メル友
俺は、一ヶ月ほど前にミステリー現象とかを扱っている雑誌を買った。
それには読者投稿やメル友募集のコーナーがあり、自称霊能者や不思議体験者が競って投稿していたんだ。
その「メル友募集」のコーナーに彼女は居た。
彼女の紹介文は他の子と何かが違っていて、俺を惹きつけた…様な気がした。
パッと目に飛び込んだ文章が、まるで自分の為だけに見えた。
(もしかしたら、俺は彼女と前世か何かで繋がっていたんじゃないのか?)
そんな事を考えつつ、俺は彼女にメールを出した。
まぁ、きっとよくある「赤い糸症候群」だったのだろう。
数日後、彼女から返事が届いた。
彼女も俺と同じ様なものを感じたらしく、数十通来たメールの中で返事を返したのは俺にだけだったらしい。
それから、ほぼ毎日メールのやり取りをしてお互いに色々な事を話した。
彼女は心霊関係に異常に興味を持っているようで、殆どのメールが心霊に関するものだった。
まぁ、俺もその手の話は結構興味があったので、楽しくメールが出来た。
しばらくすると彼女から「今度公開する映画、一緒に観に行かない?」ってメールが届いた。
その映画は全米で恐怖度No.1って触れ込みのホラー映画だった。
ちょうど俺もその映画は観に行きたかったし、なにより向こうから誘ってきてくれたのがすごく嬉しかった。
俺は即行でメールを送った。
「その映画、俺も観に行きたいと思ってたんだ。それじゃ、今週の土曜日でいいかな?」
すぐにOKの返事が帰ってきた。
笑顔でVサインを出してる彼女の画像付きで。
そして、土曜日。
俺は待ち合わせの場所に30分ほど早く到着していた。
ちょっと早く来すぎたかな?とも思ったが、遅刻して相手を待たせるよりはいいかと思い、彼女が来るのを待っていた。
10分・・・
20分・・・
30分・・・
約束の時間になっても、彼女は来なかった。
♪♪♪~
彼女からのメールだ。
「ごめん、待ち合わせの場所に行けなくなっちゃった。(;;)」
(おいおい、ドタキャンかよ?勘弁してくれよ)
俺はすぐにメールを返した。
「待ってたのに、ヒドイじゃんか(--)今日は会えると思って楽しみにしてたのに」
♪♪♪~
また彼女からメールが届いた。
「私も会ってみたかったよ(;;)でも、どうしても行けないんだもん。ねぇ?ほんとに私に会いたい?」
(ここまで来たんだ、会ってみたいに決まってるじゃないか)
俺はまたすぐにメールを返した。
「そりゃ、会いたいさ。その為に今日は来たみたいなもんなんだから。」
メールを送り返した俺は、その時初めて気が付いた。
前方の交差点辺りが妙に騒がしくなっている事に。
その騒ぎがちょっと気になり、見に行こうとその思った瞬間…
♪♪♪~
またメールの着信音が鳴ったので、その場に立ち止まりメールを読んだ。
「うれしい(^^)それじゃ、今から車が迎えに行くから待っててね♪」
俺はメールを読み終えて、ちょっと笑ってしまった。
(「車が」じゃなくて、「車で」の間違いだろ?車が迎えにって…)
そんな事を考えてながら、ふと顔を上げると…
前方から猛スピードで向かってくる車が目に飛び込んできた。
「え?」
どんっ!!!!
次の瞬間、俺は車に撥ね飛ばされ…宙を待っていた。
ほんの一瞬だったのだろうが、俺には数分の出来事のように感じた。
やがて、俺は背中から地面に叩き付けられた。
しかし、痛みは無かった。
それどころか、殆どの感覚が無かった。
(もしかして…俺、死ぬのか?)
薄れゆく意識の中でそんな事を考えていたら、またメールの着信音が鳴った。
♪♪♪~
俺の指は無意識に携帯のボタンを押していた。
「ちゃんと『車が』迎えに行ったでしょ?
さっき、私もその車に轢き殺されたんだ(><)
でも、これでやっと会えるね…向こうの世界で( ̄ー ̄)」