病院
病室のドアを開けて、窓の方に進む。
都輝さんは迷いなく歩いているけど、もうきたことあるのかな。
カーテンを開けると、おばあちゃんはベットに横たわっていた。メガネをかけて、本を持ちながら。
「こんばんは」
おばあちゃんがこちらを向いたので、慌てて頭を下げる。
「あら、彩笑ちゃん。きてくれたの?」
「はい」
おばあちゃんの笑顔に、元気そうな姿にホッとする。
「手伝ってもらった」
都輝さんが荷物を置きながら、話す。
「そうなの?ありがとう、悪かったねぇ」
おばあちゃんはメガネをおいて、私の方を見上げてきた。
「いえ。楽しかったです」
カフェの仕事をするのは楽しかった。あまり、人と話すのが上手ではない私に変わって都輝さんが接客をしてくれた。
都輝さんも大変だったはずなのに。
でも、カフェで働くのは楽しかった。都輝さんと、働くのは楽しかった。
「そう?それは良かった」
「はい」
笑顔で返事をする。おばあちゃんを、心配させないように。
「それで、ちょっと彩笑ちゃんに相談があるんだけど」
「はい」
なんだろう。
「私のカフェでバイトしない?」
カフェで、バイト?
「ふふっ。私もこの状態だからね」
そう言うと、おばあちゃんは自分の体を見るように首を下げた。
「まだいつもどおりには動けないんだよ。だから、私の代わりに都輝と働いてくれないかい?」
「あの、学校があるので昼間はいけないと思うんですけど」
「大丈夫。昼間くらいは都輝が一人で働くよ。ねぇ?」
おばあちゃんが都輝さんを見た。
すると、都輝さんは頷いた。知ってたみたいに。
「でも、私でいいんですか?」
「ああ。彩笑ちゃんに頼みたいよ」
「・・・ありがとうございます」
おばあちゃんに頭を下げる。
これからは、学校が終わったら急いでいこう。
それで、都輝さんと働こう。
そんなことを決めたきれいな夕焼けの日だった。
いいことがある日は、いいことがたくさん起こるものです。