第1部 12芒星魔方陣 編 19章 結界魔方陣の攻防 1話
仕事が忙しくなって投稿が遅れました。
AX34地点のアーケード前の広場に現れた私達は直ちに周囲の警戒に当たった。これは転送魔法だけに関わらずテレポートでも同じだが転送した途端に敵と鉢合わせと言う場合が起こりうる為だ。
「クリーン」
「クリーン」
「私もクリーン」
ジャン、斎藤、私の順で合図をした。裕貴は一瞬何が起きたのか分からない様子だが直ぐに私達と同じ行動を取り前に近くに在った建物の影に隠れた。
「いい動きね」
裕貴は少し先走りすぎだが素人にしては十分だろう。それよりも状況判断が速い関心してしまった。
そう言っている間にもジャンと斎藤は銃から入れナイフやワイヤーに持ち替え3人2組でビル内へ進行していった。私は必然的にマリアと裕貴の3人で行動を共にする。
「朝倉、まず前のビルを制圧する。中に狙撃兵が居るから」
「わかった」
私達はジャンが入った隣のビルに入る。中は流行の衣装を着せられたマネキンが並んでいる。しかしまだ夕方で今日は土曜日、客が居てもおかしくない状況なのに人影は無く照明が消えている為建物の中は真っ暗だ。
「ここは何で人が誰も居ないのです?それにさっきのアーケードってヴィラタウンだった筈。そこにも何で誰も居ないのですか?」
マネキンに隠れようと屈みながら後を付いてくる裕貴は声を潜めながら訊いた。
「敵が人払いの結界を張っている。それも随分と分かりにくいようにカモフラージュしてね」
「でもそんな事をすると直ぐにばれるんじゃ無いんですか?」
「どうして?誰も人が居ないのに」
「そうか・・そうなるのか」
周囲を警戒中のマリアが目を閉じて気配を探っている。
「ジュリアンがもう囮になって邀撃している。早くくここを制圧しないと」
「もう始まってるのね」
苛立つマリアの言葉を確認するかのように私もも目を閉じ意識を集中した。古代魔法を扱える者には魔力を持つ者の気配を感じる事が出来、さらに誰の魔力なのかも識別が出来る。
「姉さん、やばいんじゃない?」
「幾ら力が有るって言ってもこの数はそう長く持ちこたえられないわね」
「敵の位置は確認したわ、愛達にデータ送るわ」
私とマリアはデータのやりとりをしている。
「誰か居ないか?」
裕貴はフロアの先に視線を向けて警戒し非常階段を指差した。
「え?」
私も確かに気配を感じたがあえて気付かないふりをする。マリアは私の様子に気が付き気配を読んでいる。しかし裕貴は壁伝いに非常階段へ向かった。
「やっぱり、誰か居る」
裕貴はベレッタM800を構え勝手に進んで行った。裕貴のお陰でいち早く敵の存在を把握できた事は良いのだが先行しすぎだ。私も直ぐ後を追いかけマリアは殿に徹する。
入り口の壁際まで来たところで裕貴は止まった。
敵からの銃撃を受け階段入り口の壁かに裕貴は張り付いているが飛びだそうとしている肩を掴んだ。
「何をしようと言うの」
私は強い口調で言った。
「一気に飛び出して反撃する」
「相手はプロよ、それもかなりの腕、敵の前に飛び出したら格好の的じゃない」
「しかし・・・」
「伏せて!」
私は裕貴の右腕を引っ張り伏せさせると同時に爆発が起こった。しかしそれほど大きな爆発では無い。
「くそ、やられたわ、ゴホ、直ぐにここを離れて、ゴホ」
催涙弾。目が痛い、息をすると咽せまともな呼吸が出来ない。魔法で赤外線スコープを召喚し視野を直接脳髄膜コンピュータに接続し視覚を確保する。
爆発から裕貴を守ろうと強引に引っ張った為、倒れた私の上に裕貴が覆い被さっている。
所が裕貴はまた階段入り口へ飛び出し敵と格闘している様な音だけが響き、太鼓を叩くようなサンドバッグを殴るような鈍い音と悲鳴を最後におとが鳴り止んだ。
裕貴がやられたのか?私は銃を裕貴が見えなくなった煙の方に向けて煙が引くのを待った。
姿が見えてくると裕貴の下に敵が倒れている。見た目からの状況は裕貴が敵に対し“膝落とし”で敵の左胸部に膝が入り肋骨諸共粉砕し肺が破裂していると判断した。
