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第1部 12芒星魔方陣 編  1章 ニュートロンフロー 1話

 先の大戦で関東に向けて放たれた3発の核弾頭は、その内1発の迎撃に失敗し東京は東京湾に着弾した。都心部は爆発の影響を受け壊滅的被害を被った。

 その放射能が残る東京に1人の女性が立っていた。

「お嬢様、お待ちしておりました」

「さすがに 300万人ともなると酷い状況ね」

「今、この国は先進国復帰へ向けて学研都市の建設を進めて下ります」

「分かってるわ、それで何処で取り引きが有るの?」

「旧東京都庁の地下でございます」

「有り難う、いつもリチャードの情報収集は凄いね」

「滅相もありません」

 女性は瓦礫の上にそのまま座って水没した東京都庁を見上げた。

「地下なら放射能も無いって訳ね、でも十分放射能に汚染されているでしょうに」

 女性と同じ核防護服を着た老人はその言葉に返した。

「おそらく、小型の核集塵機を使っているのでしょう。先ほども集塵機船が走っている所を見かけましたので」

「とは言え、まだ68ミリシーベルトも有るのよね、ここは」

「この地域での放射線は主にウラン235とプルトニウム239から放出されています」


 ウラン235、比較的簡単に核爆弾が作れる放射性物質で無害化される半減期がおよそ7億年掛かるとされている。広島に投下された物と同じ物だ。プルトニウム239、ウラン235のウラン235の核分裂の後にできる元素でこっちの方が毒性が強い。半減期は2万4千年とされている。そしてこの放射線量は1時間で 1年分を被爆する線量だ。


『チーフ、これから作戦を開始します』

『―分かった。無理はするな―』

『了解』

 この通話は脳髄膜コンピュータによる無線通信、声に出さなくても直接通話が可能だ。

「さて、ダウンロードが終わったわ、リチャード後、宜しくね」

「かしこまりました、お嬢様」

 私の名前はリルビア・ R・ボールドマン。デジタル魔術師である。

 幼い時、ボールドマン家の次女として生まれ、姉と共に強い魔力とその才能を持っていた。しかし10歳の時に母と事故に遭い母は他界し私も脳にダメージを負い植物状態になった。

 意識が戻らないまま11歳になった時、臨床試験から安全性を確認出来た電脳技術の1種の脳髄膜コンピュータを移植手術を行い意識を取り戻した。

 脳髄膜コンピュータを移植して以前の魔力は1/10まで落ち、かつての魔術が使えなくなった。だがこの脳髄膜コンピュータはその後に開発されたデジタル魔法をより効率的に発動させる為の計算回路と送受のアンテナを兼ねていた為、私はハッカーとしても活動をしている。

 スライド部分がオリジナル銀装飾になったベレッタM1951を右手手に取り、目の位置に構え目を閉じて意識を集中した。

「OK、座標設定できたわ、飛ぶよ」

 シルビアの足下と頭上に2つの魔方陣が現れ体の中央に向かって2つの魔方陣が近づいてくる。

「お早いお戻りをお待ちしております」

 リチャードがお辞儀をしている。上下2つの魔方陣が重なった所でシルビアはその場から消えた。


 魔方陣は都庁の屋上に現れた。魔方陣から防護服を着たままのシルビアが姿を現した。 私はその都庁の屋上からワイヤーを掛け飛び降りた。ミッションが日中と有ってパラシュートを開くと敵に気付かれる可能性が有るため準備はしていない。

 およそ20階の付近まで降下した所で窓ガラスを突き破って中に進入した。

 建物の中は電気が来ていないため薄暗く人の気配は無い、周りの気配に注意を払いながら放射線計を確認した。建物の中は0.5ミリシーベルト、外より放射線は1/100になったがまだ防護服を抜いて活動できるほど低くない。

 銃を構え壁際に移動を始めた。足下には水たまりが幾つもある。取り引き現場まであと5階ほど降りないといけない。

「暗いわね」

 脳髄膜コンピュータで目に入る視覚の明るさを調整して鮮明な映像を認識出来る様になっている。マップを見ながら素早く通路に出て頼りに音も立てずに走った。

―生体反応有り―

 私は視覚に表示された場所へより慎重に進んだ。

 車が4台向かい合って止まっているその先に防護服を着た8人組と防護服無しで居る4人組が居る。防護服を着ていない方はおそらくサイボーグだろう。奴らがどんな装備をしているか分からない、私はサイボーグの外観からデータベースと照合した。

 移植された脳髄膜コンピュータのネットワークはこういう時便利である。数十秒で敵の装備が分かる。主に強化外装のみのサイボーグだ。魔法使いでありデジタル魔法も自在に扱える私にはそれほど警戒する事も無さそうだ。


 私のこのミッションでは学研都市で開発され奪われた人体への放射性物質の排出薬品の製造方法「ニュートロン・フロー」の生成データの奪取が目的だ。

 ニュートロン・フローは甲状腺に溜まったヨウ素131を一度血中に取り込み皮脂となって排出を促す効果が有ると見込まれている。

 そんな核保有国にしてみれば喉から手が出る程欲しい情報となる。

 一方、三度被爆した日本にとってこれは核戦略の最重要機密、私達公安6課も含め各公安は情報漏洩に厳しい目を向けている。


 8人が囲む輪の中にチャフ弾を投げ込み間髪入れずに銃を構え車に撃った。この射撃では音が出ないよう弾丸に魔力を込めた魔弾を使用している。

 4台有った車は爆発した。爆発に紛れて防護服を着ている人に発砲し足を打ち抜いた。

「誰だ、お前は」

 これで位置が割れたので実弾の入ったマガジンに交換する。

 防護服を着ていない1人が足を庇いながら叫ぶが無視して、後ろ3体のサイボーグの頭を打ち抜き殺した。

 残った1体のサイボーグの両手両足を撃ち動きを止め、銃を構えたまま私は距離を詰めて質問した。

「ニュートロン・フローは何処?」

「さあ?何のことかな」

 そのサイボーグの男は惚けた。私は左肩に1発実弾を撃ち込んだ。

「痛覚は切ってあるのかしら?それならここならどう?」

 ベレッタM1951を目の前に構え意識を集中する。銃口に直径10cm程の魔法陣が描かれその先から細い白く光る糸が現れた。

 糸はサイボーグに絡みつきギリギリと縛り付けていく。

 それと同時に防護服と着てて居る1人が足を引きずりながらアタッシュケースに手を掛けようとしている。

「動かないで、それ以上動くと撃つわよ」

 私の忠告を無視してケースを持ったまま足を引きずる1人の頭を撃ち殺害した。

「ぐぅ」

「さあ、答えなさい」

「くたばれ・・」

「そう、分かったわ」

 サイボーグに絡みついていた糸は頭に巻き付き5本に別れると頭に突き刺した。

「おま・・・何をする」

「あんたの記憶をダウンロードさせて貰うわ」

「馬鹿か」

「トラップが仕込んであるのでしょ?それがどうしたの?」

 サイボーグの様に機械化された人間の記憶は簡単に取り出す事が出来る。その為、サイボーグには記憶が簡単に取り出せないようにハッキングを仕掛ける者に対してトラップやウイルスを仕掛けている。

 トラップは通常のソフトウエアだったらウイルスによって破壊され逆ハックされている。私はウイルスを無効化し男の記憶を調べている。

「面白いトラップね逆ハックするプログラムが仕込んであったわ」

 私が男の記憶をハッキングしたせいで意識が無くなっている。


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