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第1部 12芒星魔方陣 編  13章 見えてくる敵の姿 2話

この章は 岡本浩子編の10章「デジタル魔法の実力 2話」の→朝倉裕貴編の11章「ブルーバンド 2話」の後の続きます。

つまり1つの現場に3人が時間差で訪れた事になります。

「姉さん」

 オフィスを出てエレベーターに歩くジュリアンを引き留めた。

「なぁに、シル」

「あの、すみません、こんな時期にアメリカまで引っ張り回して」

「そんな事は良いのよ、それに、ちょっと気になることがあるの」

「気になること?何ですか?」

「それはこれから調べるのよ、それよりも現場行くのでしょ?」

「はい」

「斎藤さんは行くみたいよ、早く行ってきなさい」

「はい、それじゃ行っています」

 私は北条と話しをしていた斎藤に同行し7個目の魔法陣が設置された現場に向かった。

「お疲れさまです。姫野です」

「早速、現場を見たいのですが」

「分かりました、どうぞ」

 私の北条は姫野刑事の続いて廃ビルに案内された。

「これは?」

「これが魔法陣結界と言う話しは本部から聞いていますがその中心のノートパソコンです。随分型遅れですが、まだ魔法陣が生きていて近づくと発動する危険性が有るのでまだ回収が出来ていません」

 私の質問に姫野は持っているクリップボードの書類を確認しながら答えた。私はそれからビル内部を見回した。

「このノートパソコンの他には?」

「この建物4隅にトランシーバーが有りました。何に使う目的だったのでしょう」

「・・・それは結界ね、正確には“人払いの魔法”と言ったところかしら」

「人払いの魔法?ですか」

「あのパソコンを回収してみないと分からないけど恐らくはね、例えばここが火の海だと誰もその中に入ろうとしないでしょ?多分、擬似的にそう言う感覚にさせて人をこの中に入れないようにする結界でしょうね」

「しかし、こんな物証を残すとはお粗末過ぎるな」

 北条は聞いた。

「でも、この魔法陣は既に民間レベル迄情報が漏れている」

「そうなると、これはこの件とは直接関係が無いと言う事か?」

「だとすると、学研都市には魔法や能力の扱える一般市民が沢山居るからそう言った人達がこの場所を特定して妨害工作をしたと言う事ですか?」

「そういう事ね、それよりもまず、あのパソコンを回収しましょ、何か手がかりが残っているかも知れない」

「しかし・・・」

「大丈夫よ」

 私はノートパソコンの側まで歩いて行く。

「あの人は一体」

「あいつは内のチームのエースだよデジタル魔法では右に出るものは居ないだろうな」

 不思議そう呟く姫野に斎藤は得意げに答えた。

「エース?でもまだとても若そうに見えますけど」

「そりゃそうだろう、彼女はキングローズ社のデジタル魔法を開発した1人だからね」

「デジタル魔法の?それは本当なんですか?」

「はい、取ってきたわよ」

 私は魔法陣の上に置いてあったノートパソコンを手に取り姫野に渡す。

「有り難うございます。しかし、これを私どもが預かってよろしいのですか?」

「ええ、私はもう解析出来たので」

「え?もう、解析したのですか?何時の間に・・・」

 姫野は驚いている。起動していたプログラムはパソコンを起点に中継ポイントの無線機で囲み結界を作り、結界内に入る者に対し人には聞こえない音で強烈な不快感を与える。そう言うプログラムが組んで有った。

「どう言うのだった?」

 北条は私に訊いた。

「超音波で不快感を与え立ち入れなくするデジタル魔法だったわ」

「そんな魔法を作って誰でも作れるものかのか?」

「そうね、デジタル魔法を扱う学生ならこの程度2~3日も有れば作れると思うわよ」

「と言う事は、学生が作ったプログラムだろうか?」

「多分、そう思います。パソコンやトランシーバに指紋などが付いていないか確認したら如何かしら?」

 暗がりの中、さらに私達は再び建物の中を調べる。すると魔法陣の真上の天井に放射状に血がこびり付いている。

「これは・・?」

「これは酷い・・・」

「これは魔法陣が爆発したとき吹き飛ばされたブルーバンドのものだそうです」

 北条も驚いている。姫野は後ろから説明をする。

「それで、このブルーバンドはどうなった?」

「それが、もう帰宅しています」

「帰宅?これだけ出血していてもう家に帰ったと言うの?」

 こびり付いている血の量からブルーバンドは天井に叩きつけられたと想像ができ、その後床にも叩きつけられている筈で、相当な大怪我と出血していると想像するのはそう難しくない。

「それで、これだけの大怪我をしているのに帰ったと言うのですか?」

「はい、どうやらブルーバンドは服に大量の血が付いていたそうですが怪我はそれほど悪くなく歩いて行ける程度だったので病院に行くよう指示したそうですが、大きな外傷も無かった様です」

