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緊急事態

簡潔に言おう。

ばあちゃんが倒れた。


昨日の夜。


そろそろ店を閉めようと、店の外へ出た。外は肌寒い。

看板をcloseの方を表にして、店に入る。

ガッシャーン!!!

厨房からそんな音が聞こえてきた。

どうしたのだろう。ばあちゃんが皿を割ったことなんて一度もなかったはずだ。

厨房に行ってみる。

「ばあちゃん。・・・ばあちゃーん?皿われる音、聞こ・・・。」

俺はその場に数秒立ち尽くした。

俺の目に映った光景を受け入れたくなかった。ばあちゃんが倒れてるなんてあり得ない。

「ばあちゃん?」

呼びかけても、揺さぶっても、ばあちゃんは動かなかった。

パニクっていた俺は救急車を呼ぶことを瞬時に思いつくことができなかった。


救急に電話をしてから数分後、いつも他人事のように聞いている聞き慣れた音が迫ってきた。

テレビの画面の中に収まっている風景が、とらえられない。とらえきれない。

呆然としているだけだった。自分は何もできない。思い知った。


今だって、ばあちゃんの眠っているベッドの横でただ付き添っていることしかできない。今日でも店をちゃんと開けないと、ばあちゃんはきっと怒るんだろうな。

「ばあちゃん・・・どうすれば良いか教えてくれよ。俺は・・・。」

いつの間にかつぶやいていた。でも、ホントのことだ。ばあちゃんがいなきゃ、俺はカフェをやってける自信がない。それでも、開けなきゃいけない。どうすれば良いか分からない。


いつも店を開けるのは9:30。今は9:30のちょっと前。店を開けようにも、活力がわいてこねぇ。あーーー。

しょうがない。気合いを入れるんだ。俺を信じろ。きっとうまくいく、はずだ。

太ももをたたいて、いすから立ち上がる。外に出るともう太陽が頭上まで上がっていた。今日は暑い。

厨房に戻って、氷を補充する。

カランカラン

ドアの開く音。もう、客がきた。落ち着けよ、俺。いつも通りに。

「いらっしゃいませ。」

女性の2人組の客だった。友達のようだった。20代くらい。メニューはすでに卓上においてある。

2・3分してから、注文を取りに行く。

「注文は?」

「アイスコーヒーを2つと、パンケーキを1つお願いします。」

「はい。では、少々お待ちください。」

とりあえず、アイスコーヒーを2つ。ばあちゃんの見よう見まねだけど、淹れて持って行く。

「どうぞ。」

片方の女性がペコッと頭を下げる。そして、雑談の続きに戻る。

パンケーキはいくつか作ったことがあった。今日のフルーツは、パイナップルが主役。周りにはホイップクリームをのせてある。

「どうぞ。こちらにチョコソースがあるので、お好みでつけてください。失礼します。」

厨房の方を向いた瞬間、ドアの開く音がした。振り向くと、あの女の子がいた。

「いらっしゃいませ。」

少し驚いた。何で今いるのか。高校はないのか、月曜日なのに。時計を見てみると、時間はまだ、10時過ぎ。

「ご注文は?」

戸惑いながらも、注文をとる。

「モカと、パンケーキをお願いします。」

「はい。少々お待ちください。」

モカを入れてる最中に頭をフル回転させて考えた。ふと、カレンダーに目が行く。

あ、そうか。今日は祝日だ。

「どうぞ。」

「ありがとうございます。」

小さくお辞儀をして厨房に戻る。意外と、いけるかも。

パンケーキを作って、持って行く。厨房から出たら、二人組の女性が、レジの前にいた。ヤベッ!

「どうぞ。」

テーブルに皿を置いてから、レジに行く。

「お待たせしました。」

「いえ、お願いします。」

あぶねー。でもずっと、接客の方だけやってたから、こういうのには慣れてる。

「ありがとうございました。また、お越しください。」

ドアの方に向かって、声をかける。後ろを向いてお辞儀をしてくれた。深くお辞儀をする。

「あの。」

振り向くと、あの女の子がこちらを見ていた。

「はい。」

追加注文かな?と思ったが、あの女の子がそんなことをした覚えはない。

「あの、もし違ってたらすみません。」

どうしたというのだろう。

「今日のモカの味、いつものとちょっと違う気がするんですけど・・・。」

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