私は裕貴の所まで行くと直ぐ敵に4発の銃弾を使い留めを刺した。それもあえて躊躇もせず。
「貴方が殺したんじゃ無い。私がやったのよ」
私はあえて裕貴に言った。とどめを刺した。
裕貴はずっと右手に拳を握って私が怒る事に耐えている。
「何も殺す事は無いだろ」
「何言ってるの、人を殺すストレスに貴方はまだ耐えられない」
そう、裕貴は一般市民でまだ高校生なのだ。ゲームで敵を殺すのとは訳が違い実際に殺人となるとそのストレスで心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症しかねない。
「忘れたの。こいつらは学研都市を破壊しようとしているのよ、良いの?この街に住む仲間がみんな死んでしまっても」
私の殺した敵を強引に正当化するように怒鳴る。これで裕貴のした事に責任を感じさせないように付け足した。
「シルビア、準備が出来てる?ナビゲートして」
周囲を警戒しているマリアはこのフロアに敵が居ない事を確認して私に言う。
「分かったわ」
私はマリアの居るフロア中央に走り寄ると。マリアは私に目で合図を見ると私は意識を集中した。
私の足元に魔法陣が現れた。マリアの足元にも魔法陣が現れると私の足元の魔法陣から触手の様に伸びマリアの魔法陣に繋がった。
マリアの足元に出来た魔方陣の端が立ち上がり頭の位置まで上がるとカーテンの様な光の柱が浮き上がり、その柱の内側に幾つもの小さな画面とターゲットスコープが表示され次々とロックオンしていった。
その間、詠唱をしていマリアのサンドニードルが発動、周辺の砂がマリアの周りに集まり無数の針の形に形状を変えていく。
「行けー!」「ソナートランスファー」
マリアとシルビアは同時にしかし別の詠唱を唱えると砂の針はロックオンした魔法陣の的の中に消えた。
『―さっきのはチーフの魔法?―』
斎藤からの通信が入った。
『―ええ、既にジュリアンが囮になって戦闘をしていた為、事態の収拾を急いだ。残党に注意しつつジュリアンの安全を確保していく―』
『―分かりました。こちらはあらかた制圧完了。引き続き警戒態勢を取る―』
『―こちらジュリアン、私達への攻撃が止んだわ、警戒はするけど魔法陣を上書きする術式を作っていくわ―』
『―こちら御門芽です。こちらも周囲に敵の気配無し、ジュリアンさんと合流したいのですが―』
『―私もこっちに来て欲しいわ、この結界はどうも地脈の上に在るみたいなの―』
『―分かった。御門芽、行ってくれ―』
マリアの状況判断は速い、直ぐに最善策を打ち出す。
『―では行きます―』
恵は短い返事をしてジュリアンの所へ向かった様だ。
『―私は引き続き監視と警戒行動を取る。ジュリアンの所にはシルビアも行かせる―』
『―了解―』
「貴方はここで帰りなさい」
通信終了後、マリアは裕貴に向かって言う。裕貴の表情は戸惑っているに見える。
「ダメよチーフ、人の言う事聞かないのだから」
私は2・3歩マリアの方に歩き両手を上げながら呆れた表情で言った。そう、裕貴はその程度の言葉で引くような者では無い。何というか、悪い意味で責任感が強いと言うか自らあえて危険な事に飛び込む。恐らく何らかの経緯から自身の存在を軽視している。
「だけどもう終わったんだろ?」
案の定、このまま一緒に活動したいと思わせる発言をする。
「敵は片付けたわ」
「だが、残党が残っているかも知れない。その場合は何をしてくるか分からない」
しかし、裕貴はとても賢い、自身を軽視している割にはその時々の状況を冷静に判断している。それはきょろきょろと周りを見回しながら考えた答えからそう思う。
「分かった。今回の件はブルーバンドの権限を超えていると思う。ここで帰る事にします」
「そう、分かったわ。それじゃ私は姉さんの所へ行くわ」
「ジュリアンの方が危険な状況にある事に変わりない、用心していけ」
マリアは私へ念を押すように警告した。
私はこのまま目の前の階段を下り姉さんの居るAV34地点へ敵部隊を一掃しながら進んでいく事にした。




