されたり計画倒れになった施設や建物が多く治安悪化の要因になっている。
現場周辺には鼻を刺すような焼け焦げた臭いと燃えた車やビルの壁が黒く焼け痕が残っている。
「だよねー、どれ位の温度だったか分かる?」
小河も私の見ている焼けたコンクリートの痕を見ている。
「2000℃か2500℃位かしら、喧嘩程度で使って良いレベルでは無いわね」
「そこにも銃痕がある。それとあっちにも」
私達はあちらこちらにある焼け焦げた壁や銃痕を見て回った。
「お前達、邪魔だからもう帰れ」
沢田がうろうろしている私達を鬱陶しそうに言う。
「大丈夫よ、貴方達の捜査の邪魔はしないわ」
小河はそう言って捜査を続けた。
翌日、公安6課事務所のミーティングルームに私達は集まった。
「昨日の不良達の抗争だけど、こんなのが出たよ」
シルビアはスライドに映し出した1枚の写真を見せた。
「何、紙?」
「札?でもこれは一体」
ジャンが腕組みしたまま訊いた。
「これは私の専門では無いのだけど陰陽師の呪符だと思うの」
「陰陽師と言う事は土御門の家が絡んでいるのか?」
成田課長は公安6課の性格上、魔法や超能力に付いても研究している。
「それはまだ分からないわ」
「その件は、私が調べておこう」
「はい、お願1いします。後、この件は他にも現場に残っていた銃弾からM1911の旋条痕と解ったわ」
「そんな銃を普通の一般学生が持てるわけがないね、流通ルートを調べないと」
小河は持っていた資料を開いた。
「そう思って調べて有りますが、今のところ暴力団関係とは別のルートで入ってきています。銃は解体して複数の海上コンテナで輸入されている様ですが・・・今はここまでです」
「分かった。税関には私から監視の強化を依頼しておく。皆は引き続き捜査を継続するように」
私の報告を聞くとマリアは切り上げジャンからそれによるとデジタル魔法のバンクに不正アクセスの履歴が見つかり情報の漏洩が疑われると言う事だった。漏洩した可能性が高いデータはデジタル魔術師の一覧データらしいと言う事だった。
ただいま「岡本浩子編」の3章、4章を書いています。もう少しお待ちください。