美羽ちゃん
今日は朝起きたときからご機嫌だった。
だって、今日から都輝さんと毎日会えるんだから。
いつもは憂鬱な一時間目の体育も、今日はすっきり楽しくやれた。
そんな私とは対照的に美羽ちゃんはとっても眠そうだった。いつもなら、体育を楽しみにしているのに今日はなぜかあまり元気がなかった。
なにか、あったのかな。
「美羽ちゃん」
「あ、彩笑ちゃん」
話しかけると、やっぱり少し眠そうだったけど笑って答えてくれた。
「どうかしたの?」
テストまでまだ2週間もあるのにもう徹夜で勉強してるのかな。でも、美羽ちゃんいつも前日に徹夜してるよね。今回は頑張ってるのかな。
「昨日さー、翔とお別れ会だー!とか柄にもなく大翔が言っちゃってさ」
前から美羽ちゃんによく話を聞いていた。美羽ちゃんの言う翔君というのは正しくは1年生の相良翔気君という人らしく、たまに女子の間でも話題に上がるとても目立つ存在だった。
その翔君と一緒に住んでいるということは知っていたが、いつの間に出ていくという話になったのかわからなかった。美羽ちゃんの話題はたくさん変わるから。
話している間の美羽ちゃんはその時のことも同時に思い出しているらしく、顔によく出ている。
「もう、一晩中ゲームやったりお菓子食べたりしてて」
そのゲームに負けたのだろうか、美羽ちゃんの顔は少し嫌そうな顔になっている。そんなことを想像して話を聞くのが、私はとても楽しい。
「でさ、今日やっと翔が出てくの。もー、弁当が二つに戻るっていうだけで楽になる~!」
笑顔で言い放った美羽ちゃんだった。でも、ちょっと寂しいんじゃないかな。お父さんと、お母さんも外国に行ってから帰ってきてないみたいだったし。
「うん」
どうすればいいかな。
「ねえ、今度一緒に遊ばない?」
「え?」
自分でも不思議そうな顔になっているのがわかる。びっくりした。最近遊んでなかったけど、部活大変な時期なんじゃ。
「っ私、今日からバイト始めるんだ」
「え?彩笑ちゃん?」
「うん。カフェで」
なんて言われるかと思った。今までの友達だったら、やめときなよと言われていただろうから。
「へー、すごい!」
でも、美羽ちゃんの口から出てきた言葉は意外なものだった。
「いいなー、カフェでバイト。おしゃれ。私も部活終わったらバイトしようかな」
ほっとした。そうだ。美羽ちゃんは今までの友達とは違う。
「まだ一年先だけどね」
私の感覚があっているなら、私は今笑えてる。美羽ちゃんのおかげで。