「それでそのブルーバンドの名前は?」

「成神高校2年、朝倉裕貴と舞藤女子中学3年、久田真沙子です。爆発に巻き込まれた方は朝倉裕貴、1名だそうです」

「朝倉裕貴?」

 何処かで聞いた事の有る名前だった。

「かすり傷程度の軽傷だったので事情を聞いて帰しましたがそれが何か有りましたか?」

「いえ、何でもありませんわ」

 思い出した。2週間前にオズ・ローズの店内で姉さんが接客した1人、ジュリアンが逸材と言ったあの少年の筈だ。

「どうかしたか?」

 北条が訪ねた。私は再び現場の捜索を始めながら答えた。

「いえ、大したことじゃないわ、それより、他に何か変わった事はあったの?」

「それがですね、魔法陣を発見した時なですが、周辺の目撃情報はおろか、誰も住民が居なかったのです」

 私の質問に姫野は天井を見上げながら答える。

「それはどういう事なんですか?」

 北条は姫野の方を向き訪ねると、姫野はクリップボードの書類を数枚めくり答える。

「えー、ここの証言なんですが、先ほど説明したブルーバンドの2名が同じ証言をしています。その先ほど言われた人払いの魔法のせいなのかはまだ分かりませんが・・・」

「その範囲は?」

「えーっとですね、証言内容からおおよそ80から100m程と言う事です。ここは県道5号から離れていますし、学研都市でも東の端に位置するので開発が遅れています。それに元々人が少ない場所なので」

 この辺りは開発の遅れも有って、学生向けマンションの建設計画が上がっていた地域だ。

 しかし、このビルの様に建設途中で計画が中断して未完成のままのビルが最も多く、不良達のたまり場になって治安が悪いとされている地域だ。

「事前に避難したにしてはおかしいですね」

「敵は、ここに結界が有る事を知ってそれを逆手に取った」

「なるほど、それなら辻褄合いますね」

「そうかしら?」

「まだ何か有るのですか?」

「・・・現場の状況は分かりました。朝倉裕貴への聞き取りをする予定なのですよね?」

「はい?ええ、そのつもりです」

「また後日、その内容を教えて下さい。お願いします」

「分かりました」

「さて、本部に戻るぞ」

「はい」

 私達は姫野のその言葉を聞いた後、本部に戻った。

「ただいま戻りました」

 本部ではマリア達が1台のパソコンの画面に釘付けになっていた。中垣がそのパソコンの操作をしている。

「何が有ったんだ?」

 北条が集まっている皆に訊いた。

「5月7日未明に4件目の魔法時が設置された時の映像の提供を受けたのでその解析をしている所です」

 マウスやペンタブを使って不鮮明な映像を解析しながら中垣が答える。

「犯人が映っているの?」

「ええ、映ってます。それと犯人と対抗していると思われる人物も1人映ってます」

「それが妙なんだ」

「妙ってどういう事?」

「それが、ギミック相手に生身で倒しているのです」

「生身で?能力者なのか?」

「まだはっきりした事では無いがそうだろう。それも相当な能力者だ。どんな傷でも瞬時に修復してさらにギミックを素手で破壊する程の能力って事よ、直ぐに誰だか分かる筈だ」

 北条が聞き返す。マリアは一度、自分の席に戻りながら答えた。

「その他に分かった事も有ります」

 隣のパソコンで映っている男の照合し特定していた。

「画像から98%一致しています」

伏羲(ふつき)?何処の所属?」

「中国人民解放軍の2174部隊に所属していると思われるのですがそれ以上の詳細は不明です」

「組織名までは分かってもどう言う部隊なのかは分からないって事ですね」

「それと、伏羲はサイボーグの様です」

「画像より現場に落ちていた残骸で分かりましたが」

「画像に映っている能力者が頭部を踏みつぶしていて復元が不可能だった。さらにパワードスーツや伏羲の胴体はバラバラに切断されている。それも信じられない程鋭利な刃物で・・・」

 中垣の声が濁る所をマリアがフォローするがそれも声が濁る。私は思わず聞き返した。

「信じられない程鋭利な刃物ってどういう事ですか?」

「切断面が引っ付く程に組織が綺麗なんだ。通常、金属を切断するというのはカッターで削り取る場合や、レーザーで焼き切る事になるのだが、この切断面は分子を切断している。と言う事なんだ」

「それは、つまり?」

「プラズマやレーザーカッターとは全く違う何かで切断したとしか分からないのです」

 中垣は困った様に言った。

「この能力者に付いては後だ。各自、引き続き警戒に当たるように、それと小河、ジュリアン、シルビア、ジャンの4名は一度家に帰ってゆっくり休むと良い。明日は午後にここへ来るように」

「分かりました」

 マリアは椅子から立ち上がり全員に声を掛けた。私はマリアに挨拶をして一度、家に帰った。


朝倉裕貴 編 行き詰まった・・・。

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